牛肉供給確保に向け輸入先の多角化を推進(インドネシア)
2026年8月9日の現地報道によると、インドネシア国内の食品価格が上昇傾向を示したと報道された。このうち、牛肉平均価格は1キログラム当たり14万2000ルピア(1434円、100ルピア=1.01円(注1))に達し、一部地域では18万ルピア(1818円)まで上昇しているという(注2)。
こうした価格高騰を受け、現地報道によると、インドネシア政府のブディ・サントソ商業大臣は同年8月12日、国内の牛肉需要に対し供給が不足していることが価格上昇の主因との認識を示した。その上で、政府は輸入業者に対し、国内価格の安定化に向けて牛肉輸入を速やかに拡大するよう要請したとしている。
同商業大臣は、「輸入許可証はすべて速やかに発行しているが、実際の輸入実現率は50%程度にとどまっている。価格条件に優れた海外の供給先やサプライヤーの確保を急ぐよう要請している」と述べている。一方で、原油価格の上昇を背景に物流費や輸送費が増加しており、輸入業者は輸送コストを抑えるため、地理的に近い国からの調達を優先せざるを得ない状況にあるとの認識も示した。
また政府は、比較的安価な水牛肉についても輸入を推進する方針を示した。
(注1)三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「月末・月中平均の為替相場」の2026年7月末TTS相場。
(注2)25年の8月の月次価格は12万4100ルピア(1253円)。
牛肉生産動向について
インドネシア中央統計局(BPS)によると、2024年の同国の1人当たり牛肉・水牛肉消費量は年間2.7キログラムにとどまる。鶏肉や魚類が主要な動物性たんぱく源であることから、牛肉消費はジャワ島の大都市圏など一部地域に限られている。しかし、中間所得層の拡大や所得水準の向上を背景に牛肉需要は着実に増加しており、市場の成長余地は大きいとみられている。
25年の牛肉生産量は49万9150トン(前年比6.2%増)、肉用牛飼養頭数は1355万頭(同2.1%増)、水牛飼養頭数は76万頭(同3.4%増)といずれも増加した(図1)。22年に発生した口蹄疫
(注3)の影響から23年は飼養頭数が減少した。その後は回復基調にあるものの、依然として口蹄疫発生前の水準には達していない。
(注3)22年に発生した口蹄疫の詳細については、海外情報「口蹄疫対策として300万回分のワクチン接種などを実施(インドネシア)」をご参照下さい。
牛肉輸入動向について
2026年1〜5月の牛肉輸入量は、4万5940トン(前年同期比36.0%減)と大幅に減少した(図2)。主要輸入先のうち、地理的に近い豪州が1万7887トン(同41.9%減)と大幅に減少したほか、インドおよびニュージーランドからの輸入量も減少した。一方で、米国や比較的価格競争力の高いブラジルからの輸入量は増加している。
現地アナリストによると、この大幅な減少について、政府が国内生産基盤の強化を目的に輸入業者への牛肉輸入量の制限を行ったことなどが要因とみられる。
こうした中、政府は牛肉の安定供給に向けて輸入先の多角化を進めている。26年7月にはアルゼンチンとの間で牛肉、内臓、乳製品の輸出に関する議定書に署名し、アルゼンチン産牛肉の輸入が可能となった。価格競争力の高い同国産牛肉の市場参入は、供給不足の緩和や価格安定化に加え、新たな需要の掘り起こしにも寄与するとみられている。
【田中 美宇 令和8年8月19日発】
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