EUとメキシコ、FTAの更新に署名、農産品の関税削減対象を拡大(EU、墨)
EUおよびメキシコの両首脳は2026年5月22日、「現代化された包括的協定(MGA)」および「暫定貿易協定(iTA)」に署名した。MGAは、2000年に発効したEU・メキシコ間の自由貿易協定(FTA)を更新するもので、これにより、肉類や乳製品などを含む農産品分野において、関税削減の対象品目が拡大される。
欧州委員会は、本協定によりメキシコでのEU産品のシェア向上が期待されるとしている。25年のEUのメキシコ向け農産品・食品輸出額は、全体の約1%に相当する25億ユーロ(約4700億円、1ユーロ=188.87円(注1))であった。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2026年4月末TTS相場。
協定における畜産関係の主な内容
(1)EUからメキシコ向け
牛肉は、段階的に拡大する関税割当の対象となり、最終的に3万トン(枝肉換算重量、以下この項において同じ)の無税枠が設定される(表1)。くず肉には別途、最終的に1万トンの枠が設定される。
豚肉は、発効後、段階的に関税が削減され、7年目に撤廃される。ただし、ロースは1万トンの関税割当が設定され、枠数量を超えるものには20%の枠外税率が課される。
家きん肉は、豚肉と同様、7年目に関税が撤廃される。ただし、鶏のももは、最大2万トンの関税割当が設定され、枠数量を超えるものには100%の枠外税率が課される。
乳製品に関しては、ブルーチーズやヨーグルトは発効後、7年目に関税が撤廃され、その他の品目は関税割当が設定される(表2)。
(2)メキシコからEU向け
食肉に関しては、牛肉および牛のくず肉にはそれぞれ最大5千トン(枝肉換算数量、以下この項において同じ)の範囲内で、枠内税率7.5%の関税割当が設定される(表3)。豚肉および家きん肉については、関税割当が設定される品目を除き、即時または段階的に関税が撤廃される。ただし、現時点でメキシコは、EUへの輸出に必要な生鮮の牛肉、豚肉、家きん肉に関する衛生条件などを満たしておらず、輸出可能な第三国リストに掲載されていない。
(3)地理的表示(GI)による保護
EUの地理的表示(GI)制度で保護されている食品や飲料製品568品目がメキシコでも保護されることになる。既に蒸留酒などの232品目が保護されているが、今回新たに、イタリア産チーズのパルミジャーノ・レッジャーノ、同国産ハムのプロシュット・ディ・パルマ、オランダ産チーズのゴーダ・ホラントなどが保護の対象に加えられる。
今後の流れ
欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体のCopa-CogecaはXで、本署名によりEUメキシコ間の農産品・食品貿易はさらに改善されるとして、歓迎の意を表明した。
今後は、EUおよびメキシコそれぞれで、発効に向けた批准手続きが進められる。
EU側においては、MGAの発効には全加盟国による批准が必要となるが、関税削減や投資促進など通商部分を対象とするiTAは、EU理事会と欧州議会の承認で適用が可能である。最近の事例としては、メルコスールとの包括的パートナーシップ協定において、2026年1月の署名後、5月からiTAが適用されている
(注2)。
(注2)詳細は、海外情報「EUメルコスール貿易協定、5月1日から暫定適用開始(EU)」をご参照ください。
【調査情報部 令和8年6月8日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:調査情報部)
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