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欧州委員会、「畜産戦略」を公表、畜産をEUに不可欠な産業と位置付ける(EU)

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 欧州委員会は2026年7月7日、EUの畜産部門に対する今後の政策の方向性を示す「EUの畜産戦略(EU strategy on livestock)」を公表した。本戦略は、25年2月に公表されたEU農業の指針である「農業と食のビジョン」に基づき、加盟国、農業者、業界団体や市民団体などで構成された作業部会において、1年以上の議論を重ねて策定された。畜産部門に特化した「戦略」が策定されるのは今回が初めてとなる。
 本戦略では、持続可能な畜産を、EUの食料安全保障や農村コミュニティの維持に不可欠な産業と位置付け、同産業が長期的に強靭かつ持続可能であり続けるため、以下の5つを優先事項とした政策的支援を提示している。

(1)リスク管理

 家畜伝染病の予防に向け、予防的ワクチン接種の活用支援のため現行法令の見直しなどを行う。また、気候変動対策として、換気設備などのインフラ整備や干ばつ耐性を持つ育種技術などの研究開発への投資を促進する。
 さらに、欧州委員会は、輸入依存度を低減するため、畜産戦略と同日に「たんぱく質行動計画(Protein Plan)」を公表した。同計画では、EU域内で飼料用の油糧種子およびたんぱく質源となる作物の自給率を、2025年の25.8%から35年までに35%へ引き上げる目標を掲げている。

(2)競争力の強化

 資金アクセス改善のため、畜産部門専用の金融スキームの導入を検討するとともに、投資促進に向けた許認可手続きの迅速化を図る。循環型経済の推進に向け、堆肥など副産物が有効活用できる環境の整備も検討する。
 また、公平な競争環境の構築のため、特にアニマルウェルフェア(AW)に関するEUの生産基準を、輸入品に対してもより厳格に適用するための取り組みを進める。

(3)持続可能性の向上

 AWの向上のため、ケージ飼育の段階的廃止や分娩用クレートからペンへの移行などを含めた現行法令の改正案を、採卵鶏および肉用鶏については2026年末までに、豚については27年第2四半期までにそれぞれ提示する。これらの実施に当たり、十分な移行期間と財政的支援といった農業者側への配慮も示した。
 家畜由来の温室効果ガス(GHG)の効果的な削減については、農場レベルにおけるGHG排出量の算定方法を策定する。また、EU域内での減産は、輸入増加やEU域外での増産によるGHG排出量の増加につながる可能性を認識することが重要であるとした。

(4)地域経済への貢献

 畜産を過疎化リスクのある地域や条件不利地域にとって重要な産業と位置付け、こうした地域で畜産経営を継続できるよう、小規模または移動式の食肉処理場の整備に向けたロードマップを策定する。

(5)EU産畜産物の高品質性の認知度向上

 EU産畜産物が、環境への配慮やAW基準などの観点から、市場において適切に評価される仕組みの構築を進める。例として、EU産と明確に識別できる表示制度(家きん肉から導入予定)や、従来の枝肉等級という定量的基準に加え、官能特性や生産方法などの定性的要素を反映した食肉の品質表示制度の検討を進める。また、地理的表示(GI)の保護や有機畜産の推進も引き続き行う。

農業関係団体は畜産の政策的位置付けの転換を歓迎

 欧州最大の農業協同組合・農業生産者団体のCopa-Cogecaは、今回の戦略において、これまで気候変動対策や環境保全、AWの規制の対象として扱われる傾向にあった畜産部門が、EUにとって重要な産業として認識されたことを歓迎した。一方で、戦略の内容には運用面での具体性や明確性が不足しているとし、今後の立法・財政措置の重要性を指摘した。
 欧州最大の環境団体ネットワークである欧州環境事務局(EEB)は、今回の戦略は従来の集約的畜産を擁護する内容であり、気候変動対策や農村開発などに関するEUの目標達成に向けた計画とはなっていないと批判した。
【調査情報部 令和8年7月23日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9532