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中東情勢の緊迫化によるEU乳業への影響(2026年3月時点)(EU)

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 中東情勢の緊迫化に伴い、燃料および肥料原料価格の上昇や、ホルムズ海峡の事実上の閉鎖による運送面での混乱など、世界各地のサプライチェーンに影響が生じており、EU乳業にとってもその例外ではない。本稿では、2026年3月時点での中東情勢によるEU乳業への影響について、欧州乳製品輸出入・販売業者連合(Eucolait)のレポートに基づいて報告する。

輸送コスト増や湾岸諸国からの需要減を懸念

 湾岸諸国は、乳製品を含めた食料の輸入依存度が高く、湾岸諸国内で乳製品の輸出余力を有するのはイランのみである(表1)。イランからの乳製品輸出が難しくなり、地域内の供給が制限されることで、湾岸諸国は乳製品供給を維持する方策を模索する必要に迫られると考えられる。
表1
 湾岸諸国向けの乳製品輸出は、世界全体の約6%を占め、その大半がサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)向けとなっている(図1)。品目別に見ると、バター、バターオイルおよび全粉乳は、いずれも世界貿易量の10%以上を占めている(表2)。
図1
表2
 湾岸諸国向け乳製品の主要な輸出元は、ニュージーランドとEUであり、2025年のシェア(生乳換算重量ベース)は、それぞれ40%、38%とこの2者で全体の約8割を占める(図2)。これを品目別にみると、ニュージーランド産は全粉乳が3分の2を占めるのに対し、EU産はクリーム、チーズ、育児用粉乳など製品構成が幅広く、高付加価値の製品の比率が高い。EU側から見ると、湾岸諸国向けの輸出はEU全体の7%を占める。
図2
 このように、EUにとって湾岸諸国向けは輸出先として一定の割合を占めているが、ホルムズ海峡の事実上の閉鎖が続けば、供給面の課題、観光業の縮小、航空便の減少などによる湾岸諸国での乳製品需要減退が懸念される。
 輸送面に関しては、ホルムズ海峡を航行しない代替輸送経路としては、紅海沿岸のジェッダ港の利用などが現実的な代替ルートであり、今後これらの経路の活用が一層重要性を増す。しかし、これには、輸送距離の増加、運賃の上昇、陸上輸送の追加、待ち時間の長期化、保険料の割増などによるコスト増が見込まれる。また、サウジアラビアといった大国への輸出は可能であっても、バーレーン、クウェート、カタール、UAEといった国土や人口規模の小さい湾岸諸国向けは、他国を経由した輸送実績が少なく、より困難が伴うと予測される。
 さらに、湾岸諸国への輸出面だけでなく、燃料や肥料価格上昇による域内サプライチェーンへの影響や、域内乳製品需要減も想定される。Eucolaitは、これらの影響を踏まえた上で、EUの乳製品企業は、あらゆるシナリオを想定し事前に備えていく必要があると指摘している。
【調査情報部 令和8年4月14日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部)
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