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国内の畜産物の需給動向【鶏卵】 畜産の情報 2019年7月号

令和元年5月の鶏卵卸売価格、下げ基調へ

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 令和元年5月の鶏卵卸売価格(東京、M玉)は、1キログラム当たり173円(前月比1円安)となった。同価格は、平成31年1月に、16年1月に次ぐ低水準の初値となり、その後の生産調整により4月までは順調に上昇したものの、5月は上げ止まる結果となった(図10)。
 日ごとの相場を見ると、5月上旬は上昇基調で推移していたものの、15日を境に価格は下落に転じた。その後、鶏卵の標準取引価格が5月20日に1キログラム当たり162円となり、安定基準価格163円を下回ったことから、一般社団法人日本養鶏協会が実施する成鶏更新・空舎延長事業(注1)が同日付けで発動されることとなった。この事業が発動されるのは31年2月以来同年二度目である。
 今後について、供給面では、例年生産・入荷量が多くなる5月を過ぎたことや、引き続き生産調整が行われていることなどから、ある程度数量は落ち着くと思われる。需要面では、気温の上昇や梅雨に入ることに伴う購入意欲の減退を懸念する声も聞かれる。

注1: 鶏卵生産者経営安定対策事業のうちの一つであり、需給改善を図ることを目的とし、当該日の標準取引価格が安定基準価格を下回った30日前から安定基準価格を上回る日の前日までに、更新のために成鶏を出荷し、その後60日以上の空舎期間を設けた生産者に対して、奨励金を交付する。

 

 

食用殻付き鶏卵、輸出拡大へ期待
 平成30年度の鶏卵輸出量は6828トン(前年比49.4%増)と前年を大幅に上回った。これは、輸出のほとんどを占める食用の殻付き鶏卵(注2)の輸出量が6524トン(同51.5%増)と前年同月を大幅に上回ったためである。食用殻付き鶏卵の輸出に関しては、30年10月に米国向け輸出が、11月には韓国向け輸出が解禁され、輸出拡大が期待されていた。しかし、解禁後も販路の決定や、食文化の違い、輸送費などの制約から、米国および韓国への輸出実績はほとんどなく、大部分が香港、シンガポール、台湾向けに輸出されていた。
 こうした状況の中、平成31年3月から、財務省が公表する貿易統計の食用殻付き鶏卵輸出実績にグアム(米国)が追加された。グアムは、日本から比較的近く、日本人移住者や観光客が多い地域であるため、輸出解禁以前からハワイなどとともに輸出先として期待されていた。輸出された鶏卵は現地の日本食材専門店や、ホテルで提供されている。3月のグアムへの輸出量は216キログラム、4月は432キログラムとなっており、小規模でありながらも倍増しているため、今後も鶏卵輸出拡大が期待されている。
 一方で、米国では、生卵や半熟卵の食文化は浸透しておらず、鶏卵を販売する際には、黄身が固くなるまで加熱するなどの取扱を表示することが義務付けられている。このため、消費者は鮮度に重きを置かない傾向にあるなど、鮮度に強みを持つ国産鶏卵の米国への輸出拡大の大きな制約要因となっている(財務省「貿易統計」)。

注2: 統計品目番号は0407.21-000、0407.29-000、0407.90-000
 
(畜産振興部 岩井 椿)