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海外の需給動向【牛肉/豪州】  畜産の情報 2019年3月号

2018年牛肉輸出量・生体牛輸出頭数ともに増加

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雌牛と畜頭数、12カ月連続で前年同月を上回る

 豪州統計局(ABS)によると、2018年11月の成牛と畜頭数は、クイーンズランド(QLD)州およびニューサウスウェールズ(NSW)州で発生している干ばつにより雌牛を中心に淘汰が増加していることから、68万7100頭(前年同月比8.6%増)とかなり増加した(図4)。と畜頭数の内訳を見ると、雄牛は35万2000頭(同1.8%減)と前年同月を下回った一方、雌牛は33万5000頭(同22.2%増)と12カ月連続で前年同月を上回った。しかし、と畜頭数全体に占める雌牛の割合は、10月、11月に良好な降雨があったことが影響したのか、48.8%と8カ月ぶりに50%を下回った。

図4 と畜頭数の推移

 
 と畜頭数はかなり増加したものの、1頭当たり枝肉重量は、比較的重量の軽い雌牛の増加に伴い290.3キログラム(同4.8%減)と減少したことから、と畜頭数の増加分を一定程度相殺したため、同月の牛肉生産量(枝肉ベース)は、19万9487トン(同3.4%増)と、わずかな増加にとどまった。


2018年牛肉輸出量、前年比11%増

 豪州農業・水資源省(DAWR)によると、2018年の牛肉輸出量は、牛肉生産量の増加に伴い113万トン(前年比10.9%増)とかなり増加した(図5)。
 
図5 輸出先別牛肉輸出量の推移
 
 主要輸出先国別に見ると、最大の輸出先である日本向けは、好調な牛肉消費により輸入牛肉需要が増加していることから、32万トン(同8.0%増)とかなり増加し、6年ぶりに30万トンを上回った。
 2番目の輸出先である米国向けは23万トン(同1.2%減)と、同国における牛肉生産量の増加に伴い主要な輸出先では唯一減少した。
 韓国向けは、同国が米国からの輸入をかなり増加させているにも関わらず、輸入牛肉需要が堅調なことから、17万トン(同14.7%増)とかなり増加した。
 中国向けは、同国の旺盛な輸入牛肉需要により16万トン(同47.8%増)と大幅に増加しており、韓国に迫る勢いとなっている。


生体牛輸出量、再び100万頭を上回る

 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、2018年の生体牛(乳牛を含む)輸出頭数は、109万頭(前年比25.6%増)と大幅に増加し、2年ぶりに100万頭を上回った。2000年以降では4度目の100万頭突破となり、4番目に多い輸出頭数となった。これは、北部準州北部、QLD州北部、西オーストラリア州北部において良好な降雨があり、生体輸出向け牛飼養頭数が増加したことにより、生体牛輸出価格が下落したことで、主要輸出先国からの需要が増加したことが要因とみられる。
 輸出先国別に見ると、最大の輸出先国であるインドネシア向けは、生体牛輸出価格の低下に伴い同国からの需要が増加したことから、59万頭(同14.9%増)とかなり増加した(図6)。内訳をみると、大部分を占める肥育もと牛が大幅に増加(57万頭、同15.9%増)した一方、繁殖用雌牛は大幅に減少(1万頭、同21.0%減)した。インドネシア政府は、自国の繁殖基盤を強化するため、肥育もと牛5頭の輸入に対し、繁殖用雌牛1頭の輸入を輸入業者に義務付ける政策を実施しているが、2018年は肥育もと牛の輸入頭数に対して必要な繁殖用雌牛の輸入頭数を満たしていないことから、政府が今後どのような対応を行うか懸念されている。

 
図6 輸出先別生体牛輸出頭数の推移

 
 第2位のベトナム向けは、大部分がと畜場直行牛であり、同国における牛肉需要増に伴い、20万頭(同22.4%増)と大幅に増加した。
 中国向けは、乳用牛の輸出が中心となっているが、2018年は、肉用牛のと畜場直行牛が大幅に増加(3万頭、同87%増)したことから、11万頭(同43.6%増)と大幅に増加した。
 イスラエル向けは、6万頭(同87.2%増)と大幅に増加したが、現在、同国政府が家畜の生体輸入を禁止する法律の制定を進めており、今後の同国向け輸出は不透明な状況となっている。

 
(調査情報部 大塚 健太郎)