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海外の需給動向【豚肉/EU】 畜産の情報 2019年11月号

上半期の豚肉生産量は、前年同期比1.3%減

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主要生産国の多くで減産
 欧州委員会によると、2019年6月の豚肉生産量(EU28カ国)は昨年の豚肉価格の低迷による飼養頭数の減少の影響などから、前年同月比4.5%減の178万7300トンとなり、前月に続き前年同月を下回った(図4)。と畜頭数は同5.6%減の1927万頭となり、生産量と同様に2カ月連続で、前年同月を下回っている。単月のと畜頭数が2000万頭を下回ったのは2017年4月以来である。一方、1頭当たり枝肉重量は同1.2%増の92.7キログラムとなり、と畜頭数の減少による生産量の減少を、わずかながらカバーしている。
 

 また、2019年上半期(1〜6月)の豚肉生産量は、前年同期比1.3%減(15万5210トン減)の1185万8740トンとなった。なお、と畜頭数は、同1.8%減の1億2706万頭となった。
 同期間の生産量について主要生産国別にみると、スペイン(同2.1%増)およびオランダ(同2.3%増)では増加したものの、ドイツ(同3.7%減)、フランス(同0.2%減)、ポーランド(同4.2%減)、イタリア(同0.9%減)、デンマーク(同7.1%減)では減少した(図5)。
 

 減少に大きな影響を与えたのは、EU最大の豚肉生産国であるドイツ(258万4000トン)で、前年同期比9万9000トン減となった。ドイツの減少量は、EU28カ国合計の減少量の64%を占めている。ドイツでは、生産量の減少とともに輸出量も減少している。同期間について、EU域内の主要な輸出先国であるイタリア向け(前年同期比11.8%減)、ポーランド向け(同18.9%減)、オランダ向け(同21.4%減)は軒並み減少し、中国向け(同22.5%増)、韓国向け(同3.2%増)の輸出は増えたものの、全体でみると同4.6%の減少となった。
 主要生産国の多くが減産している中、増加量が大きかったのは、EU第2位の生産量となっているスペイン(237万5720トン)で、4万8510トン増加し、多くの国の減少をカバーした。スペインは、ドイツと対照的に、生産量、輸出量ともに増加傾向にある。同期間について、フランス向け(同5.1%減)、ポルトガル向け(同15.0%減)などは減少したものの、最大の輸出先である中国向け(同45.9%増)、イタリア向け(同5.5%増)などの輸出量は増加し、全体でみると同5.9%の増加となった(表2)。
 

 なお、同期間のドイツの輸入量は同4.5%減、スペインは同6.2%減となり、いずれも減少している。現地関係者は、ドイツの輸入量の減少は、ドイツ国内での需要の減退によるものとする一方、スペインの輸入量の減少は、生産量の増加によりこれまで輸入していた数量の一部が賄われたことによるものとみている。

 豚価の上昇が続く
 欧州委員会によると、豚枝肉卸売価格(EU28カ国)は、2019年2月以降、前月比で5カ月連続して上昇し、7月はいったん下落したものの、8月には再度上昇に転じた。同価格は、2019年4月以降、前年同月を上回って推移しており、8月は100キログラム当たり178.8ユーロ(2万1456円:1ユーロ=120円)となった(図6)。
 

 生産量が減少している中、2019年6月のEUの豚肉輸出量(EU域外向け)は前年同月比11.2%増、2019年1〜6月の輸出量は前年同期比17.0%増となっている。価格動向は、輸出動向にも影響を受けることから、今後、輸出量がどのように推移するのか注目される。
 
(調査情報部 前田 絵梨)