マクドナルド社、豪州の酪農由来肉用牛生産プログラムへの投資継続(豪州)
世界的外食チェーンであるマクドナルド社向けの食肉調達・サプライチェーン管理を担う戦略的パートナーであるFMGグローバル社(以下「FMG」という)は2026年6月末、豪州の酪農場で4年に渡り実施した酪農由来肉用牛の生産実証プログラム(注1)の結果を公表したと報じた。FMGは、30年までに豪州における酪農由来肉用牛の年間処理頭数を10万頭まで引き上げる目標を掲げており、この処理頭数は約1万トンの牛ひき肉(ハンバーガーパティ用)に相当する。
(注1)酪農副産物である乳用雄子牛を肉用牛として有効活用する取り組みを指す。具体的には、主にアンガス種の精液を活用した交雑種の生産を指し、受精卵移植による肉専用種の生産は基本的に想定されていない。
公表されたレポートによると、マクドナルド社が資金提供した実証プログラムにより、豪州の酪農場で生まれた1562頭の酪農由来肉用牛(交雑牛)を4つの異なる方式で飼育し、販売までのサプライチェーンの実証試験を行ったとされている。その結果、霜降りの度合いが高い部分肉は日本、韓国、中東などのプレミアム市場、赤身が多い部分肉はひき肉として豪州国内市場や米国向けに供給され、それぞれの市場で高い食味評価を得られたと報告している(図)。このことから、豪州では遺伝学の進歩により、高い飼料効率や優れた枝肉特性を備えた交雑牛の生産が既に実現可能であることが示されたと、同レポートは結論付けている。
また、酪農由来肉用牛の利点として、生産工程における温室効果ガス(GHG)排出量の低さを挙げている。豪州におけるGHG排出量算定およびライフサイクルアセスメント(LCA)(注2)によると、生産過程で発生したGHG排出量を製品(生産物や副産物)ごとに配分する同評価手法において、酪農における主要な製品は生乳であり、乳用雄子牛は副産物とみなされるため、乳用牛から生まれた雄子牛は肉用牛から生まれた子牛に比べ、割り当てられるGHG排出量が少なくなっている。酪農由来肉用牛のサプライチェーンを通じたGHG排出量(二酸化炭素換算)は、牛肉製品1キログラム当たり11.8キログラムであり、従来の牛肉サプライチェーン由来の排出量を57%下回るとの試算が示されている。マクドナルド社は、持続可能な原料調達が可能と判断し、投資を後押ししている。
(注2)環境影響評価手法の一つ。商品およびサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るライフサイクル全体を通しての環境負荷を評価する手法。
一方、豪州の酪農由来肉用牛システムの大きな課題として、子牛育成専門業者の不足が挙げられている。業界団体デイリー・オーストラリアが23年に実施した委託調査レポートでは、余剰乳用雄子牛を肥育して肉用牛市場に出荷した場合の経済的影響が評価されているが、安定した収益確保には同業者の存在が不可欠であるとの見解を示している。この他にも、酪農家の肉用牛市場への理解度向上やフィードロット・食肉加工部門との強固な連携などが必要とされている。
同レポートでは、マクドナルド社およびFMGは豪州の酪農由来肉用牛生産システムへの構造転換を強く後押ししていくと表明しており、今後も業界パートナーへの呼びかけを続けていくとしている。
【調査情報部 令和8年7月9日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9532