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海外の需給動向【豚肉/EU】  畜産の情報 2020年2月号

豚肉輸出量は10カ月連続で前年を上回る

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10月の豚肉生産量は前年同月比1.5%減
 欧州委員会によると、2019年10月の豚肉生産量(EU28カ国)は、前年同月比1.5%減の211万680トンとなった(図12)。1頭当たり枝肉重量は92.5キログラム(前年同月比0.9%増)となったものの、と畜頭数は2281万7070頭(同2.4%減)となった。なお、1頭当たり枝肉重量は、2019年5月以降6カ月連続で前年を上回って推移している。
 
 
 同年1〜10月の豚肉生産量の合計は、1967万1560トン(前年同期比0.9%減)となった(表9)。国ごとの生産量をみると、好調な輸出を背景に増産を進めるスペイン(同2.0%増)のほか、フランス(同1.0%増)とオランダ(同2.7%増)では増加したものの、最大の生産国であるドイツ(同2.2%減)やポーランド(同4.6%減)などでは減少した。
 
 
 オランダ政府は、養豚場から発生する臭気対策として、任意参加による養豚経営の廃業支援のための補助金を交付するプログラムを実施することとなった。政府は2019年11月〜2020年1月の間にプログラムへの参加登録の申請を受け付けている。今後、審査が行われ、本プログラムの対象となった養豚生産者が廃業を始めるのは2020年の春以降の予定である。同国の豚肉生産は、養豚生産者がどの位の割合で本プログラムに参加するかによって影響を受けるため、その動向が注目される。

中国向けの増加により、1〜10月の豚肉輸出量は前年を大幅に上回る
 欧州委員会によると、2019年10月の豚肉(生鮮・冷蔵、冷凍)輸出量(EU28カ国)は、前年同月比41.4%増の29万6477トン(表10)となり、2019年1月以降10カ月連続で増加となった(図13)。最も増加が大きかったのは中国向けで、同国で発生したASF(アフリカ豚コレラ)の影響により、豚肉輸出量は前年同月比3.1倍となった。なお、同国向けの輸出量(19万2612トン)は、EUの域外輸出量の65%を占めている。
 


 
 また、2019年1〜10月の豚肉輸出量の合計は、前年同期比22.3%増の216万3128トンとなった。中国向け(前年同期比1.9倍)、日本向け(同8.0%増)、豪州向け(同24.2%増)が増加した一方、韓国向け(同18.5%減)、フィリピン向け(同14.6%減)などは減少した。

輸出量は2030年まで高い水準で推移
 こうした中で、欧州委員会は12月に、主要農畜産物の中期的見通し「EU Agricultural outlook for markets and income 2019-2030」を公表した(図14)。
 
 
 欧州委員会は、本見通しの中で、ドイツやオランダなどの加盟国で行われる環境問題への対応のための政策や、欧州中部および東部におけるASFの発生・拡大のリスクにより、EUの豚肉生産が制限されているとしている。その一方で、スペインといった、EU域外の国、特にアジア市場に輸出ができる国については、世界的な需要拡大と豚肉価格の急騰により生産が拡大するとみている。なお、ASFが発生している中国での豚肉生産が回復し始めると、EUの生産量は大幅に減少し、価格も大幅に下落するとみている。
 なお、消費者の家きん肉への消費のシフトにより、一部の国では豚肉の一人当たり消費量の減少がみられるという。家きん肉は、安価で、健康志向にかなう選択肢として認識されており、見通し期間の初期に豚肉価格が高値で推移することで、この傾向が加速されるとしている。
 また、EUの豚肉輸出量は、2022年ごろをピークに、中国の生産量の回復により減少するものの、2030年までは現在よりも高い水準で推移するとみている。ただし、輸出については、中国の需要動向やEUの主要輸出国でのASFの発生状況によるものとしている。

(調査情報部 前田 絵梨)