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調査・報告 畜産の情報 2019年9月号

平成30年度鶏肉調製品の生産および流通実態調査の結果について

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畜産振興部 畜産流通課

【要約】

 サラダチキンのうち最も販売量が多いとされるブロックタイプ(ひとかたまりのむね肉を用いた商品)の市場は成熟期に入り、今後の大きな成長は見込めないとの声もある。取扱業者の各社は、味(フレーバー)の種類の拡充に加え、低カロリー・高たんぱく質以外の栄養面にこだわった商品や、これまで以上に簡便性の高い商品などの開発にも取り組んでいくとみられる。

1 はじめに

 近年の鶏肉調製品を見ると、消費者の簡便化志向などにより、弁当、総菜、ファストフードなどへの利用が増えていることから、鶏肉需給に与える影響が年々大きくなっている。その中でも、特にサラダチキンは消費者の健康志向も相まって市場が急成長している。
  そこで当機構は、平成29年度に、スーパーマーケットのPOSデータ分析や消費者向けアンケートを実施し、サラダチキンに対する消費者の行動や意識などについて調査した(「平成29年度鶏肉調製品の消費実態調査」、以下「前回調査」という)。その結果、需要は今後も好調に推移する見通しとなったことから、当機構では引き続きサラダチキンの需給動向を把握していく必要があると考え、30年度に企業向けアンケートを実施し、サラダチキンの供給サイドの動向や課題などについて調査した(「平成30年度鶏肉調製品の生産および流通実態調査」、以下「本調査」という)。本稿では、本調査の結果の概要について報告する。

2 調査結果

(1)調査概要

 本調査は、全国のサラダチキン製造業者およびサラダチキンの最終製品の輸入業者(以下「取扱業者」という)を調査対象としたアンケート調査である。調査実施期間(調査票配布〜回収)は平成30年12月〜31年1月と し、回答数は17社となった。
 

 (2)結果概要

 サラダチキン全体の取扱量を指数(平成29年=100)で見ると、30年は126、令和元年(見込)は128となった(図1)。前回調査では、サラダチキンの今後の購入頻度を増やしたいという消費者が多い結果となり、各社が底堅い需要に対応して取扱量を増やしていることから、30年は大幅に増加し、元年は緩やかなものの、引き続き増加の見通 しとなっている。
 

 
 また、「ソーセージタイプ」(スティックタイプ)の取扱量を指数(同)で見ると、30年が184、元年(見込)が247となった。ブロックタイプ(ひとかたまりのむね肉を用いた商品)が大半を占めるサラダチキン市場は競合が激しくなっていることから、特にソーセージタイプの伸び率は顕著となっており、商品の差別化・多様化が進んでいることがわかる。
 サラダチキンの原料原産国別取扱金額を指数(同)で見ると、「国産」は、平成30年が129、令和元年(見込)が131、「タイ産」は、30年が136、元年(見込)が147と増加した。一方、「その他」は、30年が68、元年(見込)が30と減少した。「その他」の内訳は、中国産、ブラジル産となっており、大半を中国産が占めている(図2)。

 


 また、元年(見込)のサラダチキンの原料原産国別割合(金額ベース)を見ると、「国産」は41%(前年並み)、「タイ産」は56%(前年比3ポイント増)、「その他」は3%(同3ポイント減)と見込まれている(図3)。
 

 前回調査では、原料原産国別の消費者の購入意欲は、国産が最も高く、次いで高いのはタイ産となり、ブラジル産、中国産は、比較的低い結果となった。多くの取扱業者は、原料原産国を決める際、現地の供給力、品質面、コスト面に加え、取引先からの要望を重視しており、供給側からみても国産、タイ産は、いずれの観点でも高く評価されているとみられる。このような状況の中で、国産、タイ産は増加、その他は減少の見通しとなっている。
 サラダチキンの販売先別取扱金額を指数(同)で見ると、「コンビニエンスストア」は、平成30年が117、令和元年(見込)が112となった。一方、「スーパーマーケット」は、30年が141、元年(見込)が150、「その他」は、30年が132、元年(見込)が174となった。なお、「その他」の回答では、ネット通販、ドラッグストアなどが挙げられた(図4)。
 

 また、元年(見込)のサラダチキンの販売先別割合(金額ベース)を見ると、「コンビニエンスストア」は52%(前年比3ポイント減)、「スーパーマーケット」は44%(同2ポイント増)、「その他」は4%(同1ポイント増) と見込まれている(図5)。
 

 前回調査では、サラダチキンをコンビニエンスストアで購入する消費者が最も多い結果となった。本調査でも、引き続きコンビニエンスストアが販売の中心となる見通しとなったものの、徐々にスーパーマーケットの存在感も増している。

3 今後の見通し

 今後(令和元年)強化したい取り組みを見ると、「販売チャネルの拡大」が59%と最も多く、次いで「食べ方(レシピ)の提案」(47%)、「味(フレーバー)の種類の拡充」(47%)、「味や産地、栄養面にこだわった高付加価値商品の拡充」(35%)、「食べやすさにも重点を置いた商品の拡充」(35%)、「その他」(6%)と続いた(図6)。

 

 また、今後取り扱いを増やしたい商品について見ると、ささみを用いた商品、添加物の少ない商品、ソーセージタイプ、成型肉タイ プ(結着剤で形状を整えたもの)などが挙げられた。
 最も販売量が多いとされるブロックタイプ(ひとかたまりのむね肉を用いた商品)の市場は成熟期に入り、今後大きな成長は見込めないとの声もある。前年度の調査でも、「味(フレーバー)の種類の拡充」などを求める消費者が多い結果となり、各社は、味(フレーバー)の種類の拡充に加え、低カロリー・高たんぱく質以外の栄養面にこだわった商品や、これまで以上に簡便性の高い商品などの開発にも取り組んでいくとみられる。

4 おわりに

 最近の鶏肉の需給動向は、好調な消費が続 く中、国内の生産量は増加傾向で推移している。このうちサラダチキンの主な動きについては、本調査結果により、商品の差別化(ささみを用いた商品、ソーセージタイプなど)が進み、必ずしもむね肉を用いるとは限らなくなったこと、需要の増加分は主にタイ産で補われており、タイ産がシェアを伸ばしていることなどが分かった。
 こうした状況の中、近年堅調に推移していた国産むね肉卸売価格を見ると、平成30年は、1キログラム当たり200円台後半を維持 したものの、30年4月以降、前年同月を下回って推移した。鶏肉は、需要、供給ともに過去最高水準かつ増加傾向にあるが、サラダチキンが引き続き需要を下支えする役割を担っていくのか、加えて、むね肉以外の部位の使用や新たな商品開発などによりサラダチキンのさらなる伸びしろが期待できるのかなど、今後の動向や卸売価格における影響などを注視していく必要がある。

●本調査結果の詳細については、下記URL をご覧ください。
サラダチキンの需給動向について
「平成30年度鶏肉調製品の生産及び流通実態調査」
https://www.alic.go.jp/r-nyugyo/raku02_000076.html
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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