豚肉価格が低迷する中、中国主要メディアがその要因を分析(中国)
中国で豚肉価格の下落傾向が止まらない。2026年4月に入り、生体豚の平均価格が1キログラム当たり8.7元(204円)(注1)と、この14年間の最低価格を更新した(注2)。養豚農家は豚一頭を出荷するごとに423元(9902円)の赤字になっているという。
中国養豚業界のメディア『中国豚業』は同月19日、「豚肉価格は26年第2四半期には下げ止まり、下半期には需給バランスが改善するとの期待が持てる」としつつ、価格低迷が続く主な理由について、以下の見方を紹介した。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均為替相場」の2026年3月末日TTS相場である1元=23.41円を使用した。
(注2)中国養豚ビッグデータ(農畜産物価格提供企業が運営する、中国各省、各自治区および4直轄市の市場価格情報を即日で提供するサイト)によれば、生体豚のうち「外三元」(外国から導入されたデュロック、ランドレースおよび大ヨークシャーから産出された豚の総称)の出荷平均価格は4月15日、8.77元を記録した。
1) 母豚PSY向上により、出荷抑制下での母豚削減効果が低下
中国の母豚1頭当たりの年間離乳子豚数(PSY)は2020年の16.1頭から26年には26.3頭と、6年間で6割も向上した。巨大養豚企業の例を見れば、巨星農牧は既に30頭を超え、牧原股份はおおむね28頭で推移している。母豚の飼育頭数を減らしても出荷頭数は期待したほど減少しないため、供給過多が解消されず、豚肉価格も下げ止まらない。
2) 企業の対応変化で、飼養頭数を維持したコスト削減策が進展
かつては小規模な養豚場が多く、過剰生産に伴う価格低迷への対応は飼育頭数の削減によって行われ、その削減は実際には小規模な養豚場の閉鎖や倒産によって実現されていた。しかしながら、養豚の大規模化が進み、一企業の飼育する頭数が増えて経営規模が大きくなった結果、豚肉価格が低迷しても飼育頭数や養豚場数が削減されるようなことはなくなった。これは、飼育規模の大きい養豚企業が、飼育頭数を削減して赤字を抑制するのではなく、あらゆる手段を講じて、例えば飼育期間や出荷体重を調整するなど、飼育頭数の削減以外の手段によって出荷総量を抑制するようになったためである。同時に、大規模企業は豚肉の先物取引を利用することで、豚肉価格の低迷が財務諸表に与える影響を緩和させるという「高額な保険」を活用し、価格低迷が経営にもたらす影響を最低限に抑えている。年間出荷頭数が100万頭を超える32企業のうち豚肉の先物取引を利用している企業数は実に24に上る。このように、大規模企業が中心となった養豚業界は、零細飼育農家が多かった昔とは異なり、現物豚肉価格が短期的に下落した結果、恐怖心から飼育頭数を削減してしまう、というような反応を示さなくなった。
3) 国民の消費傾向の変化により、食生活における豚肉の位置づけが構造的に変化
かつて中国国民にとって食肉と言えば豚肉であり、2018年には食肉消費に占める割合が統計を取り始めて以降最も高い62%を占めるに至ったが、25年にはその割合が58%にまで減少した。一人当たり豚肉消費量(家庭内消費)も23年に過去最高の30.5キログラムを記録した後、24年には28.1キログラム、25年には26.6キログラムと2年連続で減少した。これは、相対的に家きん肉が安価であることや牛肉・羊肉の品質向上に対する消費者認知が進んだことで、豚肉からこれらの食肉への代替が進んだ結果でもあるが、より本質的な理由は、国民の消費傾向が過去にない速さで変化し、食において「低脂肪、高タンパク質、調理が簡便」なことが重要になった結果、豚肉はチャーシューのように「高脂肪で手間が掛かる」食材だと認識されるようになったためである。
以上のような理由から、豚肉価格は低迷し続けている。専門家によれば、豚肉価格は供給量変化の影響を受けやすく、供給量が1%変われば市場価格が5%も変動するという。生産過剰であるからと言って生産を過度に抑制した場合、仮に供給が1%でも不足すれば、豚肉価格はすぐに5%も上昇し、購買に影響を与えてしまう。
このように舵取りが難しい中、中国政府の反応は早く、今年3月、4月にはそれぞれ1万トンに及ぶ備蓄用冷凍豚肉の買い入れと放出といった手段を講じることを発表した。また、中国農業農村部は3月3日、養豚企業を集めた会合を開催し、繁殖雌豚頭数目標を現行の3900万頭からさらに引き下げて3650万頭とする方向性について言及した。政府の方針は従来の「ソフトな誘導」策から「ハードな強制」策に移行したと言えるだろう。
現在、業界全体で生産調整はうまく進んでいないが、価格低迷が続くことで生産効率の悪い養豚場はやがて淘汰(とうた)され、間もなく底が見えるだろう、というのが専門家の比較的一致した見方である。
なお、中国農業農村部は4月28日、「生体豚観測予報専門家諮問委員会」の設立大会を開催した。同部公表情報によれば同委員会の設立目的は、養豚産業における需給関係が大きく変化しているため生産調整を十分に強化する必要があり、業界の知見を集め、市場動向の分析と早期予測とを強力かつ効果的に行うことにあるとされている。
【調査情報部 令和8年5月11日発】
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農畜産業振興機構 農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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