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海外の需給動向【牛肉/NZ】  畜産の情報 2019年12月号

2019/20年度の牛肉輸出、増加見込み

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2018/19年度、牛と畜頭数、牛肉生産量が増加
 ニュージーランド統計局(NZ統計局)によると、2018/19年度(10月~翌9月)の牛と畜頭数は、年度前半は良好な降雨により牧草の生育が良かったことから出荷が遅れていたものの、高い輸出需要とニュージーランドドルの下落により、記録的な高水準となっている牛肉輸出価格を背景に、最終的に263万頭(前年度比1.5%増)とわずかに増加した(図5)。内訳をみると、経産牛以外のすべてで増加しており、去勢牛は57万頭(同5.2%増)、未経産牛は50万頭(同3.7%増)とやや、雄牛は56万頭(同2.4%増)とわずかに増加した。経産牛は、前年度の干ばつにより淘汰が増加した反動により100万頭(同2.0%減)とわずかに減少した。
 

 この結果、2018/19年度の牛肉生産量(枝肉重量ベース)は、67万トン(同2.5%増)とわずかに増加した。

牛肉輸出量、中国向けが大幅増
 NZ統計局によると、2018/19年度の牛肉輸出量は、牛肉生産量の増加に伴い、45万4033トン(前年度比5.4%増)とやや増加した(表7)。
 
 
 輸出先国別にみると中国向けが、前年度まで最大の輸出先国であった米国を上回り、19万6291トン(同86.7%増)と大幅に増加した。ニュージーランド(以下「NZ」という)産牛肉にかかる関税が、2016年にNZ・中国自由貿易協定に基づき、撤廃されたことにより、近年増加傾向であったが、現地報道によるとこれらに加え、ASF(アフリカ豚コレラ)発生による旺盛な代替需要により増加したものとされている。特に、同国向けの冷蔵牛肉輸出は、輸出量全体に占める割合は少ないものの、前年度と比較して約3倍の8301トンと大幅に増加し、冷蔵牛肉においても最大の輸出先国となった。一方、現地報道によれば、その影響を受け2番目の輸出先国となった米国向けは、13万7085トン(同28.8%減)と大幅に減少した。日本向けについては、1万9122トン(同26.7%増)と大幅に増加した。内訳をみると、冷凍牛肉が1万2386トン(同43.5%増)と大幅に増加した。これは前年度が関税緊急措置の発動により関税率が引き上げられ、減少したことによるものであり、2016/17年度(1万2379トン)と比較すると、同水準である。

2019/20年度の輸出向け牛と畜頭数、増加見込み
 ビーフ・アンド・ラム・ニュージーランド(BLNZ)(注)が公表した「New Season Outlook 2019-20」によると、2019/20年度の輸出向け牛のと畜頭数は、256万頭(前年度比1.7%増)とわずかに増加すると見込んでいる(表8)。内訳をみると、経産牛以外の、去勢、未経産および雄牛は、いずれも増加を見込んでおり、特に、去勢および未経産牛は、いずれも5%以上増加するとしている。
 
 
 この結果、輸出向け牛肉生産量(枝肉重量ベース)は、64万2000トン(同2.1%増)とわずかな増加を見込んでいる。また、牛肉輸出量(船積重量ベース)においても、46万3000トン(同2.2%増)と増加を見込んでいる。
 なお、BLNZは、世界的な牛肉需給について、中国でのASF発生などにより主要な牛肉輸出国と輸入国の生産と貿易関係に変化があったが、NZは、生産および輸出の見通しは堅調であるとしている。また、2019年の世界の消費量は、NZ産牛肉の主要な市場でもある中国と米国がけん引し、2.4%増加すると推定している。
(注) BLNZとは、2010年に、畜産農家の出資により業界振興を目的とし、設立された団体。主な活動は、国内外のニュージーランド産牛肉および羊肉の販売促進や研究開発、市場開拓など。

(調査情報部 菅原 由貴)