肉用牛業界、新たなカーボンクレジットの方法論の開発を主導(豪州)
気候変動・エネルギー・環境・水省(DCCEEW)は2026年4月10日、オーストラリアン・カーボン・クレジット・ユニット・スキーム(ACCUs)(注1)における「熱帯サバンナ地域における野焼き」方法論の更新、家畜群管理と廃棄物管理に関する方法論の見直しを行うことを発表した。11年に制定された関連法を根拠として仕組みが創設された同制度 は、制度全体で27の方法論が登録されており、現時点で利用可能なものは10となっている(表)。
(注1)連邦政府が温室効果ガスの排出削減につながる取り組みを行う事業者を支援する制度。登録された方法論に基づき温室効果ガス(GHG)排出量を削減・吸収することで、二酸化炭素換算で1トン当たり1ACCUのカーボンクレジットを取得・利用が可能。
同制度を基に発行されるカーボンクレジットは、大規模事業者に設定された年間の二酸化炭素(CO2)排出許容値より排出量が少なかった場合に発行されるセーフガード・メカニズム・クレジット(SMC)(注2)と併せてカーボンクレジット市場で取引されており、植生改善分野(植林等)が圧倒的な発行量となっているものの、農業分野の発行量も年々上昇傾向にある(図)。なお、近年の1ACCU当たりの取引価格は、30〜40豪ドル(3350〜4467円:1豪ドル=111.68円(注3))となっている。
(注2)制度対象企業(施設)の排出量が連邦政府の設定した排出許容値より少ない場合に自動的に発行され、目標遵守や他社への売却、バンキングが可能なクレジット(金融商品)。年間のGHG排出量(CO2換算)が10万トンを超える施設に対して遵守が義務付けられており、排出許容値は毎年引き下がる仕様となっている。
(注3)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2026年3月末TTS相場。
今回の発表は豪州の肉用牛業界で大きな注目を集めているが、これは、家畜群管理に関する方法論(15年)の見直しが正式にアナウンスされたことにある。同方法論は、これまで農業分野で最もカーボンクレジットの発行に活用された手法とされていた。しかしながら、飼料効率改善や繁殖成績向上などにより「畜産物1キログラム当たりの生産に要するGHG排出量」を削減するという要件は、22年に実施された排出削減保証委員会のレビューにおいて、その妥当性に疑問が呈された。同レビューにより「肉用牛業界はインセンティブがなくとも大規模化・効率化が進んでおり、この手法はもはや追加的な対応とはいえない」と結論付けられ、業界から反対の声はあったものの、24年12月から新規プロジェクト受付が停止されていた。
このため、今回の見直しの開始について業界からは歓迎の声が挙がっており、見直しを主導する豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)のクロウリーCEOは、「現在開発しているあらゆる新技術、例えばメタン削減効果がある飼料添加物などを方法論に組み込むことで、生産者は新たな収益源を確保することができる」と述べている。豪州ではこれまで、メタン削減効果が実証されてきた海藻アスパラゴプシス由来の飼料添加物などは、コスト面が導入の大きな課題とされてきた。新たなカーボンクレジットの方法論が確立されることで、コスト面の障壁は緩和され、業界全体のGHG排出に寄与する可能性があることから、見直しの進捗についてその動向が注目されている。
【調査情報部 令和8年4月22日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9532