畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2025年 > 中国、豪州産牛肉に対し特別セーフガードを発動(豪州)

中国、豪州産牛肉に対し特別セーフガードを発動(豪州)

印刷ページ
 豪州農林水産省(DAFF)によると、2025年1月から6月の牛肉輸出量(70万2219トン)を輸出先別に見ると、中国向けは12万9258トン(前年同期比43.9%増)と輸出量を大幅に伸ばしている(図)。
 中国の25年の豪州産牛肉に対する特別セーフガード(SSG)発動基準数量は20万8307トンである中、中国海関総署(GACC)は25年7月24日、豪州産牛肉に対してSSGを発動したと発表した。24年のSSG発動基準数量(20万2240トン)から増加しているものの、前年(24年10月6日)に比べて75日早い発動となった。現地報道によると、最近の豪州産牛肉輸出量の増加は、中国の輸入業者がセーフガードの発動を予想し、駆け込み需要があったとされている。
図
 中国では、15年12月に発効した中国・豪州自由貿易協定(ChAFTA)により、豪州産牛肉の関税は撤廃されたが、年間上限を超えた場合(内臓を除く)、安全保障措置を課す権限を維持しており、牛肉(注1)の関税率は最恵国税率の12%が適用される。このSSG発動基準数量は毎年増加し、31年までに24万8729トン(注2)まで引き上げられる予定である。
 豪州産牛肉に対するSSG発動は今回で6回目となるが、豪州の市場情報サービス企業Expana社によると、米国産牛肉の供給が減少したため、豪州産牛肉の輸入がより拡大したことが要因とされている。これは、中国が米国内の牛肉加工場393施設(注3)に対する輸入許可を更新していないこと(注4)や、米国と中国の貿易摩擦の激化を受けて米国産牛肉に対し、懲罰的関税を課したことが影響したと分析されている。
 
(注1)その他の骨付き肉および骨付きでない肉の生鮮、冷蔵、冷凍のこと。
(注2)海外情報「豪州牛肉に特別セーフガード発動(中国)」をご参照下さい。
(注3)25年8月19日時点の輸入許可を更新していない牛肉加工場施設数
(注4)海外情報「米国農務省、停止状態の中国向け食肉輸出認可施設の登録更新を公表(米国)」をご参照下さい。

韓国でも豪州産牛肉に対するSSG発動が迫る

 韓国も同様に、豪州産牛肉輸入量の急増により早くもSSG発動基準数量に到達する勢いである。DAFFによると、2025年1月から6月の韓国向け牛肉輸出量は10万1526トン(同13.5%増)とかなり大きく伸びている。韓・豪自由貿易協定(KAFTA) (注5)は14年12月に発効し、25年の牛肉(内臓くず肉除く)のSSG発動基準数量は19万2206トン、関税率はSSG発動前の8%から発動後は24%が適用される。韓国のSSG発動基準数量は毎年増加しているものの、コロナ禍後の経済回復措置として課税を免除した22年を除き、毎年発動されている。
 Expana社の報告によると、8月11日で豪州産牛肉はSSG発動基準の87.3%に達しており、残りの数量は2万4408トンとなったことから、9月にはSSGが発動するのではないかと予想されている。 
 また、豪州の現地報道では、豪州牛肉輸出量はほとんどの輸出先で増加していることから、他の輸出先でもセーフガード措置の発動を招く可能性があることを注視している。さらに、オランダの農協系金融機関ラボバンクは、牛肉輸入国は牛肉の代替供給源が限られている中で、これらの安全保障措置が発動されると、豪州産牛肉の輸入コスト上昇や、供給量の調整などで加工需要などに混乱が生じる可能性があると分析している。
 
(注5)海外情報「韓豪FTAは2014年内に発効予定、豪州牛肉産業に恩恵」をご参照下さい。
【田中 美宇 令和7年8月19日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-4389