畜産 畜産分野の各種業務の情報、情報誌「畜産の情報」の記事、統計資料など

ホーム > 畜産 > 畜産の情報 > 2020年下半期牛肉生産量は前年同期比微減の見込み

海外の需給動向【牛肉/米国】 畜産の情報 2020年5月号

2020年下半期牛肉生産量は前年同期比微減の見込み

印刷ページ
2月の牛肉生産量は前年同月比7.2%増
 米国農務省全国農業統計局(USDA/NASS)が2020年3月19日に公表した「Livestock Slaughter」によると、2020年2月の平均枝肉重量は、前年同月比2.1%増の376.9キログラムとなり、2019年11月以降4カ月連続で前年同月を上回って推移している(図1)。USDAはこの一因として、前年や2年前の同時期にみられたような、フィードロットでの増体に影響を及ぼすほどの天候不順が今冬に生じていないことを挙げている。

 
 また、2020年2月のと畜頭数は、パッカーの収益性が良好であったことなどから、同5.0%増の257万8000頭と、2019年12月以降3カ月連続で前年同月を上回って推移している。このように、枝肉重量およびと畜頭数がいずれも堅調に推移していることから、2020年2月の牛肉生産量は、96万6000トン(前年同月比7.2%増)と、2019年12月以降3カ月連続で前年同月を上回った(図2)。

 
1月以降、肥育牛価格が続落
 堅調な肥育牛価格を背景にフィードロットの収益性は良好であったため、フィードロット導入頭数は2019年9月以降12月まで前年同月を上回って推移した(図3)。これに伴って、フィードロット飼養頭数も2019年11月以降前年同月を上回って推移し、2020年2月1日時点では1192万8000頭(前年同月比2.2%増)と、同時点としては過去12年間で最多となった(図4)。
 



 
 しかし、牛肉生産量の増加などを背景に肥育牛価格は2020年1月以降、下落基調で推移しており、2020年3月(速報値)は前年同月比12.9%安の100ポンド当たり111.0米ドル(1キログラム当たり269円:1米ドル=110円)と見込まれている(図5)。このためフィードロットの導入意欲は減退しているとみられ、2020年1月は前年同月比0.6%減、2月は同7.9%減と、導入頭数は2カ月連続で前年を下回って推移している。また、2020年3月1日時点のフィードロット飼養頭数も、前年同月並みの1180万6000頭(前年同月比0.2%増)にとどまっている。
 

 
 こうした動きを踏まえ、USDAは2020年の牛肉生産見通しについて、上半期(1〜6月)を前年同期比6.1%増の636万4000トンと見込む一方、下半期(7〜12月)は同1.8%減の620万1000トンと見込んでいる(図6)。

 
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により牛肉卸売価格が急騰
 2020年3月中旬現在、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴う市場の混乱に伴って、牛肉卸売価格(カットアウトバリュー(注))が大きく変動している。米国農務省農業マーケティング局(USDA/AMS)が毎日公表する「National Daily Boxed Beef Cutout and Boxed Beef Cuts」によると、カットアウトバリューは3月13日以降急騰し、3月24日には前年同期を11.9%上回る100ポンド当たり256.31米ドル(1キログラム当たり622円)となった(図7)。現地業界紙はこの背景について、混乱に伴って一時的に牛肉需要が増加した中、チャック(かた)やラウンド(もも)など、通常であれば小売部門向けに安価に販売される部位が、高値で販売されたこともあったと指摘している。
 

 
 しかし、牛肉生産量の過半が外食産業に仕向けられている米国で現在、感染拡大に伴って営業規制が強化されつつある外食産業の牛肉需要は減退傾向にあると考えられることから、カットアウトバリューには今後、下落圧力が加わる可能性がある。

(注) チョイス級、600〜900ポンドのカットアウトバリュー。カットアウトバリューとは、各部分肉の卸売価格を1頭分の枝肉に再構成した卸売指標価格。

(調査情報部 野田 圭介(現酪農乳業部))