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海外の需給動向【牛肉/EU】  畜産の情報 2018年12月号

牛肉生産量は増加も、弱い需要により価格は低迷

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2018年1〜7月の生産量は前年同期を上回る

 欧州委員会によると、2018年1〜7月の牛肉生産量(EU28カ国)は、前年同期を2.3%上回る452万7450トンとなった(表2)。
 主要生産国の牛肉生産量をみると、前年同期比同となったドイツを除き、いずれの国も増加した。増加率が大きかったのは、ポーランド(同5.4%増)、イタリア(同4.0%増)、英国(同2.6%増)、フランス(同2.5%増)、スペイン(同2.2%増)となっている。
 牛肉生産量の増加要因のひとつに、今年の夏、複数のEU加盟国が干ばつに見舞われたことが挙げられる。干ばつにより牧草の生育状況が悪かったことから、牛を(とう)汰する生産者が見られた。なお、9月以降は、適度な降雨があり牧草の生育状況も改善していることから、淘汰のペースが弱まっているとみられる。しかしながら、冬場に給餌するサイレージなどの飼料の不足が予想されることから、冬季は再びと畜頭数が増加することが見込まれる。
 なお、欧州委員会は、10月に公表した農畜産物の短期的需給見通しの中で、干ばつの影響を踏まえ、2018年の牛肉生産量を前年比1.6%増、2019年を同0.1%減と見込んでいる。

 
表2 主要生産国別牛肉生産量の推移


牛肉輸出量は前年同期を下回る

 欧州委員会によると、2018年1〜8月の牛肉輸出量(製品重量ベース)は、前年同期比6.9%減となった(表3)。輸出量は、高水準であった2017年の水準は下回るものの、2016年同期と比較すると11.8%増となっている。
 輸出先別に見ると、トルコが前年同期の6倍近くとなった。トルコは、国内市場の需給均衡を図り、かつ価格変動を防ぐために、国内での需給が逼迫した際に牛肉を輸入しているといわれている。これまで、トルコにとって、ポーランドとボスニア・ヘルツェゴビナが主な牛肉輸入先国であったが、2018年はフランスやハンガリーからも輸入している。
 
表3 主要輸出先別牛肉輸出量の推移

 

弱い輸出需要などにより価格は前年を下回る

 欧州委員会によると、2018年9月の牛枝肉卸売価格(EU28カ国)は、雄牛が前年同月比2.8%安の100キログラム当たり369.81ユーロ(4万8075円:1ユーロ=130円)、去勢牛が同0.5%安の同400.24ユーロ(5万2031円)となった(図3)。
 生産量が前年を上回って推移する中、輸出需要の低迷などから、牛枝肉卸売価格は雄牛、去勢牛ともに3カ月連続で前年水準を下回って推移している。
 
図3 牛枝肉卸売価格の推移


英国スコットランド、2009年以来となるBSEが発生

 英国北部のスコットランド自治政府は10月18日、同地域内の農場において牛海綿状脳症(BSE)の症例が確認されたと発表した。今回のBSE症例は、定型のものである。今回の発生を受けて、国際獣疫事務局(OIE)は、2017年5月に認定された同地域のBSEステータス「無視できるリスク」を中断することを発表している。
 現地では、今回のOIE発表は、スコットランドのステータスが、イングランドとウェールズと同じく「管理されたリスク」に引き下げられ、英国では唯一、北アイルランドのみが「無視できるリスク」となることを意味するものと報じられている。
 なお、欧州食品安全機関(EFSA)の調査によると、散発的な発生の要因は、汚染された飼料の可能性が高いとのことである。昨年、スペインでもいくつかの症例が報告されたが、これは非定型であり、汚染された飼料を通してではなく、自然発生したものと考えられる。非定型の場合、同ステータスは下げられることはなく、同国の同ステータスは依然として最上位の「無視できるリスク」となっている。
 
(調査情報部 前田 絵梨)

 
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