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EU産ばれいしょでん粉に相殺関税適用(中国・EU)

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最終更新日:2011年5月24日

EUの発動に対抗か

 中国商務部は5月17日、同月19日からEU産ばれいしょでん粉に対し、新たに相殺関税を課すと公表した。これは、2006年のアンチ・ダンピング(AD)措置の上乗せであり、中国の強硬姿勢がうかがえる。
ばれいしょ
 EUは5月14日、中国政府による補助金によって廉価で輸入され域内の製紙業界が被害を受けているとして、中国産コート紙に対し、相殺関税とAD措置を5年間にわたって発動するとした。今回の中国の措置は、こうしたEUへの報復とみられている。

背景には、国内生産者の配慮も

 中国政府は2007年、輸入急増するEU産ばれいしょでん粉に対し、AD措置を本格発動し、EUからの輸入が激減した。しかし、2009年秋に収穫された中国産ばれいしょの不作もあり、2010年以降のEU産の輸入が再び急増した(図)。このような状況に「AD措置を超えるダンピングが、EUによって行われている」と、中国の関連業界は批判を強め、政府に圧力をかけていた。
 
 中国国内のばれいしょでん粉工場は零細な工場が大半で、その数は数千に上る。乾麺に代表される食品製造、繊維、製紙及び化学薬品製造の進展を背景に、ばれいしょでん粉の需要は極めて高い。政府としても産業育成に力を入れており、EU産ばれいしょでん粉の輸入動向には神経質となっている。今回の措置は、政府として、成長が見込めるばれいしょでん粉産業を保護する狙いがみえる。

EU産大きく落ち込むかは不透明

 2007年のAD措置の本格発動では、EU産ばれいしょでん粉の輸入は一時的に落ち込んだが、中国国内での収穫の落ち込みや旺盛な国内需要を背景に輸入は回復した。依然として、EU産の需要が強い状況で、今回の相殺関税発動が、EU産の輸入動向に影響するかは不透明であるものの、ばれいしょでん粉の主要品である麺の消費がピークを迎える9月以降の需給動向を注視する必要がある。
グラフ
【新川 俊一 平成23年5月24日発】
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