欧州委員会、食肉の短期的需給見通しを公表(EU)
欧州委員会は2025年7月27日、農畜産物の短期的需給見通し(注1)を公表した。このうち、24年の食肉(牛・豚・鶏)の需給実績および25年の食肉の需給見通しの概要について紹介する。
(注1)欧州委員会は、農畜産物の短期的需給見通しを年2回(24年に年3回から年2回に減少)、中期的需給見通しを年1回(12月)公表している。
牛肉
2024年の牛肉生産量は、665万6400トン(前年比3.0%増)となった(表1)。また、25年の牛肉生産量は、牛枝肉価格の高騰による肥育期間の長期化から1頭当たり枝肉重量は増加するものの、域内の牛群が縮小傾向にあることから657万トン(同1.3%減)と予測されている。
EU産の牛枝肉価格は記録的な高値が続いているため小売価格も高く、EUの牛肉需要は抑えられ、同年の消費量は639万トン(同0.7%減、1人当たり9.9キログラム)と予測されている。
同年の牛肉輸出量は、供給減に加えて、24年に前年比70.1%増加したトルコ向け輸出の反動や南米との価格競争力の低下により、54万9000トン(同4.0%減)と予測されている。
同年の牛肉輸入量は、牛肉の供給減によるEU産牛肉価格の記録的な高値により、南米諸国などからの安価な冷凍牛肉の輸入が増加することで、36万9000トン(同5.0%増)と予測されている。
豚肉
2024年の豚肉生産量は、主要豚肉生産国の多くでと畜頭数と枝肉重量ともに増加したことにより2124万2180トン(前年比2.0%増)となった(表2)。また、25年の豚肉生産量は、同年第1四半期の豚肉生産量が前年同期比3.2%増となったものの、24年12月時点の繁殖用雌豚飼養頭数が減少し、下半期に豚肉生産量が減少すると見込まれることで、2115万トン(同0.4%減)と予測されている。
25年の豚肉消費量は、豚枝肉価格が高い水準にあるものの、鶏肉価格も高騰しており需要のシフトも見込まれず、1839万5000トン(前年並み、1人当たり31.7キログラム)と予測されている。
同年の豚肉輸出量は、EU産豚肉価格がブラジルや米国などの主要豚肉輸出国に比べて高値であることや、中国と英国での生産増が見込まれていることから、同3.0%減の285万6000トン(同3.0%減)と予測されている。
同年の豚肉輸入量は、主要輸入元である英国からの輸入増が見込まれるため、10万1000トン(同1.0%増)と予測されている。
家きん肉
2024年の家きん肉生産量は、1409万3011トン(前年比5.3%増)となった(表3)。また、25年の家きん肉生産量は、堅調な需要や飼料価格の下落、家きん肉価格の上昇による生産者の増産意欲向上が見込まれるため、1435万1000トン(同1.8%増)と予測されている。
同年の家きん肉消費量は、鶏肉価格が年初から上昇して記録的な高値で推移しているものの、旺盛な需要と生産量の増加により、1320万3000トン(同2.2%増、1人当たり25.6キログラム)と予測されている。
同年の家きん肉輸出量は、英国向けなどが減少するものの、アフリカ向けの増加から、205万1000トン(同2.0%増)と予測されている。
同年の家きん肉輸入量は、EU域内の家きん肉価格の高騰を背景に輸入が増加するため、90万3000トン(同8.0%増)と予測されている。ただし、25年5月に主要輸入先のブラジルで高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)が発生したことにより、同国からの輸入を停止しているため、輸入量が下振れする可能性がある。
【藤岡 洋太 令和7年8月1日発】
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