急増するデータセンターに懸念、土地・電力・水消費で農業と競合か(豪州)
AI(人工知能)やクラウドサービスの需要拡大は、豪州農業に新たな課題を提起している。豪州ビクトリア(VIC)州の農業団体であるVIC州農民連盟(VFF)は2026年6月23日、同国で加速するデータセンター(以下「DC」という))(注1)の建設が農業分野の資源利用に与える影響について実態把握を求める提言書を発表した。
近年、豪州は広大な土地や再生可能エネルギーの潜在力などを背景に、DC開発の世界的な拠点として台頭しており、24年の投資総額は世界第2位の96億豪ドル(1兆902億円:1豪ドル=113.56円(注2))と推計されている(図)。
(注1)データの保存・処理を行うサーバーや通信機器を集約した施設であり、クラウドサービスやAIの利用を支える重要なデジタルインフラ。24時間稼働しており、多くの施設では水冷式冷却システムを採用しているため、大量の電気・水を消費する。
(注2)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2026年6月末TTS相場。
26年3月31日時点で、豪州では162のDCが稼働、90のDC建設が計画されており、特に「ハイパースケール」と呼ばれるAIサービスの展開に必要な高度な演算処理が可能な大規模DCが増えている。これらは従来の施設に比べ、大量の電力や水を消費することから、VFFは今回の提言書を通じて、AI産業が農業と共存していくためには、DC開発用地の選定プロセスや水資源の優先供給順位、干ばつ時の対応などに関する議論が必要であると伝えている。VFFのミルゲート会長は取材に対し、「地域の意思決定において、農業への影響を十分に考慮するためには、農業関係者が意思決定プロセスに参画できることが不可欠だ」との認識を示した。
DCには、どれだけの電力や水が必要となるのか。DCの業界団体であるデータセンター・オーストラリアは、25年時点でDCは豪州の主要送電網の電力の2%(3.9テラワットアワー)、水資源の0.04%(5.5ギガリットル)を使用しており、30年にはそれぞれ約3倍まで増加すると予測している。農林水産業の水資源利用量は年間1万ギガリットル以上で、これよりはるかに少ないDCの同利用量が増加しても、農業への影響は軽微とされるが、予測は過小評価されており、地域レベルでは影響を及ぼす可能性があるとされている。また、電力についてはその影響が大きく、生産者は電力価格高騰による経済的負担を強いられる可能性があるとしている。
豪州連邦政府は、国家AI計画に基づく世界的なAI投資を誘致する政策を掲げているが、AIインフラ開発業者に対しては、新規プロジェクトの採択に関係する期待事項として、再生可能エネルギーの積極的な利用や水資源の持続的な管理などを挙げるにとどまっている。DC建設については、 州・準州政府が実質的な計画評価と承認・管理の責任を負っており、意思決定に対する農業界の積極的な関与が求められている。一方、豪州農業はロボティクスや家畜のモニタリング、バイオセキュリティなどの分野でAIの恩恵を受けており、DCの建設は生産性向上や技術革新を促進する側面も持つ。資源への負荷とデジタル化のメリットの両立を目指す中で、今回のVFFの提言書は議論の出発点となる可能性がある。
【調査情報部 令和8年7月23日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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