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海外の需給動向【牛肉/豪州】  畜産の情報 2019年1月号

穀物肥育牛飼養頭数、過去最高を記録

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成牛と畜頭数、干ばつにより引き続き増加

 豪州統計局(ABS)によると、2018年9月の成牛と畜頭数は、クイーンズランド州およびニューサウスウェールズ州で発生している干ばつにより雌牛を中心に淘汰が増加していることから、65万9900頭(前年同月比7.7%増)と、6カ月連続で前年同月を上回った(図5)。と畜頭数の内訳を見ると、雄牛は32万2600頭(同2.8%減)と5カ月連続で前年同月を下回った一方、雌牛は33万7200頭(同20.0%増)と10カ月連続で前年同月を上回った。これにより、と畜頭数全体に占める雌牛の割合は、51.1%と6カ月連続で50%を上回った。豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、と畜に占める雌牛の割合が47%を上回ると、牛飼養頭数が減少段階に入ったと判断できるとしている。
 1頭当たり枝肉重量は、比較的重量の軽い雌牛の増加に伴い285.2キログラム(同3.6%減)と減少し、と畜頭数の増加分を一定程度相殺したことで、同月の牛肉生産量(枝肉ベース)は、18万8232トン(同3.7%増)となった。

 
図5 成牛と畜頭数の推移


フィードロット飼養頭数、2期連続で過去最高を記録

 豪州フィードロット協会(ALFA)とMLAは、共同で四半期ごとに実施している全国フィードロット飼養頭数調査の結果(2018年7〜9月期)を公表した。これによると、2018年9月末のフィードロット飼養頭数は、112万6666頭(前年比9.9%増、前回比0.6%増)と、前回調査(2018年6月末)に続き2期連続で過去最高を記録した(図6)。

 
図6 フィードロット飼養頭数の推移

 
 2018年7〜9月の穀物肥育牛のと畜頭数は、フィードロット飼養頭数の増加に伴い74万8579頭(前年同期比2.4%増、前回比4.4%増)と増加し、と畜頭数全体に占める割合は35.4%となった。
 ALFAは、フィードロット飼養頭数増加の要因として、「干ばつにより牧草の生育が悪いことから、天候に左右されず安定的な増体が見込めるフィードロットでの肥育需要が増加している。また、ブランドを冠した牛肉の増加が、安定した品質で継続的に牛肉を供給できる穀物肥育牛への需要を増加させている」としている。


2018年牛と畜頭数、干ばつによりかなり増加見込み

 MLAは、「Industry projections 2018 October update」において、四半期に1度の牛肉生産量などの見通しを公表した。そのうち、2019年の見通しは次の通り。
 牛飼養頭数は、主要肉用牛生産地域で干ばつが深刻化しており、雌牛を中心に淘汰が増加していることから、前回予測(2018年7月)における増加の見通しから一転し、2735万頭(前年比0.2%減)と減少を見込んでいる(表1)。

 
表1 牛肉生産量などの見通し
 

 と畜頭数は、繁殖雌牛の減少によりもと牛供給が減少することから、前回予測からわずかに下方修正し、725万頭(同7.1%減)とかなり減少すると見込んでいる。
 これにより、牛肉生産量も、214万6000トン(同5.2%減)と減少を見込んでいる。
 牛肉輸出量は、生産量の減少により103万1000トン(同6.7%減)とかなりの減少を見込んでいる。
 MLAは、主要な牛肉輸出先国において豪州産牛肉は米国産牛肉と競合するが、韓国向けでは、米国産牛肉の方が関税面で有利なことに加え、豪州と韓国間で締結した自由貿易協定(FTA)に基づくセーフガードが2015年から4年連続で発動しており、豪州からの輸出が制限されていることを懸念している。一方、日本向けは、日本と豪州の経済連携協定(EPA)により関税面で有利なことに加え、2018年12月30日にTPP11協定が発効することにより、長期的には日豪EPA以上に関税が削減されることを好意的にみている。中国向けは、同国の牛肉需要の増加により年々輸入量を増加させていることに加え、同国内でアフリカ豚コレラが発生したことで、同国産豚肉から輸入豚肉や他の食肉に需要が移る可能性を挙げており、同国向け輸出量の増加を期待している。
 

(調査情報部 大塚 健太郎)
このページに掲載されている情報の発信元
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