ASF発生の長期化でフィリピンの豚肉輸入需要拡大(フィリピン)
国連食糧農業機関(FAO)は2026年6月18日、「食料需給見通し(Food Outlook)」を公表した。この中で、豚肉については、フィリピンを中心に輸入需要が拡大するとの見通しが示された。この要因についてFAOは、アフリカ豚熱(ASF)の発生
(注)が長年にわたり繰り返されており、国内のと畜頭数が抑制されていることから、輸入需要が高まっているためとしている。
(注)フィリピンの養豚業界におるASFの影響については、『畜産の情報』2023年10月号「アフリカ豚熱の発生がフィリピンの養豚業界に与えた影響について」をご参照ください。
フィリピンの豚肉生産について
国民の大多数がキリスト教徒であり、宗教上の制約を受けることがあまりない同国では、食肉消費の大部分を豚肉と鶏肉が占めている。
フィリピン統計局によると、2019年7月に初めてフィリピン国内でASFの発生が確認されて以降、豚肉生産量および飼養頭数は減少傾向で推移している(図1)。25年の豚肉生産量(生体重量ベース)は165万トン(前年比2.7%減)とわずかに、25年1月時点の飼養頭数は876万頭(前年同月比8.4%減)とかなりの程度、いずれも減少した。
フィリピン農業省(DA)によると、26年6月12日に開催された「Hog Festival」で、同省のラウレル農業大臣は、養豚産業が同国農業の基盤であり、地方部においては重要な生計手段であると位置付けた。同氏は、「ASFの影響からの復興支援とともに、安全で手頃な価格の豚肉を国民に安定供給することが目標である。養豚産業の再建は、地方経済の強化および食料安全保障の確保に直結する」と述べた。
また、現地報道によると、DAは豚の飼育頭数をASF発生前の1300万頭水準へ回復させるために、養豚産業の再建プログラムを推進しており、28年までに600万頭の増頭を目標としている。
フィリピンの豚肉輸入動向
2026年1〜3月の豚肉輸入量は、13万2949トン(前年同期比47.8%増)と大幅に増加した(図2)。DAによると、フィリピン国内の豚肉の供給不足により豚肉価格が高騰しているため、輸入需要が増加しているとみている。
輸入先別に見ると、輸入量全体の約8割を占めるブラジルは、10万2994トン(同74.6%増)と大幅に増加した。ブラジルのサンパウロ大学農学部応用経済研究所(CEPEA)によると、ブラジル国内の消費が低迷しているため、食肉事業者などが積極的に輸出を行っているとされる。
その他の主要輸入先国はデンマークおよびフランスが増加した一方で、カナダ、オランダおよびスペインはいずれも減少した。フィリピンの現地報道によると、スペインについては、25年11月に同国でASFの発生が確認されたことを受け、一時的にスペイン全土からの輸入を停止していた。その後、両国間でASFの地域主義(ゾーニング)に基づく輸入条件が整備され、未発生の低リスク地域で26年5月8日以降にと畜された豚肉について、輸入停止措置が解除されている。
【田中 美宇 令和8年7月1日発】
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