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調査・報告(専門調査) 畜産の情報 2019年9月号

肉用牛へのエコフィードの利用に向けた取り組みと連携〜和歌山県のエコマネジメント株式会社が製造するエコフィードを事例として〜

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鹿児島大学 農学部 教授 豊 智行

【要約】

 和歌山県において、地域で発生する食品残さからエコフィードを製造するエコマネジメント株式会社が取り扱っている食品残さ、食品残さの集荷や処理、さらに販売といった全体的なシステムを把握する。また、そのシステムに加え、エコフィードを利用する和牛繁殖経営の現状と課題を明らかにする。そして、エコフィードの実用化によりもたらされた効果やその要因について考察する。

1 はじめに

 農林水産省は「エコフィード(ecofeed)とは、“環境にやさしい”(ecological)や“節約する”(economical)等を意味する“エコ”(eco)と“飼料”を意味する“フィード”(feed)を併せた造語であり、食品製造副産物や売れ残った食品、調理残さ、農場残さを利用して製造された家畜用飼料」としている。エコフィードの推進は、国産飼料の利用拡大や社会に排出される再生可能な生物由来資源の費用をかけた処分から再生利用への転換が図られるため、社会にとって望ましいと考えられる。
 このようなエコフィードを推進する事例と して、和歌山県におけるエコマネジメント株式会社(以下「エコマネジメント」という)が製造する肉用牛向けエコフィードの供給および需要に関わる主体の取り組みと連携を明 らかにするため、関係者に対し現地調査を実施した。本稿では、調査により得られた情報を基に、このエコフィードに関する取り組みの経過を整理しつつ、その内容を分析した上 で、実用化に寄与した要因およびその効果について考察する。

2 エコフィードを利用する産業連関システム

 図はエコマネジメントにおける取り扱い食品残さの循環である。食品製造業者からの食品残さを自社で破砕・発酵といった処理を経て、製造したエコフィードを実証牧場での試験のために供給するとともに、県内の繁殖経営に販売していく全体像が示されている。

 

3 エコマネジメントの現状と課題

 エコマネジメントは産業廃棄物処分業に許可、飼料製造業と飼料販売業に認可されている。自社牧場(エコフィード実証牧場)も有しており、肉用牛生産にも積極的に取り組んでいる(写真1)。自社牧場における令和元年7月時点での飼養頭数は、繁殖雌牛27頭、繁殖用育成・子牛10頭、肥育牛4頭、肥育用子牛2頭、預託された頭数が5業者からの肥育牛44頭である。
 

 平成29年度の実績として、エコマネジメ ントが取り扱った食品残さ3700トンを原料としてエコフィードが584トン製造され、このうち558トンが販売、自社牧場に約26トン供給された。
 エコマネジメントが取り扱う食品残さの受け入れ実績は表1に示される通りである。数量はお茶類、おから、梅類が多く、供給元は梅類とみかんが多くなっている。後者については、和歌山県は近年、梅とみかんの収穫量が全国1位であり、これらを原料とした食品製造業者も多く立地していることが影響しているであろう。写真2は食品製造業者から供給される梅の種とみかんのしぼりかすである。

 



 エコマネジメントのエコフィード販売実績は表2の通りである。数量ベースでは、乳酸発酵サイレージ(おから)、繁殖和牛用配合 飼料が多くを占め、金額ベースでは繁殖和牛用配合飼料が最も大きくなっている。商品のうち、魚粉配合飼料は採卵鶏経営に、それ以外は肉用牛経営に販売されている。製造された飼料のうち繁殖和牛用配合飼料3トン、高級肉試験用エコフィード1トン、赤身試験用エコフィード1.5トン、繁殖和牛用エコTMR飼料20トンは自社牧場での利用に仕向けられている(写真3)。
 

 
 

 エコマネジメントが直面する問題として、近隣では繁殖和牛の飼養頭数が少ないこと、製造が少量であるために一単位当たりの製造費用が高くつくこと、サイレージを製造するための手間がかかること、現状の配合飼料より低価格でなければ売れないことが挙げられている。繁殖和牛向けの飼料だけでは利益が確保できないため、肥育牛向け飼料・TMRの開発にも取り組んでいる。
 エコマネジメントの販売先であり、同社のエコフィードの開発にも協力してきた和歌山県の野嶋牧場を調査した。同牧場は、経営主の野嶋良臣氏と父の2名により、平成29年末時点では繁殖雌牛41頭、育成牛(繁殖仕 向け〜種付)1頭、子牛(出生〜出荷・仕向け)26頭を飼養するとともに、10アールで飼料生産を行っている(写真4)。
 


 29年の繁殖雌牛1頭に対する1日当たり給与量は、対照区がエコマネジメントからの乳酸菌発酵サイレージ(おから)が0.6キログラム(1キログラム当たり7円)、繁殖和牛用配合飼料が3.2キログラム(同12円)、エコ マネジメント以外から購入したライグラスストローが4.4キログラム(同39.5円)、試験区が繁殖和牛用エコTMRを10.4キログラム(体重450キログラムで想定、妊娠末期3キログラム、授乳期6キログラム増量、試験中のため無償提供)である。
 エコマネジメントのエコフィード飼料については、原料の一つであるみかんのしぼりかすの水分量に応じて、エコフィードを長期保存すると水分が増すことから給与量の調整が困難となることが課題として挙げられた。
 

4 エコフィード開発の経過

 エコマネジメントは、平成18年に産業廃棄物収集・運搬業として設立され、食品残さを産業廃棄物として処分するとともに、豆腐 かすは飼料として畜産経営に毎日販売してい た。しかし、23年3月に豆腐かすの供給先が倒産したことを契機として、24年1月にエコフィード製造の開発に着手した。一方、前述の野嶋牧場では、以前は無償でおからを譲渡されていたが、それが不足するようになり、その代替としてエコフィードが検討されるようになった。
 エコフィードの開発・製造・販売に関連する事項の経過は表3に示した通りである。これまでに四つのエコフィード飼料の開発に着手している。それらは、24年4月からの繁殖和牛用配合飼料、28年11月からの繁殖和牛用エコTMR、肥育用エコフィードである29年8月からの赤身試験用エコフィードと同年11月からの高級肉試験用エコフィードである。以下それぞれの内容を取り上げる。

 

(1)繁殖和牛用配合飼料

 和歌山県の和牛繁殖経営では、濃厚飼料費軽減のため、豆腐かす飼料(豆腐かすをビートパルプなどで水分調整、乳酸発酵により貯蔵)を活用しているが、調整にはかなりの労力を必要とし、また食品残さは全国的に利用が盛んになってきたため、従来は無料または廉価で入手できていたが、将来は有料化・高価格化への推移が予測された。そのため、食品残さなどを活用したエコフィードを製造 し、濃厚飼料として低廉な価格で継続して供給することにより、和牛繁殖経営の向上に資することが目的とされた。
 エコマネジメントが製造供給する繁殖和牛用配合飼料の繁殖和牛への給与試験が24年4月〜25年12月まで行われた。試験は、試験区(9頭)と対照区(8頭)を設け、繁殖牛用配合飼料が豆腐かす、トウモロコシ、ふすまに完全代替する設定での比較で行われた。試験により表4の繁殖成績(試験開始から最初の分娩後の成績)が得られた。試験区では、対照区より分娩後初回授精日数、空胎日数、授精回数、分娩間隔のいずれも少なく済んでおり、試験中には試験区において繁殖和牛の生産性が高かったことを示す結果が得 られている。試験を踏まえて、繁殖和牛用配合飼料は繁殖和牛の濃厚飼料として活用が可能であるとの結論が下された。

 

(2)繁殖和牛用エコTMR

 平成28年11月〜29年9月にかけては、24年に実用化した繁殖和牛用配合飼料に廉価な粗飼料を加え、繁殖和牛の飼育に適した混合飼料(繁殖和牛用エコTMR)の給与試験が行われ、表5に示される繁殖成績が得られた。試験区(5頭)では、分娩後初回授精日数、空胎日数、授精回数、分娩間隔のいずれも対照区(13頭)より少ないという結果であった。この結果や試験の場となった野嶋牧場の意見も踏まえて、水分調整への対応および原料の安定的確保ができれば商品化は可能であるとの結論が下された。

 
 

(3)肥育用エコフィード

 平成29年からは肥育用エコフィードとして赤身試験用エコフィードと高級肉試験用エコフィードの試験が開始された。前者は、和歌山県畜産試験場で設計されたものであり、肉質の3等級程度を狙ったものである。一方、後者は、エコマネジメントの管理獣医師が設計したもので4等級以上を狙ったものである。

5 エコフィードによりもたらされた効果

 安価なエコフィードの製造により、畜産経営における飼料購入に大きなメリットが生じ経営に寄与している。具体的には、和歌山県の和牛繁殖経営が購入する乾物換算1キログラム当たり62.5円の平均的な飼料に対し、エコマネジメントが供給する繁殖和牛配合飼料は同38円であり、また、繁殖雌牛への両飼料の給与量は乾物換算で同程度となること から、経費の削減につながっている。
 また、食品残さを排出する者においては、費用をかけて処分していた食品残さを、エコマネジメントが再生利用しエコフィードの原料となることで、処理費用が削減されることで経営改善に結び付いている。

6 エコフィードを推進した制度、組織、技術

 エコマネジメントによって製造されたエコフィードのうち繁殖和牛用配合飼料は、流通量が拡大しており、エコフィード推進の代表例と言えるが、その推進には制度、組織、技術の有効活用が関係している。
 平成24年度に公益財団法人わかやま産業振興財団の助成対象事業となる地域資源活用事業にエコマネジメントの「未利用資源と地域資源を活用した配合飼料の試作開発と事業化」が採択され、助成が得られた。また、和歌山県は、食品循環資源(余剰食品、食品製造副産物、調理残さなど)を飼料化したエコ フィードの製造および消費を推進するための「エコフィード認証制度実施要領」(平成21年一般社団法人日本科学飼料協会制定)に基づくエコフィード認証の取得を目指す飼料製造業者に対し、エコフィードの成分分析に要する経費を支援していた。このエコフィード認証取得支援事業(平成26〜28年)により 26年にエコマネジメントは繁殖和牛用発酵混合飼料の成分分析費用の半額を補助されるという制度的な支援があった。
 公益社団法人畜産協会わかやま(以下「畜産協会わかやま」という)の指導・協力の下、24年4月1〜25年12月にかけての給与試験を畜産協会わかやま、野嶋牧場、エコマネジメ ントの三者共同研究により、県独自の繁殖和牛飼料の開発を目指すという組織的な対応があった。
 県内業者から排出される食品残さは、通常 3日程度で腐敗するため、そのままでは飼料として適さないものであるが、エコマネジメントにおけるサイレージ化により、6カ月から1年間保存可能にするという技術的な適用があった。

7 おわりに

 和歌山県は梅やみかんの日本最大の産地であり、それに由来する食品残さをエコフィー ドの原料として有効活用している。エコフィードの推進に向けて課題はあるものの、エコマネジメントにおいては、エコフィードの開発に着手してから、着実にその流通量を増加 させているとともに、自ら肉用牛生産にも取り組んでいる。
 さらなるエコフィードの推進に向けて、各種原料の配合を最適化することが必要である。そのために、エコフィードの試作、成分分析、給与試験は欠かせず、商品化に至るまでにある程度の期間と困難を要することは、いかなる地域においても同様であると想像される。
 本事例においては、新たなエコフィードの開発への弛まない挑戦が、関連する主体間の連携により実行されている。エコフィードに関連する制度や技術を利用できたことが、その推進を後押ししたのも確かである。
 エコフィードは輸入飼料の代替飼料となり、その利用は畜産経営の改善に寄与するものとして期待されている。また、それは産業廃棄物として処分されたであろうものを原料として再生されたものである。その利用を通してエコフィードの製造者もその原料の供給者も経営が改善されることも期待される。エコフィードの利用に関連する主体間での連携を強化した取り組みが重要であろう。

【謝辞】
 本稿の作成に当たり、現地調査においてエコマネジメント株式会社、野嶋牧場、畜産協会わかやま、和歌山県農林水産部農業生産局畜産課の皆様から多大なご協力を頂きました。心より感謝申し 上げます。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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