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海外の需給動向【牛肉/豪州】 畜産の情報 2020年3月号 

2019年牛肉輸出量・生体牛輸出頭数ともに増加

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雌牛と畜頭数、24カ月連続で前年同月を上回る
 豪州統計局(ABS)によると、2019年11月の成牛と畜頭数は、クイーンズランド州およびニューサウスウェールズ州で発生している干ばつにより雌牛を中心に淘汰が増加していることから、76万1500頭(前年同月比10.8%増)とかなりの程度増加した(図2)。と畜頭数の内訳を見ると、雄牛は35万頭(同0.6%減)と13カ月連続で前年同月を下回った一方、雌牛は41万1500頭(同22.8%増)と24カ月連続で前年同月を上回った。と畜頭数全体に占める雌牛の割合も、相変わらず50%を上回っており、11月は54.0%であった。
 

 
 1頭当たり枝肉重量は、比較的重量の軽い雌牛の増加に伴い287.4キログラム(同1.0%減)とわずかに減少したが、と畜頭数の増加により相殺されたため、同月の牛肉生産量(枝肉ベース)は、21万8822トン(同9.7%増)と、3カ月連続で前年同月を上回った。

2019年牛肉輸出量、前年比9.2%増
 豪州農業省(DA)によると、2019年の牛肉輸出量は、牛肉生産量の増加に伴い123万トン(前年比9.2%増)とかなりの程度増加した(図3)。
 
 
 主要輸出先別に見ると、中国向けは、ASF(アフリカ豚熱)発生と富裕層の増加などにより輸入牛肉需要が増加し、30万トン(同84.5%増)と大幅に増加し、最大の輸出先であった日本を上回った。
 一方、2番目の輸出先となった日本向けは29万トン(同9.0%減)と、かなりの程度減少したものの、前々年の2017年と同水準となった。
 米国向けは、加工用冷凍牛肉の需要が高いことと、牧草肥育牛の出荷も堅調であったことから、25万トン(同8.9%増)とかなりの程度増加し、韓国向けは、16万トン(同4.7%減)とやや減少した。

生体牛輸出量、2年連続100万頭を上回る
 豪州食肉家畜生産者事業団(MLA)によると、2019年の生体牛(乳牛を含む)輸出頭数は、東南アジアを中心とした高い需要により130万頭(前年比19.2%増)と大幅に増加し、2年連続で100万頭を上回った。2000年以降では2015年に次いで2番目に多い輸出頭数となった(図4)。
 
 
 輸出先国別に見ると、最大の輸出先国であるインドネシア向けは、68万頭(同14.7%増)とかなり大きく増加した。内訳をみると、大部分を占める肥育もと牛がかなり大きく増加(66万頭、同14.7%増)した一方、繁殖用雌牛は大幅に減少(5千頭、同56.7%減)した。インドネシアは、2016年10月から肥育もと牛5頭の輸入に対し、繁殖用雌牛1頭の輸入を輸入業者に義務付ける政策を実施していた。しかし、2018年にこの規則を順守した輸入業者は8〜10%のみであったとし、2019年7月に同政策の見直しを行い、輸入業者には輸入する生体牛の5%を繁殖用雌牛とするよう義務付けた。それでもなお、この規則を順守する輸入業者は少なく、必要な繁殖用雌牛の輸入頭数を満たしていないため、政府が今後どのような対応を行うか注目される。
 第2位のベトナム向けは、大部分がと畜場直行牛であり、同国における牛肉需要増に伴い、27万頭(同31.9%増)と大幅に増加した。
 中国向けは、繁殖用牛の輸出量増加が中心となり、16万頭(同45.4%増)と大幅に増加した。繁殖牛の輸出は、その約80%を占めた中国向けの増加にけん引され、17万頭(同62.8%増)と大幅に増加した。
 しかし、2020年の生体牛輸出については、これまでの干ばつによると畜頭数の増加や生体牛輸出の増加により、国内の飼養頭数が減少しているため、供給が不足し、100万頭を下回ると予測されている。
 
(調査情報部 菅原 由貴)