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海外の需給動向【鶏肉/米国】  畜産の情報 2018年12月号

増産による価格安が輸出を後押し

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鶏肉生産量は堅調も、増加率は鈍化

 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2018年10月25日に公表した「Poultry Slaughter」によると、第3四半期のブロイラー処理羽数は、飼料穀物価格安などにより生産者の増産意欲が高まったことから、前年同期比2.3%増の23億1537万羽となった。平均処理時生体重も増加したことから、同期の生産量は、同3.6%増の495万7000トンとなった(図10)。
 第4四半期の生産量についてUSDAは、484万2000トンと同1.9%の増加を見込んでいるものの、鶏肉価格安により生産者の増産意欲が弱まりつつあることから前月時点の予測値から下方修正された。
 
図10 鶏肉生産量の推移


むね肉の冷凍在庫は高水準

 USDA/NASSが2018年10月22日に公表した「Cold Storage」によると、9月末時点の冷凍鶏肉在庫は、前年同月比17.3%増の43万5000トンとなり、在庫は14カ月連続で前年を上回って推移した(図11)。
 
図11 冷凍鶏肉在庫の推移

 部位別に見ると、国内市場に仕向けられることが多いむね肉は、同3.6%増の8万トンとなった。増加要因として、増産傾向にある牛肉および豚肉との競合により消費が鈍化したことが挙げられているほか、安値で販売するよりも冷凍在庫として保管することを選ぶ業者もいたとみられている。一方、輸出に仕向けられることが多いレッグクォータ(注)は、堅調な輸出需要を背景に同18.4%減の4万8000トンとなった。

(注) 半身のブロイラーをさらに半分にカットしたもののうち、もも側の部位。


鶏肉価格は安値で推移

 米国農務省経済調査局(USDA/ERS)によると、2018年9月の鶏肉価格は、前年同月比5.9%安の1ポンド当たり83.13セント(1キログラム当たり209円:1米ドル=114円)となった。部位別に見ると、むね肉は同28.8%安の同95.41セント(同240円)、レッグクォータは同27.6%安の30.30セント(同76円)となり、いずれも5カ月連続で前年を下回った(図12)。
 
図12 むね肉卸売価格の推移

メキシコ向けを中心に輸出は堅調

 USDA/ERSによると、2018年1〜8月の鶏肉輸出量は、鶏肉生産量の増加および価格の下落などにより、前年同期比3.0%増の209万5000トンとなった(表11)。このうち、最大の輸出先であるメキシコ向けは、同6.9%増の42万3000トンとなった。メキシコ国内の鶏肉生産量は増加しているものの、国内需要が堅調なことに加え、同国へ鶏肉を輸出しているブラジルでストライキの影響により輸送が滞ったことが増加の要因とされている。
 
表11 輸出先別鶏肉輸出量の推移
 
(調査情報部 渡辺 陽介)
このページに掲載されている情報の発信元
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