豪州採卵鶏業界、アジア太平洋地域で初の卵内雌雄判別技術を導入(豪州)
豪州最大の採卵鶏孵化場であるSpecialised Breeders Australia(SBA)社は2026年5月6日、自社の孵化場に卵内雌雄判別技術(注1)を導入し、同年6月1日より同技術を用いて生産された雌ひなの供給を開始することを発表した。豪州初の事例であり、かつアジア太平洋地域でも初とされている。
採卵鶏生産の副産物である雄ひなの殺処分は、アニマルウェルフェア(AW)の観点から回避すべきとされており、EUを中心に技術開発や法規制の整備が進展している。SBA社が導入した技術は、ドイツ企業Agri Advanced Technologies(AAT)社のCheggyと呼ばれる機器であり、ハイパースペクトルカメラ(注2)により、ふ卵2〜3日目の卵の雌雄を97%の精度で判別することが可能となっている。また、1時間当たり2万個の卵を処理する能力を持ち、非侵襲的な方法であることから汚染リスクが少ないとされている(写真)。なお、同技術による雌雄判別は、羽色の違いを検知して判別するため、その利用は雌雄で羽色が異なる系統(主に褐色系)に限定されているが、豪州の商業卵生産の多くは褐色系とされている。
(注1)孵化前の卵の時点で雌雄を判別する技術。従来の雌雄判別は、専門の鑑別師が孵化後に雛の総排泄腔にある突起の有無をみて判別していた。
(注2)光を非常に細かく分光することで、人間の目では評価困難な物性の違いや、見えない現象を可視化する技術を搭載したカメラ。
豪州の鶏卵産業の概要とAWへの対応
豪州の鶏卵産業をデータで見ると、2025年6月30日時点で2489万羽の採卵鶏が飼養されており、2024/25年度(6月〜翌7月)の鶏卵生産量は68億7000万個(約41万トン、1個=60グラムで試算)と、その生産規模は日本の約5〜6分の1程度となっている。なお、孵化率や育成率は100%ではないものの、採卵鶏の平均産卵期間が約70週間と52週間(1年換算)を上回ることから、年間の雌ひな孵化・導入羽数は2000万羽程度と見込まれる。こうした中、同市場で約7〜8割のシェアを有すると推定されるSBA社の決定は、業界に大きな影響を及ぼすと考えられる。
導入の背景について整理すると、AWに関する主要な権限は連邦政府ではなく州・準州に帰属するが、現時点では各州・準州の法律で生後1日齢の雄ひなの殺処分は規制されていない。一方、連邦政府が各州・準州のAW規制の参考として公表している豪州AW基準・ガイドライン(家きん向け)においては、「卵内雌雄判別技術が商用化され次第、活用すべきである」と推奨されている。また、25年に非営利団体Innovate Animal Agが豪州在住の1000人を対象に行った卵内雌雄判別技術に関する調査結果を見ると、84%が同技術を利用した卵の購入に興味があると答え、また、73%が業界は同技術を導入すべきと回答している(図)。
加えて、生産者の業界団体Egg Farmers of Australiaは同日にプレスリリースを発出し、「同技術は、持続可能で責任ある卵のサプライチェーンを支える上で重要な役割を果たす」と、前向きに評価している。
このことから、SBA社は生産者・消費者側に一定の需要があると見込んで導入に踏み切ったものと考えられる。一方、同社は既存の雌ひな供給ラインも維持するとしており、卵内雌雄判別技術を用いて生産された雌ひなを選択するか否かは、生産者の判断に委ねられているが、どの程度価格差があるのかなどについては、現時点では明らかになっていない。なお、Cheggyの判別技術は米国の国際的な非営利団体「Humane Farm Animal Care(HFAC)」のAW認証を取得している。HFACの認証ラベルは豪州の小売業界においても広くみられることから、一定のマーケティング効果が期待されるほか、プレミアム価格に対する受容性も一定程度見込まれる。
【調査情報部 令和8年5月26日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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