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海外の需給動向【牛肉/米国】 畜産の情報 2019年11月号

9月のフィードロット飼養頭数、3年半ぶりに前年を下回る

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前年同月を1.3%下回るも、依然として高水準
 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2019年9月20日に公表した「Cattle on Feed」によると、8月のフィードロット導入頭数は前年同月比9.0%減の188万4000頭、出荷頭数は同2.5%減の195万3000頭となった。
 この結果、2019年9月1日現在のフィードロット飼養頭数は1098万2000頭と、前年同月を1.3%下回った。同頭数は8月まで、現行の形式で調査が開始された1996年以降過去最大の記録的水準で推移していたが、9月はおよそ3年半ぶりに前年同月を下回ることとなった。しかしながら、依然として高水準であることに変わりはない(図1)。
 

 この状況について、現地報道などによると、2018年の子牛出生頭数が多い中、牧草の生育が良好であったことや肥育もと牛価格が安価に推移したため、若齢の肥育もと牛を中心にフィードロットへの導入頭数が減少し、9月の飼養頭数が減少したとされる。

第4四半期の牛と畜頭数、大規模工場の火災により減少懸念
 USDA/NASSが2019年8月27日に公表した「Livestock Slaughter」によると、7月の牛と畜頭数(連邦検査ベース)は、前年同月比6.4%増の290万3000頭となった。また、2019年1〜7月のと畜頭数は3月と6月を除いて前年同月を上回っており、前年同期比2.0%増となった(図2)。
 

 既報(「畜産の情報」2019年9月号)の通り、牛総飼養頭数が前年並みである中、繁殖後継牛の飼養頭数が減少し、と畜頭数だけでなく雌牛のと畜頭数割合も増加(注1)しており、米国の肉牛は近年の牛群拡大傾向が一服し、キャトルサイクルの拡大が終盤に差し掛かっている状況にあるとされている。
 このような状況の下、8月9日、米国最大の牛肉パッカーであるタイソン社が所有するカンザス州の大規模牛肉加工処理施設で火災が発生し、操業が停止された(注2)
 同社およびUSDAによると、同施設の処理可能頭数は1日当たり6000頭で、これは全米の処理可能頭数の5〜6%に相当する規模であり、2019年内の再稼働は難しいとのことである。この不足分を補うため、同社他施設での代替と畜が行われ、さらに土曜日における操業および稼働率を高めるなどの対応が行われている。
 今後の需給への影響について、USDAは、現状ではと畜頭数は火災発生前と同程度の数量が保たれているものの、2019年第4四半期のと畜頭数は以前の見込みよりも減少する可能性を指摘している。また、肥育牛価格が下落し、牛肉価格が上昇したことでパッカーの収益性が向上しているが、このことがパッカーの稼働率を高める意欲につながったとしている。
 生産量については、フィードロットへの導入が遅れることで枝肉重量が減少し、当初見込みから減少するとコメントしている。

(注1) 一般的に、と畜頭数に占める雌牛の割合が47%を超えると繁殖雌牛頭数が減少傾向になるとされている。2019年上半期の同割合は48.5%となった。
(注2) 海外情報「大規模牛肉加工処理施設で火災発生(米国)」(2019年8月22日)(https://www.alic.go.jp/chosa-c/joho01_002500.html)にも関連情報を記載。

 
(調査情報部 藤原 琢也)