OECD/FAO、2035年までの世界の食肉需給見通しを公表
経済協力開発機構(OECD)および国連食糧農業機関(FAO)は2026年6月29日、共同で35年までの中長期的な世界の食料需給見通し(注)を公表した。このうち、食肉(牛肉・豚肉・家きん肉)について紹介する。
以下、原稿内の数値は、特に断りがない限り枝肉重量ベースである。
(
注)OECDおよびFAOは共同で、中長期的な世界の食料需給見通しを年1回(7月ごろ)公表している。
(資料) OECD-FAO Agricultural Outlook
生産
世界の食肉生産量は、2035年には4億1179万トン(23〜25年平均比11.5%増)とかなり大きく増加すると予測されている(図1)。地域別ではアジアでの生産量の伸びが大きく、世界全体の増加分の54.8%を占めるとされている。国別には中国、インド、インドネシア、パキスタン、フィリピン、ベトナムなどで大きく増加する見込みである。
また、品目別では家きん肉が増加分の66.3%を占めるとされている(図2)。
牛肉生産量は、35年に8197万トン(同7.4%増)とかなりの程度増加すると予測され、この成長は主に中国、インド、パキスタンで見込まれている。中国では、旺盛な国内需要に応えるため、同年に872万トン(同12.1%増)、安価なインド産水牛肉は、ハラール認証を要する特定の市場からの需要拡大が見込まれることから、同国の生産量が549万トン(同20.4%増)と予測されている。
豚肉生産量は、インテグレーションが進むブラジルが600万トン(同11.6%増)となるなど中南米における生産量の増加などにより、35年には1億3076万トン(同4.4%増)とやや増加すると予測されている。
家きん肉生産量は、土地の制限を受けることが少なく、規模拡大が容易であることなどにより、動物性たんぱく質への需要が増加する中、他の食肉に比べて対応が容易であることから、1億7691万トン(同19.0%増)と大幅に増加すると予測されている。
消費
世界の食肉消費量は、人口増加や所得の向上に伴い増加し、2035年の1人当たり年間食肉消費量(小売重量換算ベース)は、29.5キログラム(23〜25年平均比2.4%増)と予測されている。
この伸びは、過去10年間に見られた伸びの半分以下にとどまっており、消費量が多い先進国ほどその伸びはさらに小さくなると予測されている。他の食肉と比較した価格水準はたんぱく源の選択における重要な決定要因であり、多くの市場において牛肉などから家きん肉への切り替えが継続すると見込まれる。
牛肉消費量は、35年には8194万トン(同8.2%増)と予測されている。欧州、オセアニアなどでは、他の食肉に比べて牛肉価格が高値であることや、環境問題に対する関心の高まりなどにより減少すると見込まれている。対照的にアジアや中東の一部地域では、所得増加や摂取するたんぱく質の多様化により、1人当たりの消費量は増加する見込みである。この結果、世界全体の1人当たり牛肉年間消費量は35年に6.0キログラムと、23〜25年平均と比べ同量で推移すると見られる。
豚肉消費量は、35年には1億3076万トン(同4.7%増)と予測されている。欧州などでは需要の伸びが鈍化している一方、牛肉と比較して安価な豚肉に対する代替需要が増加する中南米において、消費量が増加すると見られている。世界全体の1人当たり豚肉年間消費量は35年に10.5キログラムと、23〜25年平均と比べて3.7%減少すると見込まれているが、これは、欧州地域の需要の鈍化に加え、人口増加率が高い地域では豚肉の消費が一般的でないことが反映されたものである。
家きん肉消費量は、35年には1億7691万トン(同19.6%増)と予測されている。これは、家きん肉の生産サイクルが短く、飼料効率も進んでいることから、価格が安価であり、供給が安定していることに支えられたものである。 世界全体の1人当たり家きん肉年間消費量は35年に11.5キログラムと、23〜25年平均と比べ9.5%増で推移すると見られる。
貿易(輸出量)
世界の食肉輸出量は、各国の生産が回復し消費の伸びが均衡した状態にあることから、過去10年間に比べ緩やかに拡大すると予測されている。特に、中国が国内生産を強化し輸入依存度が下がることで、世界の食肉輸出量に影響を与えている。2035年の輸出量は4318万トン(23〜25年平均比7.5%増)と予測されている
牛肉は、オセアニアからの輸出が23〜25年平均と比べて3.9%減少する一方、ブラジルが11.5%増、米国が9.6%増となるなどし、35年の輸出量は1409万トン(同5.5%増)と予測されている。
豚肉は、EUからの輸出が10.5%減となる一方、ブラジルが15.8%増、カナダが9.2%増、米国が6.1%増となることから、35年の輸出量は1002万トン(同2.6%増)と予測されている。中国は国内生産量の増加により、輸入量が減少(同22.5%減)する見込みである。
家きん肉は、オセアニア、アフリカを除く全地域で輸出が増加すると見られており、35年は1765万トン(同12.8%増)と予測されている。国別ではタイが25.8%、ブラジルが16.0%、中国が42.5%増加すると見られており、特に最近純輸出国に転じた中国は、今後10年間も輸出量を増加させ、タイに次ぐ第5位の輸出国としての地位を確立する見込みである。
価格
牛肉については、26年から2035年までの予測期間における初期の数年間で、主要生産地域では牛群の再構築が進みと畜に向けられる頭数が少なくなるため、価格は上昇するとみられる。その後は、飼養頭数の回復が進み供給が戻るにつれて価格は下落傾向で推移し、供給ひっ迫により高騰していた23〜25年平均に比べ、35年の価格は16%下落する見込みである。
豚肉および鶏肉価格は、生産サイクルが短く、需要の増加に応じてより迅速に生産を拡大することが可能であること、飼料効率の向上による生産量の増加に加え、中国をはじめとする主要輸入国からの需要の伸びが鈍化し、上昇圧力が弱まるとみられ、35年までに同20%程度下落すると予測される。
この結果、牛肉と豚肉・鶏肉との価格差が相対的に拡大すると見られ、価格の高い牛肉からより手頃な豚肉、鶏肉へのシフトが進むことになると見込まれている。
今後の食肉需給に影響を与える要因
同レポートでは今後の見通しに影響する要因として、厳しい環境規制の導入、気候変動、マクロ経済の変化、消費者のし好や購買力の変化、たんぱく質源の競合および家畜疾病の発生による影響が挙げられている。
【調査情報部 令和8年7月28日発】
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
Tel:03-3583-9532