畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 2018年穀物肥育牛と畜頭数・輸出量、過去最高

海外の畜産物の需給動向【牛肉/豪州】  畜産の情報 2019年5月号

2018年穀物肥育牛と畜頭数・輸出量、過去最高

印刷ページ
雌牛と畜頭数、干ばつにより14カ月連続で前年同月を上回る

 豪州統計局(ABS)によると、2019年1月の成牛と畜頭数は、主要肉用牛生産地域であるクイーンズランド(QLD)州およびニューサウスウェールズ(NSW)州で干ばつが継続しており、雌牛の淘汰が増加していることから、58万3600頭(前年同月比8.8%増)と10カ月連続で前年同月を上回った(図8)。と畜頭数の内訳を見ると、雄牛は28万7500頭(同5.1%減)と前年同月を下回った一方、雌牛は29万6200頭(同26.7%増)と大幅に増加しており、14カ月連続で前年同月を上回った。
 
 
 同月の牛肉生産量は、雄牛に比べて重量の軽い雌牛の増加による1頭当たり枝肉重量の低下により、17万トン(同5.1%増)と、と畜頭数の増加率ほどは増加していないものの、10カ月連続で前年同月を上回った。
2018年第4四半期の穀物肥育牛と畜頭数、大幅に増加

 豪州フィードロット協会(ALFA)および豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は3月7日、四半期ごとに共同で実施している全国フィードロット飼養頭数調査の結果(2018年10〜12月期)を公表した。これによると、2018年12月末のフィードロット飼養頭数は、110万689頭(前年比14.1%増、前回比1.4%減)と、前回調査(2018年9月)からはわずかに減少したものの、前年比でかなり増加した。これにより、2018年は、初めて1年を通じてフィードロット飼養頭数が100万頭を上回った。これは、QLD州およびNSW州を中心に干ばつが発生し、牧草の生育が悪いことから、天候に左右されず安定的に肥育できるフィードロットへの仕向けが増加したことが主な要因となっている。
 2018年10〜12月の穀物肥育牛と畜頭数は、85万頭(前年同期比19.8%増)と大幅に増加した。この結果、2018年の穀物肥育牛と畜頭数は、299万頭(前年比3.3%増)とわずかに増加し、1991年の集計開始以降、過去最高を記録した(図9)。これにより、と畜頭数全体に占める穀物肥育牛の割合は38%と、集計開始以降、2番目に高い水準となったものの、2017年の40%からは減少した。なお、この割合の減少は、穀物肥育牛と畜頭数の増加以上に、干ばつの影響をより受ける牧草肥育牛が雌牛の淘汰の増加によりと畜頭数を増加させたことが一因であると考えられる。
 

 また、MLAによると、2018年の穀物肥育牛肉輸出量は、31万トン(同12.0%増)とかなり増加し、こちらも集計開始以降、過去最高を記録した(図10)。輸出先国別に見ると、主要な輸出先である日本向け(15万トン、同7.9%増)および韓国向け(6万トン、同7.5%増)のいずれもかなり増加しているものの、中国向けは、5万トン(同86.6%増)と大幅に増加しており、韓国向けに迫る勢いとなっている。
 
 
肉牛取引価格、4年3カ月ぶりに400豪セントを下回る

 MLAによると、肉牛取引価格の指標となる東部地区若齢牛指標(EYCI)価格は、2016年8月に、過去最高の1キログラム当たり725豪セント(587円:1豪ドル=81円)を記録して以降、下落傾向で推移している。2018年は、干ばつにより牧草の生育が悪いことから、牧草肥育業者を中心に導入意欲が減少しており、4月には、同500豪セント(405円)を下回る水準まで低下した。10月には、QLD州やNSW州の主要肉用牛生産地域で良好な降雨があったことから上昇に転じたものの、2019年1月以降は再度、降雨不足により下落傾向で推移し、3月11日には、2014年12月以来、4年3カ月ぶりに同400豪セント(324円)を下回った(図11)。しかし、3月中旬以降は良好な降雨があり、牧草肥育業者の導入意欲が向上した一方、前述の通り、14カ月連続で雌牛の淘汰が進んでいることにより家畜市場への肥育もと牛の出荷頭数が減少していることから、3月19日に上昇に転じ、3月末時点では同494豪セント(400円)と、3月中最も低かった時点(同385豪セント)から同109豪セント(88円)高と大幅に上昇した。
 
 
(調査情報部 大塚 健太郎)