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海外の需給動向【牛肉/豪州】 畜産の情報 2019年11月号

2019/20年度牛肉生産量、輸出量はかなり減少と予測

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成牛と畜頭数、干ばつによる淘汰の継続により増加
 豪州統計局(ABS)によると、2019年7月の成牛と畜頭数は、クイーンズランド(QLD)州、ニューサウスウェールズ(NSW)州、ビクトリア(VIC)州などで発生している干ばつにより雌牛を中心にとうが増加していることから、77万900頭(前年同月比8.3%増)とかなりの程度増加した。と畜頭数の内訳を見ると、雄牛は32万8700頭(同0.5%減)とわずかに減少した一方、雌牛は44万2100頭(同15.8%増)とかなり大きく増加し、20カ月連続で、前年同月を上回っており、牛群縮小のための繁殖雌牛を中心とした淘汰は継続している(図3)。
 

 1頭当たり枝肉重量は、比較的重量の軽い雌牛のと畜頭数の増加に伴い281.8キログラム(同1.4%減)と16カ月連続で前年同月を下回り、全体のと畜頭数の増加分を一定程度相殺したことで、同月の牛肉生産量(枝肉ベース)は、21万7211トン(同6.8%増)となった。

雌牛と畜割合は依然高い水準
 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、2019年1月以降、雌牛のと畜割合は上昇し続け、7月は成牛と畜頭数の57%を占め、依然として高水準であるとした。7月のと畜頭数は、2010年以降の7月の平均と畜頭数と比較して12%も上回っている。雄牛と畜頭数は、同6%下回っている一方、雌牛のと畜頭数は、10万頭を上回り、同29%増となっている。
 また、全体のと畜頭数も2019年初めから高い水準で推移し、NSW州(2010年以降の同期間平均比8%増)、QLD州(同5%増)と、干ばつの影響を大きく受けている州で増加している。VIC州では、干ばつの影響のほか、西オーストラリア州の主要なと畜場の閉鎖に起因して同20%増となっている。

2019/20年度牛肉生産量、輸出量はかなり減少すると予測
 豪州農業資源経済科学局(ABARES)は2019年9月17日、「Agricultural Commodities」の中で、2019/20年度(7月〜翌6月)の牛肉需給見通しを発表した(表1)。
 

 これによると、2020年6月末時点の牛飼養頭数は、2470万頭(前年比0.8%減)と前回予測(2019年6月)から20万頭下方修正された。
 2019/20年度の牛と畜頭数は、雨期の天候が平年並となった場合、牛群再構築のための雌牛保留が増加することから、730万頭(前年度比16.1%減)と大幅に減少し、これが牛肉生産量および輸出量の減少を招くとしている。
 牛肉生産量は、と畜頭数の減少により205万2000トン(同12.7%減)とかなり大きく減少を見込んでいる。
 牛肉輸出量においても、生産量の減少により99万5000トン(同18.7%減)と大幅な減少を見込んでいる。輸出先国別に見ると、日本、韓国および米国向けはすべて減少する一方、中国向けのみ、アフリカ豚コレラ発生に起因する代替需要により、増加するとしている。
 肉牛取引価格は、国際市場での牛肉の高い需要と供給量の低下を反映して、1キログラム当たり480豪セント(365円:1豪セント=0.76円、同7.6%高)とかなりの程度上昇すると前回予測を上方修正した。
 また、フィードロットによる穀物肥育牛と畜頭数は、冬作物の収穫増収に伴う飼料穀物価格の低下および豪ドル下落による輸出競争力の向上が予測されているため、2019/20年度も堅調に増加し続けると見込んでいる。
 
(調査情報部 菅原 由貴)