経済状況に対する農家の認識が過去8年間で最高水準に上昇(NZ)
ニュージーランド(NZ)の農業団体である農民連合(Federated Farmers)が2025年7月に実施した半年ごとの農家信頼感調査結果によると、現在の経済状況に対する農家の認識が8年ぶりの高水準に達したことが判明した。今回の調査では、NZの農家の44%は経済環境が「良い」と回答し、12%が「悪い」と回答した結果、信頼感指数(注1)は33ポイントとなった。前年同期の同指数は過去最低の▲66ポイントであり、今回の調査結果は劇的な好転となった。この結果を受け農民連合は、1)貸付金利の緩和、2)乳製品と肉類の価格上昇、3)政府による過剰な規制の緩和−が農家の信頼感を高めたとみている。
さらに、現在の農場の収益性に対して同指数を見ると、65ポイントとなった。これは、当調査開始以来の最高水準となり、前回調査時(25年1月)から12ポイントの上昇となった。品目別の同指数を見ると、酪農家は高騰する乳価に支えられて80ポイント、羊肉および羊毛農家は羊肉および羊毛市場の堅調な価格動向を背景に44ポイント、耕種農家は作物価格の下落により11ポイントという結果となった。
農家のメンタルヘルスへのストレスも継続的に緩和されており、同指数は前回調査時から16ポイント改善し、▲26ポイント(注2)となった。経済的安定の向上や政策の緩和、農場内のストレスの軽減が反映される結果となった。なお、規制とコンプライアンスへの対応コストが引き続き最大の懸念事項として挙げられた。
(注1)この調査における信頼感指数とは、「良い」の割合から「悪い」の割合を指し引いた割合の差で算出されている。指数が▲100の場合は、すべての回答が否定的な場合を意味し、0は肯定的な回答と否定的な回答の割合が等しいことを示している。
(注2)メンタルヘルスへのストレスが「ある」から「ない」の割合を指し引いた割合の差で算出。
耕種農家は厳しい状況に直面
農民連合のラングフォード会長は、「ここ数シーズン高金利、農場コストの上昇、収入の変動、そして乗り越えるのがほぼ不可能だと感じた政策の中で農業を行ってきたが、7月の調査で、多くの農家が前向きに感じていることが示されたのは素晴らしい」と述べた。一方で、「すべての農家が前向きに感じているわけではなく、耕種農家は引き続き重大な逆風や課題に直面していることに注意することが重要だ」と述べている。
また、調査結果によると、現在の状況に対する信頼は高いものの、将来を見据えた同指数は軟化しており、将来の経済状況に対しては前回調査時から17ポイント低下の6ポイント、将来の収益性は同13ポイント低下の18ポイントとなった。農民連合は、商品価格の変動、耕種部門の苦戦、世界市場の需給不安により、農家は今後何が起こるかについて少し慎重になっているとみている。
NZ政府、農家支援のために引き続き政策の変更に尽力
農家信頼感調査の結果を受け、NZのマクレイ農相は、NZの農家の回復力と10年間で輸出額を倍増させるという目標に向け、農業は先導する産業分野であると述べた。また、「政府は農家を支援するために実践的なルールになるよう政策の変更に尽力してきたが、引き続きやるべきことが残っている」とし、「コスト上昇と不確実性が続く中、政府の焦点は、農家が最も得意とすることを支援していくことであり、資源管理法の見直し、国家方針(NPS−FM
(注3)を含む)の変更、農村地域を支援する競争可能な福祉基金の設立が必要」とコメントした。
(注3)詳細は海外情報「ニュージーランド政府、資源管理法改正案の概要を発表(NZ)」をご参照ください。
【田中 美宇 令和7年8月13日発】
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