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海外の需給動向【牛肉/豪州】 畜産の情報 2019年7月号

2019年牛飼養頭数、2000年以降最少の見込み

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雌牛と畜割合、2000年以降最高
 豪州統計局(ABS)によると、2019年3月の成牛と畜頭数は、主要肉用牛生産地域であるクイーンズランド(QLD)州、ニューサウスウェールズ(NSW)州など東部を中心に干ばつが継続しており、雌牛の淘汰が増加していることから、73万4500頭(前年同月比18.5%増)と大幅に増加した(図2)。と畜頭数の内訳を見ると、雄牛は30万8000頭(同3.4%減)と前年同月を下回った一方、雌牛は42万6500頭(同41.8%増)と大幅に増加しており、16カ月連続で前年同月を上回った。これにより、と畜頭数全体に占める雌牛の割合は58.1%と、2000年以降最高を記録した。
 同月の牛肉生産量は、1頭当たり枝肉重量が、雄牛に比べて重量の軽い雌牛の増加に伴い280.7キログラム(同6.8%減)とかなりの程度減少したことから、20万6150トン(同10.5%増)と、と畜頭数の増加率ほどは増加していないものの、12カ月連続で前年同月を上回った。
 

フィ―ドロット飼養頭数、過去最高を記録
 豪州フィードロット協会(ALFA)および豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)は、5月15日、四半期ごとに共同で実施している全国フィードロット飼養頭数調査の結果(2019年1〜3月期)を公表した。これによると、2019年3月末のフィードロット飼養頭数は、114万5563頭(前年比11.7%増、前回(2018年12月)比3.1%増)と、前年比および前回比のいずれも増加し、過去最高を記録した。これは、東部(QLD州、NSW州など)の広範囲で干ばつが発生し、牧草の生育が悪いことから、天候に左右されず安定的に肥育できるフィードロットへの仕向けが増加したことが主な要因となっている。
 2019年1〜3月の穀物肥育牛と畜頭数は、75万頭(前年同期比11.7%増)とかなり増加した。一方、同期間における穀物肥育牛がと畜頭数全体に占める割合は、穀物肥育牛と畜頭数の増加以上に、干ばつの影響をより受ける牧草肥育牛のと畜頭数が増加したことか
ら、37%と過去3年間では比較的低い割合となった(図3)。
 また、MLAによると、2019年1〜3月の穀物肥育牛肉輸出量は、7万685トン(同2.6%増)とわずかな増加にとどまった。輸出先国別に見ると、日本向け(3万2958トン、同8.4%減)および韓国向け(1万2284トン、同11.0%減)はいずれもかなり減少したものの、中国向けは、1万4347トン(同76.8%増)と大幅に増加し、韓国向けを上回って第2位の輸出先国となった。中国向けは、2015年に豪州が中国と自由貿易協定(FTA)を締結して以降、増加傾向で推移している(冷凍牛肉(その他の骨付き肉または骨付きでない肉)の関税率は、当初の12%から2024年に向けて段階的に削減し、2019年1月からは6%)。
 
 


2019年牛飼養頭数、干ばつによると畜増によりかなり減少
 MLAは4月30日、「Industry projections2019 April update」において、四半期に一度の牛肉生産量などの見通しを公表した(表3)。2019年の見通しは次の通り。
 

 と畜頭数は、干ばつが継続していることから、前回予測(2019年1月)から10万頭上方修正したものの、繁殖用雌牛の減少に伴う肥育もと牛減に加え、天候が回復すれば牛群再構築のために雌牛の保留が増えることから、770万頭(前年比2.2%減)とわずかな減少を見込んでいる。1頭当たり枝肉重量は、と畜に占める雌牛割合の増加により、289.5キログラム(同0.4%減)と減少を見込んでいる。この結果、牛肉生産量は、222万9000トン(同2.6%減)とわずかな減少を見込んでいる。
 牛飼養頭数は、干ばつにより雌牛を中心とした淘とう汰た が継続していること、具体的な被害は明らかになっていないものの、2019年2月にQLD州北西部で局地的に発生した洪水により、50万〜70万頭程度の牛が死亡したと見込まれていることから、前回予測から100万頭下方修正し、2520万頭(同7.7%減)と、2000年以降最も少ない頭数まで減少すると見込んでいる。
 牛肉輸出量は、生産量の減少により108万8000トン(同3.4%減)と減少を見込んでいる。2019年第1四半期の牛肉輸出量の増加は、中国向けおよび米国向けがけん引しており、加工向け牛肉を中心に両国からの強い需要は継続するものの、生産量の減少により、輸出量全体では減少を見込んでいる。
 
(調査情報部 大塚 健太郎)