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海外の需給動向【牛乳・乳製品/NZ】 畜産の情報  2020年5月号

乳製品国際価格、粉乳は低下傾向で推移

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2月の生乳生産量、干ばつ拡大などの影響で減少
 ニュージーランド乳業協会(DCANZ)によると、2019/20年度(6月〜翌5月)2月の生乳生産量は、187万5000トン(前年同月比同)と前年同月と同量となった。ただし、うるう年による調整後の数値(注)では、前年同月を3.4%下回ることとなる(図27)。生乳生産の減少は、夏場に北島を中心に発生している乾燥した気候および2月初旬に南島南部で発生した豪雨などが生乳生産に影響を及ぼしたためである。6月〜翌2月の生乳生産量は、前年同期比0.4%減の1782万5000トンと前年同期をわずかに下回っている。
 

 ニュージーランドでは2020年1月末から北島を中心に乾燥した気候となっており、その影響は広範な地域に拡大している。
このため、ニュージーランド第1次産業省は2020年2月11日、北島北部のノースランド地方を干ばつ地域と認定し支援措置を講じることを決定した。また、同省は3月12日、乾燥した気候の悪化を受け、さらにこの認定地域を北島全域および南島の一部に拡大した。

(注)2020年はうるう年に当たり2月が1日多いため、前年同月と同じ日数として比較した場合の比率

2月のバター輸出量、大幅に前年同月を下回る
 ニュージーランド統計局(Statistics NZ)によると、2020年2月の乳製品主要4品目の輸出量は、全粉乳およびチーズが前年同月をわずかに上回る一方、脱脂粉乳およびバター類が下回った(表10、図28)。
 


 

 全粉乳については、前年同月比0.2%増の13万8849トンと前年同月をわずかに上回った。国別では、中国、アラブ首長国連邦向けなどが増加する一方、アルジェリア、マレーシア向けなどが減少した。2019/20年度7〜2月では、前年同期比0.5%増の101万7354トンとわずかに増加した。
 チーズは、前年同月比0.7%増の2万7887トンと前年同月をわずかに上回った。国別では、中国、韓国向けなどが前月に続き大幅に増加する一方、豪州向けなどが減少した。
 一方、脱脂粉乳は、前年同月比2.2%減の3万3875トンとわずかに前年同月を下回り5カ月連続で前年同月を下回った。国別では、全体の4割弱を占める中国が増加する一方、マレーシア、フィリピン、日本向けなどが前月に続き減少した。このため、2019/20年度7〜2月では、前年同期比1.9%減の25万3748トンと前年同期を下回る水準が続いている。
 また、バター類は、前年同月比17.8%減の4万2074トンと大幅に前年同月を下回り、2カ月連続で前年同月を下回った。国別では、アラブ首長国連邦、サウジアラビア向けなどが減少した。2019/20年度7〜2月では、前年同期比6.4%減の29万5533トンとなっており、依然として前年同期を下回わる水準で推移している。特にアラブ首長国連邦向けは、前年同期比で7割以上の大幅な減少となっている。

乳製品国際価格、粉乳は4回連続で下落
 2020年3月17日に開催された、乳製品の国際価格の指標とされるグローバルデーリートレード(GDT:フォンテラ社主催の電子オークション、月2回開催)の1トン当たり平均取引価格は、以下の通りとなった(表11、図29)。前回開催(3月3日)時と比較すると、主要4品目はバターおよびチーズが前回の価格を上回る一方、脱脂粉乳および全粉乳は下回った。
 
 

 
 バターについては、前回比0.3%高の1トン当たり4144米ドル(45万6000円)とわずかに上昇した。2019年8月以降、価格は同4000米ドルを挟んで比較的安定して推移している。
 チーズは、前回比2.6%高の同4398米ドル(48万4000円)と2020年1月以来6回連続で同4000米ドル台となった。
 一方、全粉乳については、同5.3%安の同2797米ドル(30万8000円)と4回連続で下落し、この間、合計で13.5%の下落となった。これで3回連続での同3000米ドル台割れとなり、前年同期比15.7%安で、2019年1月以来の低価格となった。中国を含むアジア北部地域からの購入は前回から増える一方、中東、東南アジアおよびオセアニアからの購入は減少した。
 脱脂粉乳は、前回比8.0%安の同2527米ドル(27万8000円)とかなりの程度下落し、全粉乳と同様に4回連続で下落した。
 マーケットでは、中国に端を発し世界的に拡大している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により乳製品の物流や消費動向に影響が及んでおり、2020年2月開催以降、全体的な平均取引価格の低下傾向が続いている。一方で前述のとおり、北島全域および南島の一部で広く発生している干ばつによる生乳生産や乳製品の需給動向への影響にも注視が必要である。

(調査情報部 井田 俊二)