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国内の需給動向【鶏卵】 畜産の情報 2020年5月号

2年3月の鶏卵相場、6カ月連続で前年同月を上回る

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 令和2年3月の鶏卵卸売価格(東京、M玉)は、1キログラム当たり197円(前年同月比28円高)と6カ月連続で前年同月を上回った(図22)。
 
 
 例年、年明けに下落した同価格は、春先に向けて再び上昇した後、気温の上昇とともに低下する傾向がある。本年の同価格は年明けに下落した後、例年に比べて緩やかな上昇基調での推移となっており、3月も上旬に5円上伸した後、中旬はもちあいで推移し、下旬に5円上伸した。
 今後について、供給面では、気温の上昇により産卵率および卵重が安定する時期となるものの、一般社団法人日本種鶏孵卵協会によると、元年の採卵用めすひなえ付け羽数がおおむね前年を下回って推移していたことから、当面の間、生産量の大幅な増加は見込まれないと推測される。
 一方、需要面では、3月に引き続き外出やイベント実施の自粛に加え、一部で学校給食の停止継続などにより業務用需要が低調となる見込みであるが、テーブルエッグとして家庭内消費の増加が見込まれるなど、今後の動向が注視されている。

元年の鶏卵生産量、3年連続で過去最高を更新
 農林水産省が令和2年3月9日に公表した「鶏卵流通統計調査」によると、元年(1〜12月)の鶏卵生産量は263万9733トン(前年比0.5%増)と、前年をわずかに上回り、3年連続で過去最高を記録した(図23)。一方、元年の年平均卸売価格(東京、M玉)は、1キログラム当たり173円と、過去10年で最も低い水準となった。
 
 
 国内で消費される鶏卵の約95%を国産品が占めることから、国内生産量の増減が鶏卵の卸売価格の変動に与える影響は大きい。このため、近年の卸売価格の低下は、国内における養鶏産業の生産拡大の進展による生産量の増加が一因とみられる。生産量の増加の背景には、平成25年の猛暑による鶏卵供給量の減少や、27年に厚生労働省が日本人の食事摂取基準からコレステロールの上限値を撤廃したことなどによる需要の高まりから、26〜29年の卸売価格が高水準にあり、生産者の増産意欲が向上したことが挙げられる。
 令和元年の鶏卵の月別生産量の推移を見ると、全ての月で過去5カ年平均を上回った(図24)。

 
 元年は成鶏更新・空舎延長事業(注)が平成30年に続き発動(2月1日〜3月31日、5月20日〜9月2日)するなど生産調整が実施された。さらに、相次ぐ大型台風や大雨の被害による生産量の一時的な減少から、前年同月を下回った月があったものの、おおむね安定して推移した。

(注) 一般社団法人日本養鶏協会が実施する鶏卵生産者経営安定対策事業のうちの一つ。鶏卵価格が低下した場合(補填基準価格を下回った場合)に価格差補てんを行う「鶏卵価格差補填事業」と、価格がさらに下落した場合(安定基準価格を下回った場合)に生産調整により需給改善を図る「成鶏更新・空舎延長事業」がある。

栃木県の鶏卵生産量、3年で約2倍に
 令和元年の都道府県別の上位5県の鶏卵生産量は、茨城県が23万4209トン(前年比4.4%増)と最も多く、次いで鹿児島県が18万7797トン(同3.2%増)、千葉県が16万6471トン(同0.8%減)、岡山県が13万6443トン(同5.0%増)、広島県が13万5443トン(同4.4%増)となり、千葉県を除く全ての県で前年を上回った(図25)。
 
 
 上位道県別の生産量の推移を見ると、全体的に増加傾向にある中、特に栃木県の伸びが大きく、平成28年以降の3年間で生産量は約2倍となった。
 各道県の生産量がおおむね増加傾向で推移している理由としては、全国的に採卵鶏の飼養戸数が減少傾向にある一方で、1戸当たりの成鶏めす飼養羽数が増加するなど、大規模化の進展に伴う総飼養羽数の増加が挙げられる(表)。

 
(畜産振興部 郡司 紗千代)