24/25年度の農業経営所得、大幅減となった前年度から回復(英国)
英国環境・食料・農村地域省(Defra)は11月20日、2024/25年度(3月〜翌2月)のイングランド地方における農業経営所得(注1)の調査結果を公表した。24/25年度の全農業経営の平均農業経営所得は、5割の大幅減となった前年度(23/24年度)から一転し、49%増となる7万1200ポンド(1472万円、1ポンド= 206.78円(注2))と回復した。
このうち、農業環境支援スキームによる所得は、前年度の1万100ポンド(209万円)から倍増し、2万1100ポンド(436万円)となった。これは農業所得全体の3割に相当する。英国は、28年までに直接支払制度を段階的に縮小・廃止することとしており、その代替として農業環境支援スキームを拡充している。
畜産関係の経営別では、養豚専門経営を除き、すべての経営が対前年度比増となった(図)。以下、経営別の調査結果である。
酪農経営
2024/25年度における平均農業経営所得は、約7割の大幅減を記録した前年度の約2.1倍となる15万3800ポンド(3180万円)となった。生乳需給のひっ迫による乳価上昇が要因の一つである。生産コストは、購入飼料などの変動費が同6%、人件費などの固定費が同4%それぞれ増加したものの、牛(同38%増)や飼料作物などによる収入(同10%増)の増加が補った。また、農業環境支援スキームによる所得の増加が直接支払いによる所得の減少を上回った。
牧畜経営(肉牛・羊など)
肉牛・羊などを低地(Lowland)で飼養する牧畜経営の2024/25年度の平均農業経営所得は、前年度の約2.2倍となる4万1300ポンド(854万円)となった。肉牛、羊ともに価格が堅調であり、飼育・販売頭数も増加し、飼料費、人件費などのコスト増を補った。
条件不利放牧地域での牧畜経営の同年度の平均農業経営所得は、同61%増の4万300ポンド(833万円)となった。農業部門単独では2700ポンド(56万円)の赤字となったが、農業環境支援スキームによる所得がこれを補った。
養豚専門経営
2024/25年度の平均農業経営所得は、前年度比6%減の12万6700ポンド(2620万円)と畜産経営の中で唯一前年度割れとなった。小麦や大麦など飼料コストの減少により、農業部門での所得は8万5700ポンド(1772万円)と前年度から倍増したが、食品加工・小売、再生可能エネルギーなどの多角化による収入が大幅に減少した。
なおDefraは、養豚専門経営の調査サンプル数が比較的少ないため、この結果は慎重に扱うべきとしている。
養鶏専門経営
養鶏専門経営における平均農業経営所得は、前年度比35%増となる23万5900ポンド(4878万)となった。鶏肉生産量の同5%増加などが増加の要因である。
なおDefraは、養鶏専門経営の調査サンプル数が比較的少ないため、この結果は慎重に扱うべきとしている。
【調査情報部 令和7年12月8日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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