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欧州委員会、生乳・乳製品の短期的需給見通しを公表(EU)

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 欧州委員会は2025年7月28日、農畜産物の短期的需給見通し(注1)を公表した。このうち、24年の生乳・乳製品の需給実績および25年の需給見通しの概要について紹介する。
(注1)欧州委員会は、農畜産物の短期的需給見通しを年2回(24年に年3回から年2回に減少)、中期的需給見通しを年1回(12月)公表している。

生乳

 2024年の生乳出荷量は、1億4569万トン(前年比0.7%増)とされている(表1)。また、25年の生乳出荷量は、前年並みの1億4600万トン(同0.2%増)と予測されている。これは、記録的な牛肉価格の上昇を背景に経産牛飼養頭数が1900万頭(同1.0%減)とわずかに減少するものの、一部の加盟国を除いて飼料生産と放牧に適した天候が継続し、1頭当たり年間乳量が8177キログラム(同1.2%増)に増加するためとされている。なお、生乳価格は記録的な高水準で安定しており、酪農家の収支改善が見込まれている。一方で、欧州委員会は、口蹄疫やブルータングといった家畜疾病の流行が、牛群の縮小や繁殖能力の低下および乳量の低下などを招くことを注視している。
 25年の生乳取引価格は、乳製品価格の上昇などから100キログラム当たり53ユーロ(1キログラム当たり91円:1ユーロ=172.25円(注2))前後と過去5年平均を上回って推移している。
 (注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2025年7月末TTS相場。
表1

バターおよび脱脂粉乳

 2024年のバターの生産量は、231万トン(前年比1.0%減)とされている(表2)。また、25年のバター生産量は、前年の生産減からの反動や域内消費が208万トン(同0.7%増)とわずかな増加が見込まれることで、232万トン(同0.3%増)と前年並みが予測されている。同年のバターの価格は、前年から続く安定した域内需要に支えられ、100キログラム当たり700ユーロ(1キログラム当たり1206円)を超えて推移している。このため、25年の輸出量は、価格競争力の低下から26万トン(同2.0%減)と減少が予測されている。
 一方、脱脂粉乳の生産量は、輸出量の減少により、24年が144万トン(同2.1%減)、25年が143万トン(同1.0%減)と、それぞれ減少が見込まれている(表3)。25年の輸出量は、主要輸出先であるアルジェリアや中国向けの減少、東南アジア市場でのニュージーランドとの競合により、70万トン(同2.0%減)と減少が予測されている。
表2
表3

チーズおよびホエイ

 2024年のチーズの生産量は、1118万トン(前年比2.2%増)とされている(表4)。また、25年のチーズ生産量は、消費量の増加見込み(同0.8%増の1006万トン)に伴いより多くの乳固形分がチーズの生産に仕向けられる一方、生産能力の増加が限定的なことで、1125万トン(同0.7%増)にとどまると予測されている。25年の輸出量は、主要輸出先の米国や中国の貿易見通しが不透明なことが制限要因となり、前年並みの139万トン(同0.1%増)と予測されている。
 24年のホエイの生産量は、206万トン(同1.0%増)とされている(表5)。また、25年のホエイ生産量は、チーズ生産量の増加に伴い208万トン(同0.7%増)とわずかな増加が予測されている。生産量の増加に伴い、輸出量も76万トン(2.0%増)とわずかな増加が予測されている。これは、主要輸出先である中国などの需要鈍化により限定的な増加にとどまる可能性があるためとしている。
表4
表5
【渡辺 淳一 令和7年8月4日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-8527