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米国国際貿易委員会、主要供給国における無脂乳固形分の国際競争力に関する報告書を公表(米国)

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 米国国際貿易委員会(USITC)は2026年5月27日、無脂乳固形分製品(以下「NFS製品」(注1)という)の国際競争力に関する報告書を公表した。本報告書では、無脂乳固形分の主要供給国における需給動向について整理するとともに、各国の競争条件を比較している。特に、カナダにおいて、制度的に無脂乳固形分の価格が低く抑えられていることや、それを利用した高たんぱく乳製品などの輸出量が増加した可能性が高いとの指摘について、米国乳業業界は、カナダとの米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)見直しに向けた重要な分析と位置付けている。
(注1)NFS(nonfat milk solids)は、乳脂肪以外の乳固形分。本報告書のNFS製品とは、主にバターおよびチーズ製造の副産物から生産され、牛乳から脂肪と水分を除去した後に残る脱脂成分(主にたんぱく質、乳糖、およびミネラル)からなる製品として、脱脂粉乳、ホエイ、乳糖、カゼインおよびカゼイネート、高たんぱく乳製品を調査対象としている。

1.調査の概要

 今回の調査は、2025年4月23日に米通商代表部(USTR)より行われた要請に基づいて、同年5月に開始された。米国、EU加盟国の一部、ニュージーランド(NZ)、豪州、カナダを対象とし、19年から24年までの期間におけるNFS製品に関する生産・消費・輸出入の動向、各国・地域のNFS製品輸出における競争優位性とそれらに影響を与える政策や制度要因などについて分析が行われた。
 主な調査結果として、(1)調査対象期間におけるNFS製品の輸出額は、EU、米国、NZの3者で8割以上を占めること(図1)、(2)NFS製品の中でも、高たんぱく乳製品の生産・輸出が需要増に伴い拡大傾向にあること、(3)各国がそれぞれ競争優位性や劣位性を有すること(表)、(4)NFS製品の製造コストは8〜9割を原料乳価が占めることから、乳価に関する制度や政策が製品の国際競争力に影響を与えること―などが挙げられた(注2)
 中でも(4)については、26年7月にUSMCAの見直しを予定している中で、前述の通り、カナダにおける無脂乳固形分の価格が制度的に低く抑えられていることや、高たんぱく乳製品などの輸出量が過去10年間に大きく増加した可能性が高いことについて指摘している。業界では、カナダとの乳製品貿易を巡る議論に影響を与えるとみられている。
(注2)調査結果の詳細は、報告書(https://www.usitc.gov/publications/332/pub5732.pdf)をご参照ください。
図1 NFS製品の輸出金額割合(2024年)
表 国・地域別の競争力に影響を与える主な要因

2.カナダの供給管理制度とNFS製品の輸出競争力をめぐる指摘

 カナダでは、乳製品の需給を乳脂肪ベースで管理してきた結果、バターなどの需要に応じて、無脂乳固形分が相対的に余剰となりやすい構造がある。このため、供給管理制度の下で用途別乳価の設定などを通じた需給調整が行われているほか、2017年2月には、原料乳製品国家戦略の下で新たな乳価分類(クラス7)が創設され、乳たんぱく成分が低価格で加工業者に供給されていた(注3)
 米国を含む乳製品輸出国は、「同戦略は輸出補助金に該当する可能性がある」として提起を行い、カナダとの通商交渉においても争点として取り上げられた。この結果、20年7月に発効したUSMCAでは、(1)クラス7乳価の廃止、(2)カナダにおける脱脂粉乳や乳たんぱく濃縮物(MPC)、育児用調製粉乳の製造に用いられる無脂乳固形分の価格を、米国を基準とした価格を下回らないようにすること、(3)これら製品について輸出量の上限を設定すること―などが合意された。しかし、USMCAにおける合意事項の対象となっていなかった乳たんぱく分離物(MPI)(注4)などの輸出が増加し(図2)、米国内にて「カナダによる事実上の合意回避に当たる」との指摘がなされた。25年7月には、米国乳業団体からUSITCに対し、貿易の実態と米国市場への影響について報告が行われた。
(注3)供給管理制度や原料乳製品国家戦略の詳細については、「畜産の情報」2018年3月号「転換期を迎えるカナダ酪農乳業〜原料乳製品国家戦略導入の背景と影響〜」(https://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2018/mar/wrepo01.htm)をご参照ください。
(注4)原料乳を濃縮し、たんぱく質含有量を概ね90%以上まで高めた乳原料。たんぱく質分離物(HS コード3504)に含まれるが、このHS分類には植物由来などのたんぱく質も含むため、厳密な区分は困難とされる。
図2 脱脂粉乳等輸出量の推移(カナダ)
 このような中、報告書では、カナダでは供給管理制度の下、(1)生乳の農家受取価格と切り離して用途別乳価が設定される仕組みが継続していること、(2)脱脂粉乳や乳たんぱく原料を含むクラス4乳価は、24年時点でも他用途向けの3分の1から5分の1程度となっていること、(3)加工施設への設備投資や、米国への地理的近接性による競争優位性を有していること−などが説明された。
 また、脱脂粉乳の生産量が19年から24年にかけて12%減少している一方で、17年から18年にかけてMPIの加工施設が新たに稼働を開始したことなどから、業界関係者の報告を引用しつつ、無脂乳固形分がMPCやMPIに仕向けられた可能性が高いとした(注5)
 さらに、MPIを含むたんぱく質分離物について、ワシントン州およびノースダコタ州(注6)におけるカナダからの輸入量は、13年から15年の累計では76トンであったところ、22年から24年の累計では3万2422トンに増加しており、MPIの輸入が増加した可能性が高いと述べた。
(注5)カナダにおける脱脂粉乳およびホエイ粉末以外の乳副産物生産量については、23年以降、非公表となっている。
(注6)これら2州は、カナダにおいてMPIの加工施設が設立されたブリティッシュコロンビア州およびマニトバ州と隣接している。なお、ワシントン州向けの輸出は大部分が乳由来製品と見込まれるものの、ノースダコタ州については、エンドウ豆由来のたんぱく質も含まれている可能性が高いと指摘している。

3.業界団体の反応

 国際乳製品協会(IDFA)は、国際的な乳たんぱく需要の拡大や米国の供給能力に関する分析を評価しつつ、カナダの供給管理制度が、高たんぱく乳製品などの輸出に競争優位性をもたらしているとの認識を改めて示した。また、USMCAの見直しを通じて公正な価格設定が図られるよう、引き続き支援を行っていきたいと述べた。
 全米生乳生産者連盟(NMPF)および米国乳製品輸出協会(USDEC)は、カナダはUSMCAの制限対象外となる一部乳製品の輸出量を大幅に増加させており、米国にもこれら製品が流入するなどして、市場競争に影響を与えていると述べた。また、USMCAの見直し過程において、本報告書を活用することにより、カナダが乳たんぱく製品輸出の制限に関する合意を回避しようとする試みへの対処に努めるとした。
【小林 大祐 令和8年6月10日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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