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EUDR、再度の1年延期と簡素化措置導入でEU理事会と欧州議会が合意(EU)

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 EU理事会と欧州議会は2025年12月5日、森林減少防止に関する規則(EUDR)(注1)について、1年間の適用延期と規則の簡素化をすることで政治合意に達したことを明らかにした。
 欧州委員会は10月に、6カ月間の猶予期間を設定する提案(注2)を行っていたが、本合意は、これを修正し、すべての事業者に対して適用開始を1年延期したことに加え、規則の簡素化についても、欧州委員会の提案よりさらに踏み込んだものである。
 今回の主な合意内容は以下の通りである。

(1)適用開始時期の延期

 大規模・中規模事業者の適用開始は26年12月30日から、零細・小規模事業者については、27年6月30日からとする。

(2)デューディリジェンスステートメントの簡素化措置

 EU市場に製品を直接上市またはEUから輸出する低リスク国(注3)の零細・小規模一次生産事業者(注3)は、デューディリジェンス・ステートメント(DDS)の提出に替えて、ITシステム上での簡易宣言の提出(1回で可)を認める。

(3)デューディリジェンスステートメントの確認・提出義務の削減

 バリューチェーン下流の事業者(downstream operator)および取引業者(trader)のDDSの確認や提出義務を廃止する。これにより、DDSの提出義務と責任は、製品を最初にEU市場に投入する事業者に集約される。カカオ豆を例とすると、EU市場にカカオ豆を上市する輸入者は引き続きDDS提出義務を負うが、その後のチョコレート製品製造事業者などは、現行規則で課されているDDSの確認や提出義務が免除される。

(4)DDS参照番号の収集・保持義務の限定

 DDSの参照番号の収集・保持義務について、サプライチェーン上の最初の下流の事業者に限定し、それ以降の事業者に対しては同義務を免除する。

(5)欧州委員会による簡素化レビューの実施

 欧州委員会に対し、小規模事業者などの負担や影響を考慮し、簡素化レビューの実施と報告を26年4月30日までに求める。

(6)印刷物をEUDR対象外に

 書籍、新聞、写真など特定の印刷物を対象から除外する。

今後の流れと現地の反応 〜農業団体は合意内容を歓迎〜

 上記内容は、12月15日以降、EU理事会と欧州議会において正式に採択され、12月30日までに効力が発生する見込みである。
 今後、上記の(5)で示した簡素化レビューの結果次第では、26年12月30日の適用開始前にさらなる簡素化を含めた規則改正の可能性があり、その報告内容を注視する必要がある。
 EU最大の農業生産者団体である欧州農業組織委員会・欧州農業協同組合委員会(Copa-Cogeca)は、本合意を歓迎する旨の声明を発表し、特に欧州委員会による簡素化レビューの実施義務を高く評価した。同団体は、この見直しプロセスでの議論に積極的に貢献し、一次生産者向けに追加的な簡素化が必要かどうかを検討していくとしている。
 今回のEUDRの見直しについては、10月の欧州委員会の提案以降、環境団体や実施に向けて投資・準備を進めてきた大企業などからの予定通りの実施を求める声と、農業関係団体などからの延期と簡素化を求める声が対立していたが、結果的に農業団体などへ配慮がなされた形となった。
(注1)EUDR(EU Deforestation Regulation)は、牛、カカオ、コーヒー、パーム油、ゴム、大豆、木材の7品目およびその派生製品について、これらの生産が森林破壊(deforestation)を引き起こしていないことの調査と報告(デューデリジェンス)を義務付けるものである。事業者は、調査の結果、対象製品が森林破壊に該当しないことを証明できなければ、当該製品のEU域内での流通を認められない。
(注2)以下の海外情報をご参照ください。
(注3)「零細・小規模一次生産事業者(micro small primary operator)」とは、低リスク国に所在し、零細事業者または小規模事業者であって、みずから栽培、収穫、取得、または飼育したEUDR関連製品をEUに上市またはEUから輸出する者を指す。
【調査情報部 令和7年12月12日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9532