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海外の需給動向【牛乳・乳製品/中国】  畜産の情報 2018年11月号

飼料価格の上昇に伴い生乳価格も回復

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生乳価格は前年並みに回復

 2018年の生乳価格(主要10省・自治区)は、7月まで前年を下回って推移してきたが、8月以降は例年に近い水準まで回復している(図24)。現地専門家によると、飼料価格の上昇や環境規制による農場閉鎖によって供給が減り、需給がタイトになったことが原因と言われている。

 

図24 生乳価格の推移


 

トウモロコシと大豆油かすの小売価格が上昇

 飼料原料となるトウモロコシと大豆油かすの小売価格をみると、過去1年程度、上昇基調で推移している(図25)。中国の2017年の大豆消費量の約3割が米国産であるため、大豆油かす価格の上昇は米国産大豆への追加関税賦課が影響している可能性がある。
 

図25 トウモロコシと大豆油かすの小売価格


 

米国から中国へのチーズ、大豆、ソルガムの輸出量が減少

 中国政府は7月6日から牛乳乳製品やトウモロコシと大豆を含む飼料原料などの多くの米国産品に25%の追加関税を課している。

 追加関税の詳細は以下のURLを参照されたい。

  https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002237.html

 米国からの牛乳乳製品の輸入額については本誌2018年7月号を参照されたい。

  https://lin.alic.go.jp/alic/month/domefore/2018/sep/milk-china.htm

 2017年に米国から中国への輸出額が多かった脱脂粉乳、ホエイ、チーズについて、輸出量の推移をみると、ホエイは明らかに昨年とトレンドが異なる。ホエイは4月と5月に大量に輸出され、6月以降は輸出されていない。他の2品目はおおむね昨年と同様の水準で推移している(図26)。
 

図26 米国から中国への乳製品輸出量の推移


 米国から中国への大豆とソルガムの輸出量を見ると、追加関税が課される7月6日の1カ月以上前から、前年より明らかに低い水準となっている(図27、図28)。ソルガムについては、4月18日からアンチダンピング税(178.6%)が暫定的に賦課されている。なお、トウモロコシは追加関税の対象だが中国のトウモロコシ消費に占める米国産の割合が1%に満たないため、影響は限定的と考えられる。
 現地専門家によると、大豆の輸入減少に伴い生産量が減少する大豆油かすの代替品として、トウモロコシ胚芽かす、綿実かす、菜種かすの活用が考えられるとされる。


図27 米国から中国への大豆輸出量の推移  図28 米国から中国へのソルガム輸出量の推移

 

大豆はブラジル、ソルガムは豪州からの輸出が増加

 ブラジルから中国への大豆輸出量が増えており、8月は前年同月比43%増の694万トンだった(図29)。ただし、春から夏にかけて例年米国からの輸入量が極めて少ないため、米国産への追加関税がどの程度影響しているのかは不明である。

 

図29 ブラジル・米国から中国への大豆輸出量の推移


 豪州から中国へのソルガム輸出量を見ると、本年3月以降、前年を上回って推移し、7月は前年同月の約4.5倍の12万トンであった(図30)。
 

図30 豪州から中国へのソルガム輸出量の推移


 現地報道によると、中国では大豆輸入先の多角化に向けてさまざまな試みがなされている。例えば、黒竜江省や吉林省の政府は本年分の大豆の作付けを拡大するよう生産者に求める通知を出している。また、7月1日から、インドと韓国、バングラデシュ、ラオス、スリランカからの大豆輸入関税を3%から0%に引き下げた。このほか、9月3日に中国政府はエチオピアからの大豆輸入に関する検疫協議を終え、輸入が可能になったと発表している。

(調査情報部 三原 亙)

このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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