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話題 畜産の情報 2019年6月号

地域の根幹を成す家族経営を守るために

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オホーツクはまなす農業協同組合連合会 代表理事組合長 永峰 勝利

1 はじめに

 オホーツクはまなす農業協同組合は、オホーツク海中部沿岸に位置しており、旧紋別市農協、旧上渚滑農協、旧滝上町農協、旧西興部村農協の4農協が合併して、平成13年3月1日に誕生しました(図1)。
 

 私は23年4月に組合長に就任し、9年目になります。地域の基幹産業である酪農を中心とした持続可能な農業と豊かで暮らしやすい地域社会を実現するため、日々仕事をしております。私の経営理念は、「先人たちが苦労に苦労を重ねて築き上げた農地を次世代に引き継ぐ」を基本としており、具体的には、組合員に「この地に住んで良かった」と思ってもらえるよう、組合員の所得増大、農業生産の拡大や地域の活性化のために地域社会の構築を目指しています。
 わが国では高齢化による離農などの影響により、酪農家戸数は年々減少してきています。当JA管内も減少傾向に歯止めがかかっていません。30年度の酪農家戸数は105戸と14年度に比べると4割強減少しておりますが、生乳生産量は8万3000トンから9万4000トンへ増加し、1戸当たり乳量は438トンから895トンと大幅に増加しており、農家の大規模化が進んでいます(表1、図2)。
 

 

 私が組合長を務めてきた8年間を振り返るとともに、今後の家族経営の在り方などについて紹介していきます。
 

2 オホーツク管内生乳生産量ナンバー1を達成できた理由

 私は組合長である前に一人の酪農家であり、現在も組合長としての仕事の合間を縫って牛舎の見回りを行っています。すなわち、酪農経営のプロの視点でものを見ることができると自負しています。手前味噌で恐縮ですが、全道共進会では18年まで24年連続で1等賞、第8、10、11回大会では4頭が優等賞を獲得し、また、これまでにエクセレント牛(注)を86頭輩出してきました。さらに、独立行政法人家畜改良センターが公表している全国雌牛評価成績上位100頭において、複数回ランクインした実績があります。これらの牛づくりの経験を踏まえ、当JA管内において、①生乳安定生産基盤の確立②乳牛改良の推進③飼養管理技術の向上といった営農指導を実施しております(表2)。これらを組合員に徹底したことにより、高泌乳牛群の形成に成功し、平成26年度に当JAがオホーツク管内生乳生産量ナンバー1を達成することができました。それ以降5年間、ナンバー1の地位を維持しています。
 

注: ホルスタイン種の体型審査において、体型得点で90点以上を獲得し、かつ以下の条件をクリアしている乳牛。
   ①能力検定を実施していること
   ②能力検定の305日乳量が9000キロ以上であること
   ③正常分娩で3産以上していること

  
 また、営農指導の他にも各種補助事業を実施しました。特に、性判別精液活用およびワクチン接種支援については、事業終了後、国から支援していただいたことで、当JAの支援により農家の生産基盤強化の礎を作り、さらに国からの支援により農家経営の体質を強化することができました。これらは、優良後継牛の確保や事故率の低減につながっています。(図3)。
 

3 持続的な家族経営と地域づくり

 大規模農家、法人が増え、従来の家族経営が減少しています。全国的にもその傾向には歯止めがかかっておらず、当JAもその流れと同様です。地域の根幹を成す家族経営には、持続的な経営が求められます。それは、経営者が①経営目標と計画を策定し、生産要素(労働力、資本、土地)を調達する②生産要素を用いて畜産物を生産し、販売する③その結果について分析・検討を行い、④収益性向上のために次の目標と計画を策定する「PDCAサイクル」(計画・実行・確認・改善)を継続していくことです。そして、常に経営目標を見直し、PDCAサイクルが右肩上がりで推移することが望ましいと考えており、JAとして酪農家に対し営農指導を行うとともに、各種の相談に応じ、今後も目標乳量の確保に向け全力で取り組んでまいります。
 地域を守るということは、すなわちその地域で生活を営んでいる家族を守ることにほかなりません。農家戸数の減少、担い手不足、労働力不足といった要因から大規模化に舵を切る農業者もいます。それは時代の流れですし、否定できません。しかし、本来家族経営というものが地域を支えてきたのです。持続的な家族経営なくして地域の再生はありません。
 また、地域において一次産業が潤えば、その関連産業も必ず恩恵にあずかることができます。一次産業が利益を出すことができれば雇用の創出につながり、結果として地域社会の維持・発展につながるものと信じています。
 

 

4 最後に〜地域と家族経営の今後の課題に向けて〜

 当JAでは、3年後には酪農家戸数が102戸と減少するものの、生乳生産量を9万8000トン、1戸当たり乳量を1000トンと見込んでおり、この目標に向けて日々活動してまいります。
 また、地域農業を改めて再生・構築するためには何が必要なのか、それが大きな課題といえます。 立派な経営をしていたとしても、その地域に病院がない、学校がない、コンビニエンスストアがない、 娯楽がないということでは次の世代にバトンタッチできないと考えるのが普通ではないでしょうか。農 村は一度衰退すると再構築することが非常に難しいので、地域を守るとともに活性化させるための取り組みを検討、展開していきます。
 家族経営には効率的かつ省力的な経営が求められ、必然的に作業の外部化を行う必要があることから分業型経営とも呼ばれます。当JAには育成牧場があり、約4400頭預託されています。農家は生後3日から預託することが可能で、分娩2カ月前に戻されます。今後も家族経営支援に向けた、労働補完体制の充実とアウトソーシングによる労働効率の向上を図っていきます。
 昨今の国際化の進展に対応する競争力の強化がわれわれには求められています。安価な農産物が輸入されても、「食料だけは自分たちの力で確保しようではないか」といった気概が必要なのではないでしょうか。全て輸入品に頼ったり、置き換わったりすれば国の一部を形成する地域社会は崩壊することになるでしょう。今後、さらに厳しい状況に置かれたとしても、自分たちは必ず生き残ってやるという意気込みで日々活動しております。「チャレンジしないのは最大の失敗」というのが私の哲学です。これからも持ち前のリーダーシップを発揮して、地域のために貢献してまいります。
 
 
〔永峰代表理事組合長のインタビューを基に調査情報部企画情報グループが構成〕

(プロフィール)
昭和33年     北海道紋別市生まれ
    52年      酪農学園・機農高校卒業
    53年     芽室町鈴木重雄牧場で1年間実習後、就農
平成10年     旧上渚滑農協理事
   17年     オホーツクはまなす理事
    23年4月 同代表理事組合長
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-4398  Fax:03-3584-1246