米国は牛肉の赤身トリミングに対する低関税枠を一時拡大(米国)
米国政府は2026年8月26日、牛肉の赤身トリミング(注1)を対象に低関税輸入枠(TRQ)の一時的な拡大を発表した。今回の措置により、同年9月1日から11月30日までの3カ月間、低関税枠として追加で合計30万トンの輸入が可能となった。対象となるのは、米国と国・地域別のTRQまたは自由貿易協定(FTA)上の輸入枠を有しない「その他」として分類される国・地域となっている。
今回の措置は、同年2月から12月までアルゼンチン産牛肉の赤身トリミング向けに合計8万トンのTRQを拡大した措置に続くものである。
(注1)ブロック肉を切り出して整形する際に生じる端材で、主にひき肉などに利用される。
現在の米国内の牛肉需給と価格
米国では2022年に発生した大規模な干ばつや生産コスト上昇、そして、メキシコからの生体牛の一時的な輸入停止などの影響を受けて牛群の縮小が継続し、飼養頭数は記録的な低水準にある(図1)。米国においてはようやく牛群再構築の兆しが見られ始めているものの、継続的なと畜頭数および牛肉生産量の減少に伴い、肥育牛価格及び牛肉卸売価格は高水準で推移している(図2)。
こうした状況の中でも、米国内ではステーキ用に加え、ハンバーガーパティなどに使用されるひき肉製品として牛肉の需要は底堅い状況となっている。ひき肉の材料となっているのは主にトリミングであるが、米国産単独では脂肪含有率の高いものが多く、ひき肉製品の原料として利用することは難しい。このため、加工業者は赤身率の高いトリミングを別途調達し、混合して使用していることから、赤身を多く含む海外のトリミングに対する需要が高まっている。現在、米国内では赤身を90%含むトリミング(90CL)の価格が上昇しており、牛肉のカットアウトバリュー(注2)や赤身を50%含むトリミング(50CL)価格を上回る水準で推移している(図3)。
(注2)各部分肉の卸売価格を1頭分の枝肉に再構築した卸売指標価格。
米国国内の牛肉需要を満たすため、米国の牛肉輸入量は増加傾向にある。輸入相手国としては豪州およびブラジルの存在感が高まっており、特にひき肉原料向けを中心にブラジルやアルゼンチンなど南米地域からの冷凍品の輸入が拡大している(表1、図4)。
米国の牛肉低関税輸入枠(TRQ)拡大措置の概要
米国では、国内供給の縮小と需要の増加を背景に牛肉価格の上昇が続いている。第二次トランプ政権は、牛肉生産量の拡大に向けた施策や活動計画を打ち出しているものの、メキシコにおけるラセンウジバエの発生確認を受けて生体牛の輸入が停止されたこともあり、牛肉生産量の減少と価格高騰は依然として継続している。
今般発表されたTRQの一時的な拡大については、米国国内の牛ひき肉価格の抑制を目的とした措置であり、追加となる30万トンのTRQの対象は、牛肉の赤身トリミングに限定して適用される。対象となるHSコードは冷蔵および冷凍の4つのカテゴリー(注3)のうちひき肉原料として利用される製品のみが対象となっている(表2)。
(注3)HSコード「0201.30.5091」「0201.30.5097」「0202.30.5091」および「0202.30.5097」に該当する骨が含まれず、リブ、チャック、ロイン、ブリスケット、ランプ・もも又はフランク・プレートのいずれにも該当しない牛肉。
なお、追加枠は合計で30万トンであるが、一度に開放されるのではなく以下の3つの期間に分けて運用され、いずれも先着順で割り当てられる。
また、今回の追加枠は米国と二国間の協定や国別の枠を保有する国には影響せず、「その他」のカテゴリーに属する国・地域向けに配分される。
<追加枠の関税割当スケジュール>
第1段階:2026年9月1日〜9月30日 10万トン
第2段階:同年10月1日〜10月30日 10万トン
第3段階:同年10月31日〜11月30日 10万トン
なお、前述のとおり、米国は26年2月にアルゼンチン産の牛肉の赤身トリミングに対して8万トンのTRQを一時拡大しており、同年12月末まで引き続き適用される。同TRQは以下の4つの期間に分けて運用されている。
<(参考)アルゼンチン産8万トンの関税割当スケジュール>
第1段階:2026年2月13日〜3月31日 2万トン
第2段階:同年4月1日〜6月30日 2万トン
第3段階:同年7月1日〜9月30日 2万トン
第4段階:同年10月1日〜12月31日 2万トン
今後の米国政府の対応および業界の反応
連邦政府は今回の措置について、ひき肉原料となる牛肉をより安価に輸入し、その価格低下を米国民が購入する食品価格に反映させることで、消費者の食料購入に係る負担軽減を図ることが目的であるとしている。また、牛肉の需給状況や価格動向、輸入の増加状況を引き続き監視し、必要に応じて追加措置や制度変更を検討するとしている。
全米肉用牛生産者・牛肉協会(NCBA)をはじめとする生産者団体からは今回の措置に対し反発する声が上がっており、国内生産者の肉用牛生産拡大意欲を損なう懸念があるなどとしている。また、一部の連邦議員からは牛肉の輸入拡大を制限するような法律案が提出されるなど、本年11月3日の米国中間選挙に向けて牛肉価格や輸入拡大をめぐる議論がさらに活発化していくと見込まれている。
【調査情報部 令和8年10月2日発】
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:国際調査グループ)
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