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調査・報告 畜産の情報 2019年4月号

はっ酵乳・乳飲料などの生産実態調査の結果

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畜産需給部 乳製品課

【要約】

 当機構では、乳製品の生産動向を的確に把握するため、毎年度、乳業メーカーなどを対象に「はっ酵乳・乳飲料などの生産実態調査」を実施している。
 平成30年度に実施した調査結果によると、これまで乳製品市場の成長をけん引してきたはっ酵乳だが、29年度のはっ酵乳市場は足踏み状態となり、従来までのような成長は見られなかった。業界が期待する機能性ヨーグルトの需要鈍化や、はっ酵乳そのものの需要の減少などが要因のようだ。また、乳飲料と加工乳については、飲料の多様化などにより需要の減少が続いている。

1 調査概要

(1)調査対象

 本調査は、「はっ酵乳(注1)」「乳飲料(注2)」「加工乳(注3)」の三つの品目ごとに生産量、成分、乳原材料使用割合などを調査したものである。
 調査対象は対象品目を生産している全国121企業(乳業者と非乳業者を対象)であり、有効回収は98企業、有効回収率は81.0%(98/121)であった(表1)。
  なお、本調査結果記載のデータは、いずれも各年度の回答をとりまとめたものであり、全国の統計を表すものではない。また、本調査結果のデータは、各年度の回収率や、規模の大きな企業の回答の有無に影響されることに留意が必要である。

注1:生乳および乳製品を原料として、これを乳酸菌または酵母ではっ酵させ、のり状または液状にしたもの。
  2:生乳、牛乳、特別牛乳(特別牛乳さく取処理業の許可を受けた施設でさく取した生乳を処理して製造したもの)およびこれらを原料として製造した乳製品を主要原料とした飲料で、乳および乳製品以外のもの(ビタミン、カルシウム、果汁、コーヒーなど)を加えたもの。なお、本調査では、風味にかかわらず、色のついているものを「色物乳飲料」、白いものを「白物乳飲料」に分類した。
   色物乳飲料:「乳飲料」のうち、乳成分に果汁、コーヒーなどを加えたもの。
   白物乳飲料:「乳飲料」のうち、乳成分にカルシウムやビタミン、レシチンなどを加えたもの。
  3:生乳、牛乳、特別牛乳、またはこれらを原料として製造した食品を加工したもの(成分調整牛乳、低脂肪牛乳、はっ酵乳および乳酸菌飲料を除く)。


表1 調査対象と有効回答数


 

(2)全国生産量のカバー率

  本調査の全国生産量に対するカバー率は、はっ酵乳が76.4%、乳飲料が70.5%、加工乳が32.5%となった(表2)。

 
表2 本調査で報告された数量

 

2 平成29年度調査結果の特徴

(1)はっ酵乳は、成長が鈍化し足踏み状態

 平成29年度におけるはっ酵乳の全国生産量は、前年度を0.2%下回る結果となった。本調査で回答のあった企業のはっ酵乳の生産量も、前年度よりも2.2%減少した。減少要因としては、機能性ヨーグルトの成長鈍化、需要の減少などの回答があった。
 

(2)色物乳飲料は減少、白物乳飲料は増加

 回答のあった企業の乳飲料のうち、平成29年度の色物乳飲料の生産量については、前年度から減少しており、品目別に見ると「コーヒー」が減少した。色物乳飲料の減少要因としては、受注量の減少、製造品目の集約、缶飲料の製造の一部停止などを挙げる回答があった。
 一方、同年度の白物乳飲料の生産量は、前年度から微増しているとのことであった。増加要因としては、生乳不足による牛乳の代替品として需要の増加、新製品の販売開始などの回答があった。
 

(3)「加工乳」は減少傾向

 加工乳の生産量は、平成23年度以降、原料となる乳製品の価格が上昇傾向で推移していることや、大手乳業メーカーを中心に、機能性での価値訴求を行いやすい白物乳飲料の生産にシフトしたことから、減少傾向で推移し、平成29年度も前年度を下回った。減少の要因としては、需要の減少、乳飲料(低脂肪)との価格差などの回答があった。
 

3 生産動向

(1)はっ酵乳

 平成29年度のはっ酵乳の全国生産量は、前年度より0.2%減少し131万6047キロリットルとなった(図1)。
 本調査で回答のあった企業におけるはっ酵乳の生産量は、前年度に比べて2.2%減少し、100万4973キロリットル、カバー率は76.4%となった。はっ酵乳の生産割合を商品タイプ別(注4)で見ると、「ハード」は23.1%(0.7ポイント増)となった一方で、「ソフト」は12.9%(0.7ポイント減)となった(図2)。「プレーン」(25.0%)と「ドリンク」(39.0%)は、前年度とほぼ同じ割合となった。
 
注4 はっ酵乳の商品タイプを次の通り分類した。
(1)プレーン:糖類や果実などの乳成分以外のものを一切含まないもの
(2)ハード:糖類やペクチンなどの安定剤を添加したもの
(3)ソフト:果肉や果物を含むもの
(4)ドリンク:液状で飲料タイプのもの
(5)フローズンなど:冷凍されたもの、その他のもの


 
図1 関連統計によるはっ酵乳の全国生産量の推移


図2 はっ酵乳の生産割合の推移

 
 乳業区分別に見ると、構成比は乳業系が約8割、非乳業系が約2割となっており、前年度の構成比と比較すると、非乳業系の割合がわずかに大きくなっている(図3)。

図3 はっ酵乳の生産割合の推移
 

(2)乳飲料

 平成29年度の乳飲料の全国生産量は、前年度より5%減少し、116万4310キロリットルとなった(図4)。
  本調査で回答のあった企業における乳飲料の生産量は、前年度よりも0.5%減少し、82万574キロリットル、カバー率は70.5%となった。
 
図4 関連統計による乳飲料の全国生産量の推移


ア 色物乳飲料
 回答のあった企業の平成29年度の色物乳飲料生産割合を商品タイプ別に見ると、「コーヒー」は85.6%(前年度比3.1ポイント減)、「フルーツ」は5.7%(同0.9ポイント増)、「その他」は8.7%(同2.2ポイント増)となっており、「コーヒー」の割合が減少した(図5)。コーヒーの減少要因としては、缶飲料の製造の一部停止などの回答があった。
 
図5 色物乳飲料の生産割合の推移「商品タイプ別」 

 
 乳業類型別に見ると、大手3社が64.2%(同4.4ポイント増)、農協プラント系が12.5%(同1.7ポイント減)、中小系が23.3%(同2.7ポイント減)となり、大手3社が約6割を占めた(図6)。

 
図6 色物乳飲料の生産割合の推移「乳業類型別」
 

イ  白物乳飲料
 回答のあった企業の平成29年度の白物乳飲料生産割合を乳業類型別に見ると、構成比は大手3社が55.6%(6.2ポイント減)、農協プラント系が12.6%(1.5ポイント増)、中小系が31.8%(4.7ポイント増)となっており、これまでの構成比とほぼ同じとなった(図7)。
 

図7 白物乳飲料の生産割合の推移「乳業類型別」
 

(3)加工乳

 平成29年度における加工乳の全国生産量は、9万2987キロリットルと7%の減少となった(図8)。

 
図8 関連統計による加工乳の全国生産量の推移


 本調査で回答のあった企業における加工乳の生産量は、前年度より0.9%減少し3万237キロリットル、カバー率は32.5%となった。減少の要因としては、需要の減少、乳飲料(低脂肪)との価格差などの回答があった。加工乳の生産割合を商品タイプ(注5)別に見ると、「低脂肪」が33.1%(同7.0ポイント減)、「普通脂肪」が22.3%(同6.1ポイント減)、「濃厚」が44.6%(同13.1ポイント増)となった(図9)。
 
注5 加工乳の商品タイプを乳脂肪率により次の通り分類した。
   (1)低脂肪:1.5%以下
   (2)普通脂肪:1.5%〜3.8%未満
   (3)濃厚:3.8%以上

 
図9 加工乳の生産割合の推移「商品タイプ別」


 乳業類型別に見ると、生産割合は中小系が約7割を占め年々拡大傾向にある(図10)。その要因として、大手3社および農協プラント系の生産量が減少傾向にあるため、中小系のシェアが拡大している背景がある。
 
図10 加工乳の生産割合の推移「乳業類型別」

4 乳原材料使用割合の動向

 各品目における乳原材料使用割合を調査した。ここでの使用割合とは、以下の算定式によって求められたものであって、乳製品以外の水分やフルーツなどを含め、原材料ベースの総重量で単純に算出したものである。

乳原材料使用割合(%)=乳原材料使用量(トン)÷原材料総重量(トン)×100
 

(1)はっ酵乳

 はっ酵乳の乳原材料使用割合は、生乳(注6)の割合が17.8%で前年度よりも0.8ポイント減少した。脱脂濃縮乳の割合は12.5%(同0.2ポイント増)、脱脂粉乳の割合は3.1%(同0.1ポイント増)で、ともに前年度とほぼ同じ割合となった(図11)。
 乳業類型別に見ると、大手3社は生乳と脱脂濃縮乳(15.4%、17.9%)を、農協プラント系と中小系は生乳(41.0%、18.5%)を使用する割合が高い(表3)。
 
注6  「殺菌乳」「部分脱脂乳」などを含む現物ベース
 
図11 はっ酵乳の主な乳原材料使用割合の推移
 


表3 乳業類型別のはっ酵乳の主な乳原材料使用割合
 

(2)乳飲料

ア  色物乳飲料
 色物乳飲料の乳原材料使用割合を見ると、生乳の割合が8.4%と前年度よりも5.2ポイント減少している。
 また、脱脂濃縮乳、脱脂粉乳、バター、ホエイ類の割合は、前年度と同レベルとなった(図12)。

 
図12 色物乳飲料の主な乳原材料使用割合の推移
 
 
 
 乳業類型別に見ると、大手3社は脱脂濃縮乳(4.9%)を、農協プラント系と中小系は生乳(40.5%、10.3%)を使用する割合が高い(表4)。
 
表4 乳業類型別の色物乳飲料の主な乳原材料使用割合(平成29年度)

 
イ  白物乳飲料
 白物乳飲料の乳原材料使用割合は、生乳が14.9%と前年度よりも0.3ポイント減少、脱脂濃縮乳も8.3%と前年度より0.6ポイント減少した。一方、脱脂粉乳は2.3%と前年度よりも0.2ポイント増加した(図13)。
 乳業類型別に見ると、大手3社は脱脂濃縮乳(13.8%)を、農協プラント系と中小系は生乳(20.6%、18.2%)を使用する割合が高い(表5)。
 
図13 白物乳飲料の主な乳原材料使用割合の推移


表5 乳業類型別の白物乳飲料の主な乳原材料使用割合(平成29年度)
 

(3)加工乳

 加工乳の乳原材料使用割合は、生乳の割合が15.6%と前年度よりも0.9ポイント減少し、年々減少傾向にある。一方、脱脂濃縮乳の割合は15.1%と前年度よりも2.4ポイント増加した。脱脂粉乳、バターはほぼ横ばいであった。クリームは前年度よりも0.8ポイント増加した(図14)。
 
図14 加工乳の主な乳原材料使用割合の推移
 

 乳業類型別に見ると大手3社は脱脂濃縮乳(24.0%)を、農協プラント系は生乳(16.4%)を、中小系は生乳と脱脂濃縮乳(17.0%、16.2%)を使用する割合が高い(表6)。


表6 乳業類型別の加工乳の主な乳原材料使用割合(平成29年度)

5 過去10年間の生産動向

(1)生産量

 はっ酵乳の生産量は、消費者の健康志向の高まりなどを背景に、増産傾向で推移してきた。一方、乳飲料は原料価格の高騰などを背景に平成26年度以降、減少傾向で推移しており、加工乳も乳飲料と同様に原料価格の上昇や需要の減退により平成23年度以降、減少傾向で推移している(図15)。

図15 はっ酵乳・乳飲料・加工乳の全国生産量の推移
 
 

(2)乳原材料の使用割合の変化

 はっ酵乳、乳飲料、加工乳における乳原材料の使用割合を見ると、国内の脱脂粉乳価格の上昇や無脂乳固形分需要が脱脂粉乳から脱脂濃縮乳へシフトしたことなどから、脱脂濃縮乳が増加していることが分かる。平成29年度の原料使用割合を見ると、はっ酵乳、乳飲料、加工乳全てにおいて前年度より生乳が減少した。脱脂濃縮乳については、はっ酵乳、加工乳で増加している(表7)。

 
表7 原材料の使用割合の変化(はっ酵乳・乳飲料・加工乳)
 
 

(3)「脱脂濃縮乳」の使用割合増加の要因

 「脱脂濃縮乳」の使用割合が増加した要因を調査対象先にヒアリングしたところ、各社によって見解が分かれているが、脱脂粉乳と比べ生産効率や風味の向上を図る点で優れているとの共通認識があり、生産・消費が拡大したとされる。
 また、近年では平成24年ごろ、コンビニエンスストアなどでは、スイーツ需要の増加に伴い、クリーム需要が増加したことでクリームの副産物である脱脂濃縮乳の生産が拡大した。さらに、はっ酵乳、アイスクリームや乳飲料向けに脱脂濃縮乳が使用されるようになったことなどが使用割合増加の背景として考えられる。

6 はっ酵乳および乳飲料の生産見通し

 乳業大手3社に、(1)平成29年度の生産動向および市場動向(2)今後の見通しについてのヒアリングを行った。
 

(1)平成29年度の生産動向および市場動向

 平成29年度のはっ酵乳の生産動向、市場動向に関する各社の見解は、「はっ酵乳市場は足踏み状態にあり、前年度のような成長は見られなかった」というものである。中でも機能性ヨーグルトは、以前のような勢いが見られなくなっているとしている。
 背景として、平成27年にスタートした機能性表示食品制度は定着化し、消費者に対して「インフルエンザ予防」「ダイエット」「整腸作用」などといった機能性の訴求もインパクトが薄れてきたとの指摘があった。また、各社でさまざまな機能性ヨーグルトを発売しており、限られた市場の中でシェアを奪い合う競合環境も懸念材料となっている。
 このような状況を打破するため、フルーツ味など様々なフレーバーの機能性ヨーグルトが発売されている。内容量の少ない機能性ヨーグルトは嗜好性が軽視されがちだが、さまざまなフレーバーを発売することで消費者の興味・関心を喚起しようとする動きもある。
 一方、乳業メーカーによると、「比較的好調だったのは、プレーンタイプのヨーグルト」とのことであった。はっ酵乳市場全体が足踏み状態の中、根強い支持を獲得しているプレーンタイプは堅調で、平成29年度はその存在が際立ったようである。ただし、近年の乳原材料費や物流コストの上昇の影響を受けて、末端価格の上昇を抑えるため、プレーンタイプのヨーグルトは、容量を450グラムから400グラムへと減らすなどの取り組みもなされている。
 乳飲料に関しては、乳業メーカーの商品ラインナップや営業体制によって状況は異なるものの、全体的には厳しい状況が続いている。特に、コンビニエンスストアや量販店を主要な販売経路とする場合、同業他社の乳飲料の他に、PB(プライベートブランド)、カウンターコーヒー、ペットボトルコーヒー、スムージーなどのカテゴリーを横断した競合品が多く存在しており、売場の獲得競争が激しくなっている。嗜好性が強い乳飲料は、定番品以外の様々なフレーバーの派生品を開発・販売しているが、ヒット商品を生み出すのに各社苦心しているようであった。
 

(2)今後の見通し

 はっ酵乳は全体的に足踏み状態にあるが、各社が注力する機能性ヨーグルトは前年度並みもしくはやや前年度を上回る形で平成30年度を終えるものと見られている。
 乳飲料は厳しい状況が続き、30年度は前年度比を下回るものと見込まれている。ただし、筋力など身体づくりのために「白物乳飲料が好調である」という乳業メーカーもある。乳飲料は嗜好性を追求するだけでなく、ターゲットをきちんと見据え、時代に合致した機能性を付加することでヒットにつながる可能性が残されているとの声もある。
 なお、機能性表示食品が各社から発売され、消費者にとって新鮮味が薄れつつあるとの見方もある一方で、機能性表示食品の認証を取得していない製品は、「店頭でその特徴を明確にアピールできない」などのジレンマがあるとの声もあり、今後の機能性食品の認証をめぐる動きが注目される。
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