インド砂糖・バイオエネルギー製造業者協会(ISMA)は、中央政府による本決定を歓迎し、時宜を得た輸出許可により、製糖工場は事前に生産計画を立て、余剰砂糖を世界市場に流通させることで、国内価格の安定維持に寄与するとした。
ISMAは、10月1日から始まった25/26年度の砂糖生産量について、エタノール転用分の340万トンを差し引いたうえで、3095万トンと見込んでいる。一方、消費量は2850万トンと見込んでおり、これらの推計に基づくと国内の砂糖在庫量は745万トンと推定され、更なる輸出の余地があると言及し、追加の砂糖輸出が許可される可能性に期待している。
一方で、ISMAは中央政府に対し、製糖業界の財政健全化とサトウキビ生産者への適時支払いを確保するため、製糖企業から卸売業者などへの砂糖の最低販売価格(MSP:Minimum Selling Price)やエタノール調達価格の見直しを検討するよう強く求めている。サトウキビの生産コストが上昇する中、19年2月以降、1キログラム当たり31ルピー(589円、1ルピー:19円
(注3))で据え置かれているMSPの見直しが必要であるとした。サトウキビの公正収益価格(FRP:Fair and Remunerative Price)
(注4)や州独自の買取価格である州勧告価格(SAP:State Advised Price)の引き上げを考慮すると、25/26年度の砂糖の生産コストは同41.7ルピー(792円)にまで上昇すると予測している。
また、インドでは中央政府主導のエタノール混合ガソリン(EBP:Ethanol Blended Petrol)プログラムが実施されており、30年までに国内で流通するガソリンにエタノールを20%混合(E20)する目標が掲げられたが、25年7月にこの目標はすでに達成されたとする報道も流れている。国内でのエタノール需要が増加する中、直近ではトウモロコシなどの穀物由来のエタノールの急伸が目覚ましく、エタノール原料に占める割合はサトウキビ由来を上回っている。そのような状況において、10月末に公表された25/26年度最初の国営石油販売企業(OMCs:Oil Marketing Companies )によるエタノールの入札は総割当量の105億リットルに対し、穀物由来が72%、サトウキビ由来が28%の割り当てとなった。同措置について、ISMAはサトウキビ由来の割り当てが少ないとし、国内市場への砂糖の供給過剰、砂糖価格の下落、工場の資金繰り悪化、サトウキビ代金滞納リスクの高まりに繋がると懸念していた。
しかし、現地報道によると、下落基調にあるニューヨーク粗糖先物相場(3
月限)が21年4月以来となる1ポンド当たり14セント台
(注5)と安値を更新する中、国内価格と比較して価格面で優位性が見いだせない状況にあることから、即時の輸出にはつながらないと考える業界関係者もあり、今後の動向が注目される。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の10月末TTS相場を使用。
(注4)詳細については、2025年5月13日付け海外情報「2025/26年度のサトウキビの公正収益価格を引き上げ(インド)」をご参照ください。
(注5)1ポンドは約453.6グラム、1米セントは1米ドルの100分の1。
【調査情報部 峯岸 啓之 令和7年11月26日発】