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海外の需給動向【牛乳乳製品/EU】  畜産の情報 2019年3月号

脱脂粉乳の公的在庫の売り渡しが進み、在庫はわずかに

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11月の生乳出荷量は前年同月を下回る

 欧州委員会によると、2018年11月の生乳出荷量(EU28カ国)は、前年同月を0.7%下回る1209万7330トンとなった(図16)。生乳出荷量は、2018年上半期については増加傾向にあった。しかしながら、2018年の夏に複数のEU加盟国が干ばつに見舞われた影響で増加傾向に歯止めがかかり、8月以降は前年同月と同水準で推移し、11月は前年同月を下回った。

 
図16 生乳出荷量の推移
 
 
 11月の出荷量を加盟国別にみると、アイルランド(前年同月比23.1%増)、ポーランド(同3.0%増)、ベルギー(同2.3%増)、デンマーク(同1.5%増)などは増加した。一方、オランダ(同6.8%減)、フランス(同3.7%減)、イタリア(同1.6%減)、ドイツ(同1.2%減)などでは減少した(表9)。
 なお、同年1〜11月の生乳出荷量の合計は、1億4464万8730トン(前年同期比0.9%増)となった。

 
表9 生乳出荷量の推移
 
 
乳価は9カ月連続で前年同月安で推移

 欧州委員会によると、12月の平均生乳取引価格(EU28カ国)は、前年同月比4.3%安の100キログラム当たり35.87ユーロ(1キログラム当たり45.55円:1ユーロ=127円)となった(図17)。乳価は、2018年4月以後、9カ月連続して前年同月安で推移している。

 
図17 生乳取引価格の推移
 

脱脂粉乳の公的在庫は、残りわずか

 欧州委員会は、1月24日、31回目となる脱脂粉乳公的在庫の売渡入札の結果、応札数量の6割となる1万8514トンが落札されたと公表した(表10)。なお、売渡最低価格は、前回から2.0%高の100キログラム当たり158.50ユーロ(2万130円)となった。

 
表10 脱脂粉乳公的在庫の売渡入札の実績
 
 
 2018年12月に行われた29回目の売渡入札の落札数量は6万トンを越え、2019年1月の30回目の売渡入札では8万トンを越えるなど、順調に売渡入札が進展した結果、当初38万トンあった在庫は残りわずか3651トンまで減少した。市場価格が回復傾向にある中、取り扱い業者にとって、同在庫が安価な供給物として捉えられており、需要が高まっているとみられる。
 EUの脱脂粉乳平均卸売価格は、順調に上昇傾向にある。68週ぶり(1年4カ月ぶり)に公的買入価格(100キログラム当たり169.80ユーロ(2万1565円))を上回った2018年12月24日の週以降は同170ユーロ台で推移し、2019年1月7日の週以降は同180ユーロ台で推移している(図18)。
 これまで長期間にわたりEU酪農関係者の最大の関心事項であり、懸念事項であった脱脂粉乳の公的在庫は、いよいよ解消される見通しとなった。

 
図18 脱脂粉乳のEU平均卸売価格
 
 
(調査情報部 前田 絵梨)