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海外の需給動向【豚肉/メキシコ】  畜産の情報 2019年12月号

需給全体の拡大が続く

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堅調な需要が生産を後押し
 米国農務省海外農業局(USDA/FAS)は8月15日、メキシコの2020年における豚肉の需給見通しを発表した。同国では近年、インフラの近代化、企業養豚による垂直統合(インテグレーション)の進展、関連施設のバイオセキュリティの改良などにより生産拡大が続いている。今回の発表によると、2020年の豚肉生産は、堅調な需要が生産を後押ししていることもあり、2019年の水準を3.9%上回る142万8000トンと増加傾向が継続すると見込まれている(図7)。
 
 
 また、同国のと畜施設の衛生管理に関してはTIF認証という制度がある。TIF認証は、メキシコ食品衛生安全品質管理局(SENASICA)が行っており、輸出先国の基準に対応した高い衛生管理が求められる。このため、食肉輸出を行う際には輸出先国の認定を受ける前にTIF認証の取得が必要となっている。これまでTIF施設の利用促進のためにTIF認証施設でと畜を行った場合には補助金が支払われていたが、補助金が廃止されたことによりTIF認証施設でのと畜が減少するとの見方もあった。しかしながら、同報告によると、国内市場からも高い食品安全基準での生産が求められていることから、TIF認証施設でのと畜は増えており、2019年上半期は前年同期と比較して1.1%増となったとしている。
 消費量については、同国では近年豚肉が価格安で推移していることや、大型スーパーマーケットによる消費者の嗜好の変化に合わせた取り組み(味付けリブなどの付加価値商品の販売)によって増加傾向が続いている。この傾向は2020年も続くとみられており、消費量は前年比3.9%増の251万4000トンと見込まれている(表12)。
 
 
輸入量、輸出量ともに堅調の見通し
 同国では高価格部位は輸出向け、低価格部位は国内消費に仕向けられ、国内の不足分を輸入で補うという構造となっている。先述の通り、国内需要が増加していることから、輸入量も増加傾向で推移しており、2020年の輸入量は前年比4.0%増の128万4000トンと見込まれている。
 また、米国がメキシコの鉄鋼およびアルミニウム製品にかかる関税率を引き上げたことに対する米国産豚肉への追加関税の適用が2019年5月20日に終了した。これにより、カナダからの輸入量が減少し、米国が再びシェアを取り戻すものとみられている。
 一方、2020年の輸出量は同4.2%増の19万8000トンと増加傾向が続くと見込まれている。メキシコにおける豚肉輸出は、日本向けが約7割、残りの多くが米国、韓国向けとなっている。現在、中国などにおけるASF(アフリカ豚コレラ)の発生により、世界における従来の豚肉輸出入の流れに変化が生じていることから、メキシコにも新たな市場へ輸出できる機会がめぐってきている。同報告では、これまで同国はアジアの中でも特に日本向けに高価格部位や加工品を輸出してきた実績があることから、これらの部位や製品をASFが発生している中国や他のアジアの国々にも輸出することを考えているとしている。
 
(調査情報部 山口 真功)