OECD/FAO、2035年までの世界の乳製品需給見通しを公表
経済協力開発機構(OECD)および国連食糧農業機関(FAO)は2026年6月29日、共同で35年までの中長期的な世界の食料需給見通し
(注1)を公表した。このうち、生乳・乳製品について紹介する。
(注1)OECDおよびFAOは共同で、中長期的な世界の食料需給見通しを年1回(7月ごろ)公表している。
(資料) OECD-FAO Agricultural Outlook
生産
世界の生乳生産量(水牛の乳を含む(注2))は、飼養環境や飼料効率の改善、育種改良による1頭当たり乳量の増加から年平均2.0%上昇し、2035年には11億8340万トン(23−25年平均比24.2%増)に達すると予測されている。特にインドは小規模生産者と酪農協同組合が生産の主体となる世界最大の生乳生産国であり、飼養頭数および1頭当たり乳量の増加に伴い大きく増加することから、パキスタンとの2カ国が世界の生乳生産量に占める割合は、23−25年平均比の3割強から4割近くまで拡大すると予測されている。
(注2)乳牛が81%、水牛が16%、山羊や羊、ラクダが3%を占める
また、米国では、現状の飼養頭数が維持されるものの、他地域と比べ高い水準にある1頭当たり乳量がさらに増加することで、35年には1億1339万トン(同9.7%増)になると見込まれている。乳製品輸出量の多いニュージーランド(NZ)も1頭当たり乳量の増加により、2477万トン(同14.8%増)に増加すると予測されている。
一方、欧州連合(EU)については、1頭当たり乳量は増加するものの飼養頭数の減少により、生乳生産量はほぼ横ばいの1億5442万トン(同0.1%増)となると見込まれている(図1)。
消費
所得や人口の増加、都市化の進展などに伴い、世界の乳製品需要は生鮮乳製品を中心に増加し、乳製品の1人当たり消費量は今後10年間で年平均1.9%増加すると予測される。他方で、所得水準や食生活の違いにより、消費量や消費形態は国によって大きな差が生じている(図2)。
最も大きい伸びが見込まれるインドやパキスタンでは、飲用乳やヨーグルトなどの生鮮乳製品が消費に占める割合が多い一方、成熟市場である米国やEUではバターやチーズといった加工乳製品の割合が高い。中国は乳製品の1人当たり消費量の水準は低位にとどまっている。
乳固形分の消費形態として重要なチーズの消費は所得水準と密接に関連するとされており、消費量が多い地域は北米と欧州である。これらの地域においては、1人当たりのチーズの消費量は引き続き増加見込みである。また、バターの消費は、消費トレンドやライフスタイルの変化により北米や東南アジアにおいて回復傾向が見られる。
脱脂粉乳(SMP)と全粉乳(WMP)は、今後も製菓、乳児用粉ミルクおよびベーカリー原料としての消費が中心になると見込まれる。ホエイパウダーは、乳児や高齢者向けの栄養製品への利用のほか、特にアフリカなど生乳生産が限定的な地域では、牛乳やヨーグルトなど生鮮乳製品の原料として利用され、世界的に需要が高まっているとされている。
貿易
乳製品(生乳換算)の貿易量は、生乳の腐敗性や水分の多さから、世界の生乳生産量の7%未満であり、その多くをEU、NZおよび米国から輸出されるものが占めている(図4)。一方、WMPやSMPは生産量のうち、約半分が輸出されている。
生鮮乳製品の貿易量は少量にとどまるが、例外としてEUやNZから中国へ超高温瞬間殺菌(UHT)処理された飲用乳やクリーム製品が輸出されている。
主要な輸出品目は、EUがチーズ、NZがバターとWMPである。米国は今後10年間で最も勢いのある輸出国となり、特にSMPの輸出量は近年EUを上回っており、今後製造能力が拡大されることが前提であるものの、食品原料として世界的に広く需要があることから、2035年のSMP輸出量は増加すると予測されている(図5)。
輸入国や地域は幅広く分散しているが、特にアフリカ、東南アジアおよび近東・北アフリカ(NENA:Near East and North Africa)の乳製品消費量は、今後、同地域の乳製品生産量を上回って増加するため、取り扱いの容易な粉乳類を中心として輸入量の増加が見込まれている。中国は引き続き輸入国であり続け、バター、チーズ、SMPの輸入量が増加する一方、WMPについては、輸入量が減少すると見込まれている。
価格
乳製品は、世界の生乳生産量に占める貿易量の割合が小さいことや、主要輸出国が限られることなどから、短期的な価格変動が生じやすい。2025年後半は、主要輸出国における生乳生産量が好調であったことから、乳製品価格は下落した。26年には、バターとSMPの価格は上昇すると見込まれており、この上昇傾向は35年まで通じて続くと予想されている。
15年以降の推移について、乳脂肪の需要が増加したことによりバターの価格がSMPよりも大きく上昇し、両製品の価格差が広がる傾向にある。この点についてOECD/FAOは、無脂固形分は価格に敏感な輸入需要に影響されやすい一方、乳脂肪への需要は、特に高所得国において安定して推移していることから、今後10年間もその格差が維持され、チーズおよびWMPはバターおよびSMPの価格動向の影響を受けるとしている。
今後の乳製品需給に影響を与えるリスクとその不確実性
同レポートでは今後の見通しに影響する要因として、厳しい環境規制の導入や異常気象、生産段階における新技術の導入による生産量への影響、乳製品代替品や北米・欧州で人気が高まる高たんぱく製品市場の需要拡大スピードの変化、貿易環境の変化による貿易量への影響を挙げている。さらに家畜疾病の発生による影響も懸念している。
【調査情報部 令和8年7月28日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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