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海外の畜産物の需給動向【牛肉/カナダ】  畜産の情報 2019年5月号

牛群は一層縮小も、と畜頭数は増加

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飼養頭数はさらに減少

 カナダ統計局(Statistics Canada)が3月1日に公表した牛の飼養動向によると、2019年1月1日時点の総飼養頭数は前年比1.1%減の1145万頭となった(表2)。これは統計が始まって以来最も多かった2005年同時点の頭数を23%下回る水準である。カナダでは度重なる干ばつの発生や、カナダドル安に伴う米国への生体牛流出などといった要因から幾度となく牛群の拡大が阻まれており、飼養頭数は2006年以降ほぼ一貫して減少傾向で推移している。
 

 今回公表された飼養頭数を区分別にみると、最も大きく減少した去勢牛は前年比3.4%減の117万2000頭であった。繁殖牛も総じて減少し、肉用繁殖雌牛は1992年以来で最も少ない366万1000頭(前年比1.0%減)であった。また、今後の牛群再構築の要となる肉用繁殖後継牛は55万4000頭(同1.4%減)であったことから、飼養頭数は引き続き減少基調で推移する可能性がある。


と畜頭数はかなり増加

 飼養頭数が減少しているにもかかわらず、と畜頭数は2016年以来3年連続で増加している。カナダ肉用牛生産者協会(CCA)の畜産物市況部門であるCanFaxによると、2018年のと畜頭数(連邦検査ベース)は前年を6.3%上回る301万1107頭となった(図5)。区分別にみると、去勢牛は前年比6.6%増の159万8958頭、未経産牛は同2.7%増の88万9593頭、経産牛は同13.0%増の50万5159頭、種雄牛は同7.8%減の1万7397頭であった。
 

 この背景には、米国産生体牛の輸入増がある。Statistics Canadaによると、2018年の米国産生体牛(純粋種・乳用種を除く)の輸入頭数は18万230頭(前年比68.9%増)となり、2年連続で前年を大幅に上回った。
 米国の牛群拡大が終盤に差し掛かっている中、カナダの肥育業者が前年までのように米国産肉用種肥育もと牛を比較的安価な価格で調達することは難しくなってくると考えられるが、米国農務省海外農業局(USDA/FAS)によれば、カナダ西部には米国から乳用種(ホルスタイン種)の去勢牛を積極的に導入し、肥育するフィードロットもあるという。
 
米国向け肥育もと牛輸出増の可能性

 堅調な肥育牛価格を背景に、カナダでは同国産肥育もと牛を国内フィードロットで肥育し、同国内のパッカーに出荷する動きが強まっていたことから、カナダ農務・農産食品省(AAFC)によると、2018年の米国向けと場直行牛輸出頭数は前年比17.1%減の42万7522頭となった。また、同年の肥育もと牛の輸出頭数は19万4146頭と前年を大幅に上回ったものの、過去5年平均を大幅に下回る水準であった。しかし、今後の米加間の生体牛貿易動向には、両国の飼料穀物需給状況が影響を及ぼす可能性がある。
アルバータ州をはじめとする主要肉用牛生産州のフィードロットでは生産費を低く抑えることを目的として、飼料穀物には伝統的に、同じくカナダ西部で生産される大麦などの麦類が多く用いられる。しかし、大麦は輸出需要増に伴って在庫の取り崩しが進んでおり、価格は高値で推移している(図6)。
 


 こうしたことから、2018年はカナダ産大麦と比べ相対的に安価な米国産トウモロコシの輸入量が急増し、Statistics Canadaによれば米国産No.2等級イエローデントコーンの輸入量は前年比138.2%増の134万4789トンであった(図7)。同年の輸入状況を州別にみると西部が多く、中でもアルバータ州は45万6159トンを輸入したが、これは前年の4倍以上、2016年と比べると約14倍であった。
 

 こうした状況について、CanFaxは、米国産トウモロコシの輸入量が引き続き堅調に推移すると予測する一方、肥育もと牛は伝統的に飼料価格の安い方へと流れる傾向があるとして、米国向け肥育もと牛輸出が増加する可能性を指摘している。
 
牛肉輸出量は5年連続で増加

 牛肉輸出量(製品重量ベース)は堅調な牛肉生産に伴って2014年以降5年連続で増加し、2018年は35万1173トン(前年比8.0%増)となった。輸出先別にみると、最大輸出先である米国は前年比7.3%増の27万1025トンとなり、日本向けは同30.8%増の2万6577トンと大幅に増加した。2019年に入っても輸出量は前年を上回って推移しており、1月は前年同月比24.7%増の2万8642トンとなった(表3)
 
 
(調査情報部 野田 圭介)