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国内の需給動向【トピック】 畜産の情報 2019年12月号

令和元年度上半期の食肉需給について

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牛肉

牛肉生産量、和牛が増加、乳牛・交雑牛が減少
 令和元年度上半期(4〜9月)の牛肉生産量は16万1571トン(前年同期比0.8%減)とわずかに減少した(図15)。
 
 
 このうち、和牛は、繁殖雌牛の増頭による生産基盤の回復、乳用牛への和牛受精卵移植による和子牛の生産拡大などを背景に、前年同期比で2.5%増加した。一方、乳牛、交雑牛は、乳用種雌牛の減少に加え、乳用牛への受精卵移植技術の活用などによる和子牛の生産拡大や、性判別精液の活用などによる優良な乳用後継牛を確保する動きを背景に、それぞれ同2.4%減、同4.9%減となった。

牛肉輸入量、冷蔵品・冷凍品ともに減少
上半期の牛肉輸入量は32万9745トン(前年同期比2.7%減)と前年同期をわずかに下回った(図16)。
 
 
 このうち、主にテーブルミートとして消費される冷蔵品は、長梅雨などで家計消費が振るわなかったことなどから、14万5263トン(同0.8%減)とわずかに減少した。冷蔵品は、米国産と豪州産で9割以上を占めており、米国産は6万6598トン(同6.8%減)とかなりの程度、豪州産は6万6366トン(同1.5%減)とわずかに、いずれも前年同期を下回った。
また、主に加工・業務用に仕向けられる冷凍品は、中国国内でのASF(アフリカ豚コレラ)の流行を起因とする中国の牛肉需要の高まりなどを背景に、日本向けが減少したことから、18万4141トン(同4.3%減)と前年同期をやや下回った。冷凍品は、豪州産と米国産で8割以上を占めており、豪州産は9万35トン(同11.0%減)、米国産は6万1557トン(同11.0%減)といずれも前年同期をかなり大きく下回った。

牛肉出回り量、前年同期並み
 上半期の牛肉出回り量は、牛肉消費の6割以上を占める外食消費などが好調であったものの、約3割を占める家計消費が振るわなかったことから、47万4276トン(前年同期比0.2%減)と前年同期並みとなった(図17)。このうち、家計消費の割合が高いとされる国産品は15万9310トン(同1.0%減)とわずかに減少した一方、輸入品は31万4967トン(同0.3%増)と前年同期並みとなった。
 
 
 上半期末(9月末)の牛肉在庫は13万894トン(前年同月比6.7%増)と15カ月連続で前年同月を上回った。このうち、9割以上を占める輸入品在庫は12万1984トン(同7.9%増)と同様に15カ月連続で前年同月を上回った一方、国産品在庫は8910トン(同8.2%減)と前年同月をかなりの程度下回った。

豚肉

豚肉生産量、前年同期比0.9%増
 令和元年度上半期(4〜9月)の豚肉生産量は、と畜頭数が前年同期並みとなり、平均枝肉重量が前年同期をわずかに上回ったことから、43万1553トン(前年同期比0.9%増)とわずかに増加した(図18)。
 
 
豚肉輸入量、冷蔵品・冷凍品ともに増加
 上半期の豚肉輸入量は50万7299トン(前年同期比9.4%増)と前年同期をかなりの程度上回った(図19)。
 
 
 このうち、主にテーブルミートとして消費される冷蔵品は、連休や夏場の需要増を期待した輸入業者が買い付けを増やしたことから、20万4131トン(同2.6%増)とわずかに増加した。冷蔵品は、米国産とカナダ産で9割以上を占めており、米国産は10万489トン(同1.4%減)とわずかに減少したものの、4年連続の10万トン超えとなった。また、カナダ産は、近年、冷蔵品の対日輸出が伸びており、9万8213トン(同7.5%増)と引き続き増加傾向で推移した。
 また、主に加工・業務用に仕向けられる冷凍品は、ASFの流行による中国の輸入豚肉需要の高まりを背景とした国際相場の先高感などにより、30万3160トン(同14.5%増)と前年同期をかなり大きく上回った。冷凍品は、安価な人件費を強みに一次加工など細かなニーズに対応できるスペイン産やメキシコ産が近年増加傾向で推移している。特に、前年同期に初めてデンマーク産を抜きトップシェアとなったスペイン産は、6万8646トン(同15.0%増)と前年同期をかなり大きく上回り、スペインが引き続き最大の輸入先国となった。

豚肉出回り量、国産品が増加、輸入品が減少
 上半期の豚肉出回り量は、豚肉消費の約5割を占める家計消費が長梅雨などの影響により振るわなかったことなどから、88万6759トン(前年同期比2.0%減)と前年同期をわずかに下回った(図20)。このうち、約半数を占める国産品は43万2046トン(同0.5%増)とわずかに増加した一方、輸入品は45万4713トン(同4.2%減)とやや減少した。
 
 
 上半期末(9月末)の豚肉在庫は21万8205トン(前年同月比30.2%増)と前年同月を大幅に上回った。このうち、約9割を占める輸入品在庫は、需要を上回る供給が続いていたことから、19万7854トン(同32.3%増)と前年同月を大幅に上回った。また、国産品在庫は2万351トン(同12.8%増)と19カ月連続で前年同月を上回った。

鶏肉

鶏肉生産量、過去最高の80万トン超え
 令和元年度上半期(4〜9月)の鶏肉生産量は、近年の好調な鶏肉消費を背景に、生産者の増産意欲が引き続き高かったことから、80万7881トン(前年同期比3.5%増)とやや増加し、過去最高を記録した(図21)。
 
 
鶏肉輸入量、ブラジル産が増加、タイ産が減少
 上半期の鶏肉輸入量は、前年9月に発生した台風21号に伴う倉庫の浸水被害や通関遅延などにより、前年同期の輸入量が少なかったことに加え、国内在庫が減少していることなどから、29万4543トン(前年同期比6.2%増)と前年同期をかなりの程度上回った(図22)。
 
 
 さらに国別にみると、7割以上を占めるブラジル産は、前年5月に発生した現地のトラック運転手によるストライキで輸送が滞った影響などにより、前年同期の輸入量が少なかったことなどから、22万2545トン(同14.5%増)と前年同期をかなり大きく上回った。一方、約2割を占めるタイ産は、中国国内でのASFの流行を起因とする中国の鶏肉需要の高まりなどを背景に、日本向けが減少していることから、6万1214トン(同15.8%減)と前年同期をかなり大きく下回った。

鶏肉出回り量、過去最高を記録
 上半期の鶏肉出回り量は、鶏肉消費の5割以上を占める外食消費などに加え、約4割を占める家計消費が引き続き好調であったことから、109万407トン(前年同期比1.7%増)とわずかに増加し、過去最高を記録した(図23)。このうち、家計消費の割合が高いとされる国産品は80万5655トン(同3.1%増)とやや増加した一方、輸入品は28万4752トン(同2.0%減)とわずかに減少した。
 
 
 上半期末(9月末)の鶏肉在庫は16万4346トン(前年同月比0.9%増)と12カ月ぶりに前年同月を上回った。
 このうち、約8割を占める輸入品在庫は13万4468トン(同0.4%減)と12カ月連続で前年同月を下回った一方、国産品在庫は2万9878トン(同7.4%増)と前年同月をかなりの程度上回った。
 
(畜産振興部 河村 侑紀)