畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 海外情報 > 2025年 > 米国の相互関税見直しを肉用牛業界は歓迎、牛肉輸出の更なる追い風か(豪州)

米国の相互関税見直しを肉用牛業界は歓迎、牛肉輸出の更なる追い風か(豪州)

印刷ページ
  米国のトランプ大統領は豪州時間11月15日、牛肉を含む農産物に対する「相互関税」の範囲を修正する大統領令に署名した。同措置は、米国内で続く食料価格高騰への懸念を受けた対応と豪州メディアは報じており、今回の修正により牛肉やトマト、コーヒーなどの農畜産物が相互関税の対象外に指定された。豪州は本年4月から全輸出品目に10%の関税が課されており(注1)、牛肉は米国向け主要輸出品目であることから、同措置の影響に注目が集まっている。豪州連邦政府のファレル貿易・観光大臣はこの方針転換を歓迎し、「関税措置は経済的自傷行為であり、最終的には米国の消費者を傷つける。我々は引き続き残りの製品の関税撤廃も主張していく」と述べている。
 
(注1)詳細は海外情報「豪州産牛肉に対し、米国は10%の相互関税を導入(豪州)」をご参照ください。

米国向け牛肉輸出の動向

 10%の関税が課された4月以降も米国向けの牛肉輸出量は堅調を維持しており、本年10月までの累計輸出量は37万365トン(前年同期比16.6%増)と、前年同期を大幅に上回って推移している(図)。
図
 トランプ大統領は本年7月、4月に発表した相互関税を修正する大統領令に署名している。8月以降、豪州は10%の相互関税が据え置かれた一方で、米国市場で競合するNZは15%(プラス5%)、ブラジルは50%(プラス40%)の関税が課されていたことから、事実上、米国の通商政策は豪州の肉用牛業界に有利に働いてきた。今回の各国一律の関税免除に伴い、米国市場における他国との競争力への影響が懸念されたが、現地報道によると、ブラジルに課せられた追加関税分の40%は今回の措置では撤廃されず、豪州産牛肉の優位性は維持されると報じている。

業界の反応

 主要な業界団体である全国農民連盟(NFF)は、「今回の措置は、相互貿易における関税撤廃を規定する豪米自由貿易協定に沿う合理的な一歩だ。自由かつ公平な貿易環境こそが、農業者と豪州の利益に最も資する」と歓迎の意を表明した。また、肉用牛生産者の主要な業界団体であるキャトル・オーストラリアは、米国の牛肉供給不足を支援する準備はできているとし、今回の措置は豪州の肉用牛業界に大きな利益をもたらすと強調した。同様に関税が免除されたNZ産牛肉との競合を注視する声はあるものの、総じて今回の措置を業界は好意的に受け止めている。
 トランプ大統領は、国内の牛肉供給不足への対応として、アルゼンチン産牛肉輸入拡大の意向を示しており、今回の措置の前日には、アルゼンチンを含む中南米4カ国との新たな二国間貿易協定の枠組みを発表している(注2)。豪州の牛肉輸出に影響を与える可能性がある一方、現地アナリストは豪州産牛肉の需要の底堅さから、引き続き牛肉輸出量は堅調に推移すると分析している。
 
(注2)詳細は海外情報「アルゼンチン産牛肉の輸入拡大の意向と牛肉産業強化計画を発表(米国)」をご参照ください。
【調査情報部 令和7年11月20日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03‐3583‐9532