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中国農業農村部、養豚と肉牛、酪農の動向について見解を公表(中国)

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 中国農業農村部は2025年7月17日、国務院新聞弁公室主催のメディア向け定例会である「上半期の農業農村経済状況の紹介会」(注1)において、現下の養豚と肉牛、酪農の生産動向について、記者からの質問に答える形で見解を示した。

(注1)前回の第1四半期状況の紹介会については「中国農業農村部、肉牛・乳牛市況とトウモロコシなど栽培状況を公表(中国)」(令和7年5月26日発)をご参照ください。
 

■豚の動向および政府の支援方針

 豚肉市場の状況および政府の支援方針についての記者からの質問に対して、農業農村部畜牧獣医司(「司」は日本農林水産省の「局」に相当)の司長は、次のように回答した。
 なお、質問の背景には、豚肉価格が低位で推移していることを受け、同部が業界から意見聴取したことが報道されるなど、「豚生産能力管理調整方策」(注2)(以下「方策」という)に定められた繁殖用雌豚の適正飼養頭数が引き下げられるのではないかとの業界の関心がある。

(注2)農村農業部が適正とする繁殖用雌豚の飼養頭数については海外情報「中国農業農村部、豚の飼養頭数調整のための方策を改訂(中国)」(令和6年3月12日発)をご参照ください。

1 現下の状況
 わが国では豚肉の生産量と消費量が全肉類のそれぞれ6割を占めており、「養豚を安定させれば畜産業の大勢が安定する」と言える状況にある。これまで、省級、市級の各農業農村部門は、養豚業の生産能力が過剰になった場合には適時に警告を発出し、業界を牽引する企業を指導して秩序立った減産を行っており、昨年5月以降連続14カ月にわたって養豚業は黒字経営を達成している。
 最近、豚肉価格に一定の値下げ圧力が見られることについても、事前に市場予測警報を発出し、業界を牽引する企業を中心に合理的な範囲で減産を進めるなどの出荷調整を行っている。生産地の観測によれば、6月の全国の5カ月齢以上の生体豚の出荷量は前月比0.8%減となっており、7月、8月の出荷量も引き続き減少見込みであることは、豚肉価格、ひいては養豚業の安定化に資すると考える。
 第2四半期の雌豚飼養頭数も4043万頭であり、適正飼養頭数3900万頭の103.7%であって、3900万頭の「92%から105%まで」と方策に定められた生産能力の正常域とされる範囲にとどまっている。
 
2 農業農村部が行う措置について
 農業農村部は、養豚業の安定的な発展のため、以下2点を確実に行っていく。

(1)生産能力の調整
 市場観測の発信を密に行い、秩序ある出荷を指導するとともに、生産性の低い雌豚と弱い子豚個体の淘汰(とうた)を進め、生産能力を適切に管理することによって需給の均衡を図る。

(2)関連政策の安定化
 地方の政府関係部門の有する生産能力と価格の安定に対する責務を果たす中で、生産能力の調整に向けた措置をより適切に行うとともに、疾病予防を常に適切に行い、アフリカ豚熱などの重大な疾病を絶対に発生させないよう努める。
 

■肉牛と酪農の動向および政府の支援方針

 肉牛と酪農の動向および政府の支援についての記者からの質問に対して、同部畜牧獣医司の司長は主に次のように回答した。

1 現下の状況
 関係者の努力によって、肉牛経営は全体的には既に赤字経営を脱しており、酪農経営にも支援政策(注3)の効果が出ている状況である。
 肉牛については、今年の旧正月以降生体牛の価格が底を打ち、市場の見通しは上向いている。観測によれば、肉牛経営は既に3カ月連続で全体としては利益が確保できている状況にある。
 酪農経営については、生産能力の適切なコントロールと飼育コストの低減に関する措置が段階的に効果を出しており、6月のホルスタインの飼養頭数は前月比4.2%減となり、生乳1リットル当たりの生産コストも7.7%減少した。このため、酪農経営全体としては赤字幅が改善している状況にある。特に7月、8月は暑さのために乳量が減る一方、冷たい飲料の消費が増える時期であること、また、9月には常温保存牛乳には粉乳類を原料とした、いわゆる還元牛乳を使用してはいけないとの国家基準が施行される(注4)ことは、生乳の需給改善にとって有利となる。この新たな国家基準は、常温保存牛乳に生乳を使用するという特徴を強化するものであり、国内乳業の支援に資するだけではなく、より多くの新鮮な栄養成分が常温保存牛乳に含まれるため、消費者ニーズにも応えるものである。

(注3)肉牛乳牛産業に関する支援措置については海外情報「中国農業農村部、肉牛乳牛生産の安定化に関する通知を公表(中国)」(令和6年11月8日発)をご参照ください。
(注4)国家衛生健康委員会と国家市場監督管理総局が2025年3月27日に共同で発出した食品安全に関する国家基準「全国食品安全基準のうち牛乳(滅菌乳)」の改正により、滅菌乳(常温保存牛乳)の原料として生乳のみを認め、全粉乳などの使用は認められなくなり、25年9月16日に施行される。

 
2 農業農村部が行う措置について
 農村農業部は引き続き支援政策の効果が表れるように努め、付加価値の向上、競争力の強化などによって肉牛産業の上向き傾向を堅持するとともに、酪農経営の早期好転を推進する。

(1)政策上の措置
 各地方関係部門が、優良な母牛群の品質向上など各種支援措置を着実に実施するよう指導し、金融関係機関による信用貸付の継続を積極的に指示するとともに、酪農場の動向観測と支援を強化することにより、秩序立った生産能力の引き下げと生産能力増加の抑制、市場予測の安定化を図る。

 (2)生産現場における措置
 コストカットと品質向上を着実に行う。畜産業界の飼料節約行動を深化させ、優良な牧草の生産供給を適切に行うとともに、疾病の予防と品質管理を強化する。国産牛肉の品質に関する基準を完備し、牛肉の品質向上と価格形成機能の向上を促す。一定の条件を有する地域では乳牛飼育と乳製品加工の一体的な発展を推し進めるとともに、国内での乳牛の品種改良と乳製品加工技術の研究開発を一層強力に推し進める。
【調査情報部 令和7年7月31日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部)
Tel:03-3583-4394