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調査・報告/専門調査 畜産の情報 2019年6月号

オレイン酸に着目したブランド和牛生産の実態と課題〜石川県の取り組みを事例として〜

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中村学園大学 流通科学部 准教授 中川 隆

要約

 本稿では、オレイン酸に着目した地域ブランド和牛振興の実態と課題を能登牛生産の取り組みを事例に検討した。近年の能登牛の出荷頭数の増加は能登牛プレミアムの認定頭数の増加にもつながり、首都圏などでの認知度向上はブランド振興の追い風となっている。一方で、牛の飼養管理面においては、肉脂肪中のオレイン酸含有率を高めるための技術的な難しさに直面していることも改めて確認された。

1 はじめに

 わが国において、肉用牛の飼養頭数が相対的に少ない幾つかの県では、大産地優位の格付等級の土俵のみで勝負することを回避し、従来の格付基準とは一線を画した基準、すなわち、肉脂肪中のオレイン酸の含有率の高さにより、和牛肉の差別化を推進している。大分県や鳥取県、長野県、石川県は、おのおの「豊味の証(うまいのあかし)」や「鳥取和牛オレイン55」「信州プレミアム牛肉」「能登牛プレミアム」といったオレイン酸に着目した和牛ブランド化の先駆的取り組みを行ってきたことで知られる(表1)。
 

 筆者はかつて鳥取和牛オレイン55や信州プレミアム牛肉などの調査研究を実施したことがある。そこでは、高級和牛としてのブランドイメージが県内消費者には必ずしも定着していない、ブランド化に係る生産者努力が手取り増加といった形で必ずしも生産者に反映されていない、今後の県内での販売展開には地域の観光資源の一層の活用が重要といった課題を明らかにしてきた(中川〔1〕、中川〔2〕など)。
 近年、北陸新幹線開業などで地域の機運も高まってきている石川県では、前述のような課題がある中、いかなる取り組みを行っているのか。本稿では、オレイン酸に着目した地域ブランド和牛振興の実態と課題を能登牛生産の取り組みを中心に検討することとする。
 

2 能登牛の生産・流通の実態

(1)石川県における肉用牛飼養の動向

 図1に石川県における肉用牛の飼養戸数および飼養頭数の推移を示す。飼養戸数は80〜90年代を通じて大幅に減少し、2000年代には100戸を超え横ばいで推移していたが、2013年度以降、100戸を下回っている。飼養頭数は近年3000頭弱で横ばい傾向にあり、1戸当たり平均飼養頭数は30頭前後で推移している。

 
 

(2)ブランド化の背景と定義

 石川県は元来、和牛繁殖と稲作との複合経営による子牛産地であり、かねてより同県産和牛は県外実需者から「能登牛」の名称で親しまれてきた。こうした経緯の中、能登牛銘柄推進協議会(以下「協議会」という)が1995年11月に設立された。事務局は石川県農林水産部生産流通課が担当している。協議会は全国農業協同組合連合会石川県本部(以下「JA全農いしかわ」という)をはじめ県内の生産から販売・流通に至る12の関係団体で構成され、能登牛認定基準に基づき、当該ブランド牛の認定を行っている。
 能登牛の認定基準は次の通りである。
(1)黒毛和種(血統が明確であるもの)
(2)石川県内が最終飼養地であり、かつ飼養期間が最長であること
(3)処理・解体場所は、石川県金沢食肉流通センターおよび県外の中央卸 売市場など(注1)
(4)肉質等級はA3以上またはB3以上
 能登牛は2007年に地域団体商標を取得している。また、肉脂肪中に含まれるオレイン酸の測定が開始された第9回全国和牛能力共進会(2009年に鳥取県で開催)で、特別賞「脂肪の質賞」を受賞している。おいしさに関係する指標の一つとして注目されるオレイン酸などを売りにしたブランド展開が図られている。

注1:共進会などで県外に牛を持ち出した際にも認定できるための規定であり、実質的にはほぼ全量が 金沢食肉流通センターで処理されている。
 

(3)「能登牛プレミアム」の創設と認定頭数の推移

 「能登牛プレミアム認定制度」は2011年12月に創設された。これは協議会がA5等級と格付けされた能登牛の中でも、霜降り度合やおいしさの指標であるオレイン酸含有率が高く、特に肉質に優れているものを「能登牛プレミアム」として認定するものである。プレミアムという別規格を設けることで能登牛ブランドをより強く訴求することを目的としている。認定基準は、次の通りである。
(1)A5等級のうちBMS 10以上
(2)A5等級のうちBMS 8または9の場合はオレイン酸含有率55%以上

  2017年度の認定頭数は283頭(能登牛全体の32.4%)であり、創設以来、その数は増えており、「能登牛プレミアム」の指定買いの動きも出てきている。
 図2は、能登牛および能登牛プレミアムの認定頭数の推移を示したものである。2015年度には能登牛の価格が高騰し、一時的に客離れが起きたことがあった。同年、能登牛の認定基準を4等級以上から3等級以上に緩和することで、2016年度には大幅に認定頭数が増加している。2017年度の実績は874頭であり、2018年度は1000頭を超えている。現在、当該ブランド牛の流通は県内に限られるが、北陸新幹線開業に合わせ、同県食材がメディアで紹介されることで認知度は高まりつつある。
 
 

(4)生産と流通の実態

ア 能登牛1000頭生産体制整備事業
 石川県では、2010年度より「能登牛1000頭生産体制整備事業」を実施している(表2)。これは2009年度当時の頭数規模を倍増させることを目的としたものであり、主に次の四つの対策からなる。
 


(1)増頭対策として、肥育牛1頭当たり5万4000円、繁殖雌牛1頭当たり10万円、畜舎整備支援として1 頭当たり9万円の補助を継続的に行っている。また、高齢化による家族経営の離脱への懸念もあり、2012年度以降、企業の誘致を行っており、後述の赤城畜産有限会社(群馬県)の関連会社(生産部門)である株式会社能登牧場やJA全農いしかわによる内浦放牧場跡地での能登牛生産がこれに該当する。また、単なる増頭だけでなく、地域における農家の規模拡大や法人化も展望している。
(2)担い手対策として、新規就農者の確保と技術習得に対する支援を行っている。最近では、新規就農も和牛繁殖部門などで数名出てきている。
(3)生産技術対策として、県畜産試験場ではオレイン酸含有率向上のための飼養管理技術の確立などを図っている。
(4)流通販売対策として、今後見込まれる能登牛の増産により首都圏での販売促進にも積極的に取り組んでいる。

イ 生産動向
 同県では近年、肉用牛の肥育頭数は増えてきている。子牛の導入先はほぼ半数が県内となっており、そのうち半数程度は受精卵由来である。高齢化などにより繁殖農家が減少する中、乳用牛への受精卵移植による和子牛生産が繁殖基盤強化につながっている。能登町に立地する能登畜産センターでは、受精卵を年間900卵生産し、県内の酪農家に供給している。
 能登牛の出荷頭数を維持・増加させるためには、県内での子牛生産は必須であり、同県では今後も受 精卵の供給を増加させたいと考えている。また、県内のCBS(キャトルブリーディングステーション)の整備も重要な検討課題となっている。
 さらに、周年拘束性の強い畜産において、省力化や生産管理の効率化の面からもICT(情報通信技術)の普及は必要であると考えている。

ウ 流通の実態
 図3は、能登牛の流通チャネルを示したものである。県内生産者から出荷された能登牛は、認定要件となっている金沢食肉流通センターでと畜・解体される。その後、全農いしかわ肉牛枝肉販売会で一元的に集荷され、県内の食肉卸業者などにより競り落とされ、能登牛認定店(2018年8月現在70店舗)(注2)やその他店舗に流通する。
 

 
 能登牛認定店の認定基準は、販売店は「能登牛を年間3頭以上取り扱っていること(部分肉の場合は1 頭300キログラムとして換算)」であり、飲食店は「常時、メインメニューで能登牛を提供しているこ と。能登牛をおおむね年間100キログラム以上購入していること」である。2018年4月より、加賀温泉や和倉温泉などの宿泊施設にも認定店制度を設けている。
 能登牛の認定店に対して、協議会は認定料として2万円、運営費・更新料として年間6000円(月500円)の手数料を徴収している。更新の際には能登牛の幟(のぼり)やリーフレットなどを配布している。ちなみに、「能登牛プレミアム」だけに特筆したリーフレットの配布については今後の課題でもある。能登牛認定店は毎年増加し、ほぼ県内全域に立地している(写真1)。協議会としては、今後も能登牛認定店を増やしたい意向である。
 
 
注2:能登牛認定店とは、2011年12月から能登牛の生産振興や消費の拡大、ブランド力の向上を図るため、協議会が開始した能登牛認定店制度により認定された販売店および飲食店である。
 

3 能登牛の小売の実態〜有限会社福田家精肉店の取り組み〜

 有限会社福田家精肉店は、能登半島北東部の先端に位置する市に立地する能登牛認定店である。創業開始から約80年経つ食肉卸および小売業の老舗である。従業員は、経営主と娘の雅子氏(写真2)、パートの3名である。食肉の小売部門の売上比率はおよそ牛肉3割、豚肉3割、鶏肉2割、加工品2割であり、牛肉の売上は卸を含めた全体で6割を占める。
 

 同店では1頭買いを行い、年間70〜80頭の和牛を取り扱っており、販売される和牛肉の9割以上が能登牛である(写真3)。能登牛プレミアムはおよそ月間1頭の販売であり、これにはふるさと納税による需要も含まれる。能登牛および能登牛プレミアムの顧客は、信頼関係に基づく地域の固定客が主である。
 

4 能登牛生産の実態(1)〜中瀬牧場の取り組み〜

(1)経営概要

 中瀬牧場は、自然豊かなほう鳳珠郡能登町に立地している。労働力は、経営主の中瀬晴夫氏(69歳)、子息の英巳氏(41歳)の2名の家族経営で、晴夫氏は能登和牛改良組合組合長を務めるなど地域の能登牛生産をけん引している(写真4)。繁殖雌牛32頭(うち育成牛1頭)、子牛15頭、肥育牛9頭、JA全農いしかわの預託牛40頭を飼養している。水田面積は2.7ヘクタール、草地面積は7ヘクタールである。従来、庭先の牛舎で2〜3頭飼養する程度だったが、当該地域が和牛改良組合に認定された1985年以降、多頭化を進めている。同年、新たに牛舎を建設し、繁殖雌牛15頭程度に規模拡大した。1999年、英巳氏の就農と同時に二つ目の牛舎を建設し、現在の飼養規模となっている。牛舎は、繁殖用3棟、肥育用2棟、出産・離乳用1棟の計6棟である。経営主は繁殖部門を担当し、人工授精師免許を持つ英巳氏が人工授精や肥育部門を担当している。牧草の収穫機にはコンパクトベーラー(一番草、二番草)とロールベーラー(三番草)を利用している。なお、当該牧場は、JA全農いしかわの肥育実証展示事業に参画しており、肥育牛舎は椎茸用施設を改造している。
 

(2)牛飼養管理の実態

 粗飼料はほぼ自給(育成用だけ購入)し、乾草・サイレージ調製した牧草に加えて、春夏期には野草を活用するなど、飼料コストの低減に取り組んでいる。
 また、繁殖雌牛用飼料として、当該牧場の水田と近隣農家から収集した稲わらも利用している。牛舎の裏山をパドックとして利用することで、健康に牛を飼養し、受胎率の向上に努めている(写真5、6 )。10産以上の牛を数頭飼養しており、9割は1回の種付けで受胎する。なお繁殖管理におけるICT機器の利用はなく、全て自分の目で確認し管理している。子牛の事故は1年1頭程度であり、一時期流行ったマイコプラズマ肺炎の予防には、十分留意している。
 

 

 能登牛プレミアムへの認定率の向上は、長年積み重ねてきた系統による要因が大きく、給与飼料の工夫だけでは困難であると考えている。

(3)子牛および肥育牛出荷の実態

 子牛は全て北陸三県和牛子牛市場(石川県金沢市に立地、年間5回開催)に出荷している。2017年度の出荷頭数は18頭であり、購買先は石川県13頭、福井県5頭となっている。
 同年度の肥育牛の出荷頭数は28頭、平均出荷月齢29カ月、平均枝肉重量は415キログラムであった。このうち、12頭が能登牛に、16頭が能登牛プレミアムに認定されている。平均枝重はそれぞれ393キログラム、432キログラムであり、平均単価(加重平均)はそれぞれ1キログラム当たり2573円、2805円である。1頭当たりの平均価格では両者には約20万円の価格差があり、能登牛プレミアム生産は、肥育経営にとって大きな経済的インセンティブになっていることが分かった。

5 能登牛生産の実態(2)〜株式会社能登牧場の取り組み〜

(1)経営概要

 株式会社能登牧場は鳳珠郡能登町に立地している。2013年2月6日に設立され、翌年10月21日に開場している。資本金は200万円である。肥育牛463頭を飼養しており、草地面積は約8ヘクタールである。労働力は6名(役員2名、従業員4名)である(写真7)。主要設備は事務所、牛舎2棟、堆肥舎2棟、ホイルローダー2台、マニュアスプレッダー1台である。
 

 飼養頭数は11頭から開始し、2017年は375頭、2018年現在では463頭となっており、牛舎はほぼフル稼働している。1牛房当たり面積は32平方メートル(4頭飼養)である。草地管理は、近隣の酪農家が行っており、刈り取った草は酪農家が自らの乳用牛に給与している。

(2)肥育の実態〜能登牛プレミアムの認定状況〜

 もと牛の導入先は北陸三県(富山県、石川県、福井県)がおおむね2割、群馬県が7割、残りは福島県、栃木県である。導入月齢は9カ月、導入時体重は270〜300キログラムであり、出荷月齢は28カ月である。また、事故率は1%、上物率は97%である。肥育牛は全て全農いしかわ肉牛枝肉販売会に出荷している。
 肥育牛の出荷頭数は、20頭(2015年)から、190頭(2016年)、165頭(2017年)と推移している。表3に当該牧場における能登牛および能登牛プレミアムの認定状況を示す。2017年度の能登牛プレミアムの認定頭数は79頭であり、全体の48%である。
 

 営農開始翌年の2015年度の出荷頭数は4頭で成績が落ち込んでいた。その後、飼料給与法の改善に取り組み、能登牛の本格出荷を開始し、2017年度には上記成績に回復している。ただ、飼料給与によるオレイン酸含有率向上の効果には不明な面が多く、血統による要素が強いと考えている。

(3)ブランド化の成果と課題

 当該経営では、増頭がブランド化の第一歩と捉え、規模拡大を進めてきた。結果として、出荷頭数の制約を脱しつつあるのが現状であり、認知度向上が課題である。
 また、能登牛プレミアムのブランド基準の厳格化も今後の展開として考えている。「BMS 10以上」であればオレイン酸含有率が低くても、「プレミアム」となる。これをどう捉えるか。当該牛のブランド価値を向上させる上で、今後の議論になるものと考えている。
 今後は他県への進出を図る上でも、出荷牛の肉質のさらなる平準化を推進することが課題である。具体的には、ロース芯やバラなどのバランスのとれた牛を生産することであり、これは前述したブランド価値向上にもつながる課題である。


 

6 能登牛生産の実態(3)〜農事組合法人柳田肉用牛生産組合の取り組み〜

(1)経営の概要

 鳳珠郡能登町に立地する農事組合法人柳田肉用牛生産組合(以下「生産組合」という)は、1989年に操業を開始し、資本金は980万円である。約10年前、経営主の駒寄正俊氏(65歳)は父から経営を引き継いだ。乳用牛飼養が主であったが、代替わりを契機に乳用種肥育、そして現在の和牛一貫生産に切り替えている。一貫生産への切り替えは、繁殖雌牛の飼養管理に係る労力やコストは必要であるものの、子牛の安定確保が可能になるためである。このような一貫生産には資金力が必要であり、資金繰りに苦労した経緯がある。かつては種雄牛(高洲平茂)を飼養し自然交配も行っていた。
 労働力は、駒寄正俊氏と出戸崇之氏(31歳)の2名である(写真8)。駒寄氏は生産組合のほか、精肉小売店(能登町に立地)を経営しており、自ら生産した能登牛の販売も行っている。出戸氏は就農して10年目の若手で、当該経営の中心的な担い手である。繁忙期にはシルバー人材センターから畜産経験者を雇用している。飼養頭数は繁殖雌牛35頭、肥育牛(子牛を含む)82頭である(写真9、10)。草地面積は6ヘクタール、牛舎は3棟(繁殖、分娩、肥育)である。現在、一時的に繁殖雌牛の数が減少しているが、45頭への増頭を目標にしている。ふん尿処理については、生産組合の牧草地に散布したり、近隣耕種農家から収集したもみ殻で堆肥を作っている。

 


 




 当該経営は、石川県肉牛枝肉共励会で優秀賞を受賞するなど、同県の肉用牛生産をけん引している。

(2)肥育牛出荷の実態

 肥育牛の出荷月齢は26カ月であり、出荷時体重(枝肉)は、去勢500キログラム、雌490キログラムである。事故はほとんどない。年間出荷頭数は40頭であり(表4)、上物率は87%である(2017年)。能登牛プレミアムの認定割合は近年やや低下しており、現在15%(2017年)である。同組合としては、まず5等級を指向しており、オレイン酸含有率の向上は副次的なものと考えている。

 
 

(3)今後の課題

 現在、繁殖管理における発情発見システムなどのICT機器の必要性は特に感じていないが、今後の繁殖雌牛増頭の際に導入を検討するという。
 また、奥能登管内では若手生産者が集う場を設けており、今後は、当該経営を中心とした繁殖飼養管理技術などに係る情報共有を行う地域ネットワークづくりも課題となると考えている。

7 おわりに

 本稿では、オレイン酸に着目した地域ブランド和牛振興の実態と課題を能登牛生産の取り組みを中心に検討してきた。元来、能登牛は、他の銘柄牛と比べ相対的に少ない出荷頭数とほとんど県内にしか流通しない希少性から「幻のブランド牛」などと呼ばれてきた。そのような中で、販売店や飲食店に加えて加賀・和倉温泉旅館にも認定店制度を設けるなど、同県が有する観光資源を積極的に活用しつつ、当該ブランド和牛の一層の販売拡大を図っている取り組みが明らかとなった。
 近年の能登牛の認定頭数の増加は、能登牛プレミアムの認定頭数増加にもつながり、首都圏などでの認知度向上はブランド振興の追い風になっている。また、能登牛プレミアムの認定出荷は、肥育経営にとって、認定率を高めるインセンティブになっていた。一方で、牛飼養においては肉脂肪中のオレイン酸含有率を高めるための技術的な難しさもあり、肥育経営には、これを進めたくても進められないジレンマがあることが分かった。調査した経営体はいずれも血統による要素を重視していた。
 石川県では現在、能登牛生産の維持・増頭に大変な努力を注いでいる。全国的な繁殖農家の離脱による和子牛の供給不足が顕在化する中、県内における和子牛増頭は極めて重要な課題であり、とりわけ、CBSの早急な整備や繁殖管理におけるICTの円滑な普及が望まれる。北陸が誇る地域ブランド和牛・能登牛の今後の一層の躍進を期待したい。

【謝辞】
 本稿を草するに際して、調査にご協力頂いた有限会社福田家精肉店、中瀬牧場、株式会社能登牧場、農事組合法人柳田肉用牛生産組合、JA全農いしかわ畜産部、公益社団法人石川県畜産協会、石川県奥能登農林総合事務所および同県農林水産部の皆さまに対して、記して感謝の意を申し上げたい。

【参考文献】
〔1〕 中川隆「和牛肉の新たな評価基準に着目したブランド化〜鳥取和牛オレイン55〜」『国産牛肉産地 ブランド化に関する事例調査報告W』公益財団法人日本食肉消費総合センター、2012年、pp.18- 24。
〔2〕 中川隆「肥育経営・飲食店におけるオレイン酸認定の経営経済評価」『牛肉の脂質を中心とした 「美味しさ」表示方法に関する提案書 第1編 牛肉の脂質を中心とした美味しさ』社団法人全国肉用 牛振興基金協会、2014年、pp.45-58。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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